オリバー・サッカレーという作家名と『虚栄の市』というその著書のことを初めて知ったのは、モンゴメリの『アンの愛の手紙』であった。
(うちにある角川文庫版中村佐喜子訳では『アンの愛の手紙』だが、新潮文庫版村岡花子訳では『アンの幸福』。いま調べてみたら他の訳でも『アンの幸福』が断然優勢だが、『アンの愛の手紙』のほうが内容には合ってると思う。ちなみに原題は「Anne of Windy Willows」。ウィンディ・ウィローズというのはアンの下宿先の通称というか屋号)
うちの『アンの愛の手紙』。
昭和四十九年発行の二十一版。
中も芯までこんがり焼け焼け。
大学卒業直前だったかした後だったか、幼馴染ギルバートと婚約したアンだが、ギルバートが医学部に進んだため、すぐには結婚せず、自分は教師の職を探す。
採用されたのは、プリンス・エドワード島のサマサイド中学の校長職。
ところがサマサイドではプリングル一族というのが幅を利かせていて、一族の遠縁の者が校長職に応募していたのにそれを差し置いてアンが選ばれたというので、一族を牛耳る「かえで屋敷」のふたりの老婦人は「アン・シャーリーに敵対せよ」と一族に号令を出す。
アンが教える生徒にもやはりプリングル一族はいて。
わたしの教室にはプリングルが大ぜいだし、プリングルを名乗らないまでも、その血をひく生徒もうんといるわ。その中のリーダー格がジェン・プリングルらしいの。グリーンの眼をして小生意気で、ベキー・シャープ(サッカレーの『虚栄の市』の中の、虚栄心つよく破滅する娘))が十四だったらこんなだろうと思うわ。 (22頁より無断転載)
『アンの愛の手紙』は何度読み返したかわからんほど好きな本なので、「べキー・シャープ」という名前もきっちり記憶に刻まれたのだが、わざわざサッカレーの『虚栄の市』を読むこともなく、どんな話か知らないまま、月日は流れ。
次に『虚栄の市』に出くわしたのはほんの数年前、北村薫の『街の灯』であった。
サッカレーの『虚栄の市』を読んだばかりだった主人公は、彼女の家に新しく雇われることになった女性の運転手を、ひそかに「ベッキーさん」と呼ぶのである。
が、主人公は彼女を嫌ったり苦手に思ったりしてこう呼ぶのではない。
颯爽とした彼女への憧れをこめての呼び名なのである。
虚栄心が強くて破滅する颯爽とした女性???
二冊の本でのまったく逆の扱いに首を傾げたが、やはり『虚栄の市』を読むには至らず、さらに月日は過ぎ。
数ヶ月前、『悪女』というDVDを借りた。
AVではない。洋画である。ガブリエル・バーン(※)の出演作をチェックしてて新しくこれを見つけたのである。
(※ガブリエル・バーン ディカプリオの『仮面の男』のダルタニアン。シュワちゃんの『エンド・オブ・デイズ』では悪魔。『ゴーストシップ』ではチューブみたいな中で溺れ死んだ人。『ニキータ』のアメリカ版リメイクのブリジット・フォンダの『アサシン』では主人公を管理する管理官というか教官。ケン・ラッセルの『ゴシック』ではバイロン郷。メジャーなとこってこんなもんか? あとレイフ・ファインズの『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』で父親役やってたり、あ、『ユージュアル・サスペクツ』に出てます。パッケージ写真、右から二番目です)
(さらに余談。エディ・マーフィーの『ドクター・ドリトル』、エディ・マーフィーが捨て犬収容所みたいなとこ行ったとき、中に一匹、「アイム・カイザ~・ソゼ~」ってうめくように言う犬いたっしょ。あれ、『ユージュアル・サスペクツ』ネタのギャグ)
主演は『キューティー・ブロンド』のリーズ・ウィズスプーン。
しょっぱなからガブリエル・バーン登場。
彼はシャープという画家を訪ね、彼の絵を数シリングで購入する。
画家には小さな娘がいて、彼女の名前がベッキー。
シャープさんとこのベッキー……。
ベッキー・シャープっ?!
ひょっとしてこの映画、サッカレーの『虚栄の市』の映画化だったりするっ?!
わたしいま『虚栄の市』を観てたりするっ?!
調べてみたらやっぱりそうでした。
ありがとう、ガブリエル・バーン。
どんだけ映画向けに脚色されてるかは不明だが、おかげでやっと『虚栄の市』のだいたいのストーリーだけでも知ることができたよ~。
ちなみに『悪女』、けっこう面白かったっす。
(うちにある角川文庫版中村佐喜子訳では『アンの愛の手紙』だが、新潮文庫版村岡花子訳では『アンの幸福』。いま調べてみたら他の訳でも『アンの幸福』が断然優勢だが、『アンの愛の手紙』のほうが内容には合ってると思う。ちなみに原題は「Anne of Windy Willows」。ウィンディ・ウィローズというのはアンの下宿先の通称というか屋号)
うちの『アンの愛の手紙』。
昭和四十九年発行の二十一版。
中も芯までこんがり焼け焼け。
大学卒業直前だったかした後だったか、幼馴染ギルバートと婚約したアンだが、ギルバートが医学部に進んだため、すぐには結婚せず、自分は教師の職を探す。
採用されたのは、プリンス・エドワード島のサマサイド中学の校長職。
ところがサマサイドではプリングル一族というのが幅を利かせていて、一族の遠縁の者が校長職に応募していたのにそれを差し置いてアンが選ばれたというので、一族を牛耳る「かえで屋敷」のふたりの老婦人は「アン・シャーリーに敵対せよ」と一族に号令を出す。
アンが教える生徒にもやはりプリングル一族はいて。
わたしの教室にはプリングルが大ぜいだし、プリングルを名乗らないまでも、その血をひく生徒もうんといるわ。その中のリーダー格がジェン・プリングルらしいの。グリーンの眼をして小生意気で、ベキー・シャープ(サッカレーの『虚栄の市』の中の、虚栄心つよく破滅する娘))が十四だったらこんなだろうと思うわ。 (22頁より無断転載)
『アンの愛の手紙』は何度読み返したかわからんほど好きな本なので、「べキー・シャープ」という名前もきっちり記憶に刻まれたのだが、わざわざサッカレーの『虚栄の市』を読むこともなく、どんな話か知らないまま、月日は流れ。
次に『虚栄の市』に出くわしたのはほんの数年前、北村薫の『街の灯』であった。
サッカレーの『虚栄の市』を読んだばかりだった主人公は、彼女の家に新しく雇われることになった女性の運転手を、ひそかに「ベッキーさん」と呼ぶのである。
が、主人公は彼女を嫌ったり苦手に思ったりしてこう呼ぶのではない。
颯爽とした彼女への憧れをこめての呼び名なのである。
虚栄心が強くて破滅する颯爽とした女性???
二冊の本でのまったく逆の扱いに首を傾げたが、やはり『虚栄の市』を読むには至らず、さらに月日は過ぎ。
数ヶ月前、『悪女』というDVDを借りた。
AVではない。洋画である。ガブリエル・バーン(※)の出演作をチェックしてて新しくこれを見つけたのである。
(※ガブリエル・バーン ディカプリオの『仮面の男』のダルタニアン。シュワちゃんの『エンド・オブ・デイズ』では悪魔。『ゴーストシップ』ではチューブみたいな中で溺れ死んだ人。『ニキータ』のアメリカ版リメイクのブリジット・フォンダの『アサシン』では主人公を管理する管理官というか教官。ケン・ラッセルの『ゴシック』ではバイロン郷。メジャーなとこってこんなもんか? あとレイフ・ファインズの『スパイダー 少年は蜘蛛にキスをする』で父親役やってたり、あ、『ユージュアル・サスペクツ』に出てます。パッケージ写真、右から二番目です)
(さらに余談。エディ・マーフィーの『ドクター・ドリトル』、エディ・マーフィーが捨て犬収容所みたいなとこ行ったとき、中に一匹、「アイム・カイザ~・ソゼ~」ってうめくように言う犬いたっしょ。あれ、『ユージュアル・サスペクツ』ネタのギャグ)
主演は『キューティー・ブロンド』のリーズ・ウィズスプーン。
しょっぱなからガブリエル・バーン登場。
彼はシャープという画家を訪ね、彼の絵を数シリングで購入する。
画家には小さな娘がいて、彼女の名前がベッキー。
シャープさんとこのベッキー……。
ベッキー・シャープっ?!
ひょっとしてこの映画、サッカレーの『虚栄の市』の映画化だったりするっ?!
わたしいま『虚栄の市』を観てたりするっ?!
調べてみたらやっぱりそうでした。
ありがとう、ガブリエル・バーン。
どんだけ映画向けに脚色されてるかは不明だが、おかげでやっと『虚栄の市』のだいたいのストーリーだけでも知ることができたよ~。
ちなみに『悪女』、けっこう面白かったっす。