昨日は広島の原爆記念日でした。
終戦記念日も近づいてきます。
2年前の晋山結制法要の記念として絵本を作りました。
鉄砲と釣り鐘です。私が文章を担当、佐藤はるかさんという岩手大出で、現在一関市内にお住まいのお嬢さんに
絵を担当していただきました。
物語は、当寺の市文化財の梵鐘にまつわる話をまとめました。
今から約65年前、アメリカとの戦争が激しくなり、
空襲で東京の多くの家が焼かれた時、
門崎(かんざき)にも暗い戦争の足音が聞こえてくるようになりました。
門崎小学校4年のケンジは、父が戦争に連れて行かれ、
母と姉、弟二人、じいちゃん、ばあちゃんとの7人家族です。
昭和17年4月
満開の桜の花が咲く門崎小学校の校庭で、
4年生になったばかりのケンジたち3人が野球をやっています。
カキーン ケンジの打ったボールは珍しく大当りしました。
「やったー!打ったー!ホームランだー!」
「違う違う、今のはファールだべ!」
ピッチャーの哲郎は言います。
「違うってば、間違いなくホームランだってば!」
ケンジもなかなか引き下がりません。
キャッチャーの幹夫が言います。
「もうやめろ!どっちでもいいけどさ、これからホームランやファールって英語を使っちゃだめなんだぞ。
ホームランは本塁打。ファール場外反則球って言うんだ。」
「何でや?何で英語使ったらだめなんだ?」
哲郎が尋ねます。
「今、日本の兵隊さん達が命がけでアメリカ人と戦ってっぺ。そんな時に英語ぺらぺら使うなって、先生言ってたべ?」
ケンジと哲郎は、幹夫の話にすっかりとやる気をなくし、しゅんとしてしまいました。
その時です。
どこか遠くの方からゴー…という音が聞こえました。
空を見上げると、今まで見たこともない飛行機が、一本の飛行機雲をはきながら、青い空を横切っています。
「あれはアメリカの偵察機だ…。時々ああやって高いところからカメラで撮影して、日本を調べてるんだ。」
と、幹夫が言います。
「…食うものが無くなってきたから、この校庭にも芋の苗を植えるらしいな…。来週からは野球もでぎねぇ。
ホームランもストライクも言っちゃいけねぇし、腹は減る。何だかわがんねぇけど、おっかねー世の中になんでねーの。」
「…もう帰っか?」
「…しょうがねぇや、帰っぺ…。」
三人は最初の元気もなくなり、しょんぼり家に帰るのでした。
そして、その校庭も5月には畑になり、勉強の時間に畑の作業をするようになっていました。
「もう野球をすることもでぎねぇのかー。毎日畑仕事ばっかりで、やんたぐなる。」
ケンジ達野球仲間は、口々に言いました。