金色に輝く「キンポウゲ」が群生していた。風が吹くと、そこだけ金色の光が集まって波打っているようだった。道端にリュウキンカのように光り輝く花がふつうに生えているので驚く。葉の形からウマノアシガタとも呼ばれる。俳句の世界でもよく歌われる。「金鳳花風吹くたびに黄を加ヘ 飯田龍太」。
(2020-04 川崎市 道端)
ウマノアシガタ Ranunculus japonicus Thunb. (キンポウゲ科 キンポウゲ属)
ウマノアシガタは北海道南西部以南の日本全国から朝鮮・中国に分布する多年生草本。水田のあぜ道、適度に湿った路傍などに普通に生育する。全体に毛が多い。
野に咲くウマノアシガタは春の光に輝いている。ウマノアシガタというよりも、別名のキンポウゲ(金鳳花)の方が、この光り輝く花のイメージによく似合っている。花弁に光沢があるのがこの仲間の特徴の1つである。ウマノアシガタという名前は、根生葉が馬の足に似ているというのであるが、さっぱりわからない。馬の足をじっくりと観察しなければならない。
キンポウゲの仲間には有毒植物が多く、ウマノアシガタも有毒である。
金鳳華 の例句
あるけばきんぽうげすわればきんぽうげ 種田山頭火 草木塔
きんぽうげこの地たづぬる神ありて 角川源義
きんぽうげまだ珍らしき日の清み 細見綾子 桃は八重
きんぽうげハモニカは子を俯向かす 岡本眸
きんぽうげ午が夕日を踏んで来る 細見綾子
きんぽうげ川波霧を押しひらく 飯田龍太
きんぽうげ野にこけて音あらざりし 岡井省二 夏炉
きんぽうげ響灘潮あぐるなり 岡井省二 前後
きんぽうげ馬に面魂なんど 平畑静塔
たがやしの埋みてありし金鳳花 右城暮石 句集外 昭和十一年
だんだんに己かがやき金鳳華 中村汀女
ぬれるだけぬれてきたきんぽうげ 種田山頭火 草木塔
六月に入るきんぽうげ青き実を 山口青邨
切株の満面喜色きんぽうげ 鷹羽狩行
別の頃日きんぽうげ原をなす 岡井省二 有時
城址の記憶落窪と金鳳華 橋本多佳子
夕方の明るき花に金鳳華 星野立子
太宰府の畦道漬えきんぽうげ 山口青邨
女学生泣きに出てをり金鳳華 右城暮石 句集外 昭和三十五年
妻を得てまぶしく来りきんぽうげ(林徹氏結婚) 細見綾子
小町忌や堅田いちめんきんぽうげ 星野麥丘人
小町忌や捨田いちめんきんぽうげ 雨滴集 星野麥丘人
山坂やうまのあしがた右ひだり 雨滴集 星野麥丘人
島の陽の刻々強し金鳳華 中村汀女
川幅に水が窮屈きんぽうげ 岡本眸
我が背に咳の泡あり金鳳花 右城暮石 句集外 昭和二十二年
水ひいて畦縦横や金鳳華 原石鼎 花影
流速の嘆きひたすら金鳳華 岡本眸
湖見えて湖畔の遠さ金鳳華 及川貞 夕焼
熊野路のここにはじまる金鳳華 高浜年尾
燦々と愛してゐるかきんぽうげ 平井照敏 天上大風
臀並べたる女流らよ金鳳華 石田波郷
菜の花に咲かわりけり金鳳花 句空
葬具庫の扉の勝手開き きんぽうげ 伊丹三樹彦
走りたくなる日もありぬ金鳳華 亭午 星野麥丘人
農薬に負けぬ金色金鳳華 右城暮石 句集外 昭和六十一年
金鳳花蘇我につながる檜前道 松崎鉄之介
金鳳花踏絵も光さびにけり 水原秋櫻子 蓬壺
金鳳花風吹くたびに黄を加ヘ 飯田龍太
金鳳華午前のまぶた痙攣す 橋閒石 朱明
金鳳華咲き故郷の道そつくり 右城暮石 句集外 昭和四十九年
金鳳華宣長の母かつの墓 山田みづえ 手甲
金鳳華明りの谷の火宅かな 岡井省二 明野
金鳳華明日ゆく山は雲の中 飯田龍太
金鳳華昼しんかんと鉄路置き 岡本眸
金鳳華東なぞへに野は展け 大野林火 白幡南町 昭和二十九年
金鳳華汽車行きてまた時経たる 森澄雄
金鳳華照りて空しき天守かな 阿波野青畝
金鳳華神婢嬰児の墓に咲きぬ 山口誓子
黄がつよし帰郷一年きんぽうげ 右城暮石 散歩圏
黄は光る色一面の金鳳華 稲畑汀子
黄金花咲くごと佐渡はきんぽうげ 阿波野青畝