南野島男のGood Times

日常感じたことを面白おかしくエッセイ風に書きつづります。
これぞ笑いと勇気の玉手箱!

おかえり!はやぶさ

2010-06-12 17:29:36 | Weblog
いよいよ明日には小惑星探査機はやぶさが7年間もの長い宇宙の旅を終えて地球に帰ってくる。
もう日本中では単なる機械である探査機が宇宙計画の仕事を終えて地球に戻るくらいのものではなくなっている。
もちろん仕事的には人類史上初の偉業を達成することにはなるが、たくさんの苦労を乗り越えて5億キロメートルの彼方から故郷地球を目指して帰って来る我が子を待ちわびる気持ちなのである。
姿勢制御装置の故障、燃料漏れ、通信不能、燃料の全量喪失、イオンエンジンの故障、次から次に起きるトラブルで絶体絶命の危機を何度迎えても決して諦めることのない技術者たちの思いは機械であるはずの「はやぶさ」の心に届き、奇跡を起こしたのである。
これは単なる宇宙プロジェクトではなく、明らかに「人間ドラマ」そのものである。
そうして僕らは多くのことを学ばせてもらった。
普通ならもうどうしようもならないような状況で諦めるしかない時でも、人間は決して諦めてはならないということ、それを成すためにはどうすればいいのか最後まで考え抜き、強い思いがあれば必ずやそれは可能になるということ。
思い(意識)はどんなに遠く離れた所にも届くこと、しかも相手が人間ではない「はやぶさ」という機械であっても届くという奇跡の真実を教えてくれた。
何億キロの宇宙の彼方で通信不能になった我が子「はやぶさ」に対しても何ケ月も声をかけ続けた母親である技術者の思いが届き、それに応え電波を送り返してきた「はやぶさ」の声が聞こえた時の感動は言い表せないものがあったと思う。
もうその時の「はやぶさ」は探査機なんかじゃなく、大事な愛する我が子以外のなにものでもなかったはずだ。

「はやぶさ」は小惑星イトカワから採取した砂を持ち帰ってくる。
これは人類史上初の快挙になる。
いわば「初めてのお遣い」なのである。
そのお遣いのの品を携えてようやく母親の元に帰って来る様はテレビ番組そのものであるが、ちゃんと帰って来てくれることが嬉しいのであり、カプセルの中にちゃんと砂が入っていようがいまいがもうどうでもいいと思われてくる。
数々の試練を受け、傷つき、涙を流し、絶望感も味わっただろうし、途方もない寂しさもあじわったと思う。
そんな思いをした「はやぶさ」はカプセルを握り締め母親の元に帰り着こうとしている。
しかし、カプセルを大気圏の所で手放した後「はやぶさ」はそのまま燃え尽きてしまうのである。
7年もの歳月に渡る苦難の旅を続けて奇跡の生還を果たした我が子はみんなが見守る中でその使命を終える。
このことを考えると涙が止まらなくなる。
相手が人間や生き物でもないのに、それが燃え尽きてなくなることでこんなに悲しい思いをするのは初めてである。
たぶん僕だけではなく多くの方々の心の奥には「おかえり、はやぶさ」という気持ちの中には複雑な悲しさがあるはずである。
明日、「はやぶさ」の帰還をいろんな思いで見守りたいと思うが、たとえ本体は燃え尽きてなくなってしまおうとも、僕らは「はやぶさ」のことを決して忘れずにいてあげたい。