江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「倭訓栞(わくんしおり)同書、後編」でのカッパ、カワタロウの記述   その3

2024-10-06 20:15:29 | カッパ

「倭訓栞(わくんしおり)同書、後編」でのカッパ、カワタロウの記述   その3

                    2024.10

高野山平等院に、水虎が人に取り付いた由来を、自分自身で書いたが、その内に自分自身の姿を描いたものがあった。怖異(ばけもの)である。

また、尾州名古屋の川合氏は、強力(ごうりき)の大男であった。
寶暦三年七月三日の未明、老瀬川のほとりを一人で歩いていたが、少いさな男の子が立っていた。
かき色のかたびらに黒い帯をして頭は窪んでいた。
川合氏は、
「どこへ行くのか?」と咎めた。
子供は、答えて
「椿の森より水車へ行く」と言った。
椿の森は、老瀬川の川上にあり、川合氏が、子供の傍を通り、先へ進もうとしたら、その小童子が、帯をつかんで引き寄せようとした。
川合氏は、ふり放して後ろを返り見、
「以前から人を悩ませていた川小僧め。生してはおけないが、今後、殺生を止めれば、命を助けてやろう。」と、言うより速く、河童は、川へ飛びこんだ。

川合氏は、堤で、煙草を吸った。
しかし、河童は、又出て近づいてきた。
川合氏が、叱りつけると、河童は、
「あなた様のように強い人には、これまで出合ったことがない。」と言って、又川に飛びこんだ。

川合氏は、帰りがけに、この事を山岡氏に語った。
私は、山岡氏から、明和九年の七月に、この逸話を聞いた。

「倭訓栞(わくんしおり)同書、後編」広文庫より


「倭訓栞(わくんしおり)同編、後編」でのカッパ、カワタロウの記述 その2

2024-10-06 20:12:43 | カッパ

「倭訓栞(わくんしおり)同編、後編」でのカッパ、カワタロウの記述 その2

                      2024.10

加藤清正が、肥後の領主であった時に、狩に出て児従を河童に引入られた。
それで、大いに怒って、河童を残りなく毒殺しようとした。その河童の首領は九千坊と言った。彼は、大いになげいて、お願いして、許される事を願った。乞うて免(ゆる)されてより、肥後隈本(熊本)の河童は害をなすことが無いと、言われている。

今も渋谷家の渋谷公には、河童はその命令をよく聞くそうである。
豊橋鶴崎にもまた河童が多い。河童を能く使う者がいて、名を「ならゑんば」と言う。河童は、能く命令に従うと聞いた。

「倭訓栞(わくんしおり)同編、後編」広文庫

 


「倭訓栞(わくんしおり)、後編」でのカッパ、カワタロウの記述

2024-10-06 20:09:18 | カッパ

「倭訓栞(わくんしおり)、後編」でのカッパ、カワタロウの記述

                   2024.10

かわたろう:
かわろう、河童の意。ろう(郎)は、童の訛ったものであろう。がわ太郎また川小僧、また川の殿という地区もあるようである。
ある説に。かわどうの訛ったものであるとか、水虎(すいこ)の訓読みであろう、とも言う。
顔は、はなはだ虎に似ている。
大きさは、狸くらいである。
水?(虫偏+温ーサンズイ)、別名水精、ともに同じ。
西国では、カワッパと言い、越後の方言では、カッパと言う。
あさざ(水草)をカッパの魂とも言う。
非常に猿を恐れる。
猿は、カッパを見れば、必ず殺す。
髪は、大変に長く、子供は、口から産むと言う。
また、刀で斬ることができないが、麻?(あさがら)をけづって剌せば、通って傷つけることができる。
又鹿の角を嫌うものである。
又、児童を誘って相撲をする。
その河童と相撲をして気を取失った者には、しきみの皮で作った抹香を水で呑ませば、正気に成るとも言う。

三角な頭の頂上に凹んだ所があって、水をいれている。この水を失えば、勇力を損ずる、とも言う。
胡瓜、又マクワウリを盗み喰い、牛馬を盗み出して乗る。
その乗られた牛馬は、役に立たなくなる。

又、能く婦女をだまして淫する。それで、嫁にいけなくなる女子がいる。

又、人を水中に引入れて、肛門より手を入れて肝を取る、と言う。

又猿猴(えんこう)と呼ぶ。
手の肱が左右に通りぬけて滑らかである、とも言う。

「倭訓栞(わくんしおり)、後編」広文庫より