サファイア色の花が愛されたヤグルマギク。明治時代に渡来したらしい。今ではどこの花壇でも咲いている園芸種としておなじみだ。少し重い頭を風に吹かせている様子は、子供の頃から見慣れた花だった。
(2020-04 川崎市 道端)
ヤグルマギク(矢車菊、学名 Centaurea cyanus)は、キク科ヤグルマギク属の1種である。
和名ではヤグルマギクと呼ばれており、近年一部でヤグルマソウとも呼ばれた時期もあったが、ユキノシタ科のヤグルマソウと混同しないように現在ではヤグルマギクと統一されて呼ばれ、最新の図鑑等の出版物もヤグルマギクの名称で統一されている。
野生種は青紫色で、種名の「cyanus」は「あさぎ色の」という意味である。属名の「Centaurea」は、ギリシャ神話に出てくる半人半馬の怪物ケンタウルスから。
産地
ヨーロッパ原産。もとは麦畑などに多い雑草だったが、園芸用に改良され紫、白、桃色などの品種が作られた。ドイツ連邦共和国、エストニア共和国、マルタ共和国、フランス共和国の国花である。
特徴
耐寒性一年生植物。ヤグルマギク属の別種には多年草のものもある。
高さは20~100㎝で、全体が毛で覆われるため白みを帯びて見える。夏に筒状花からなる矢車状の花が咲く。種子は痩果で、短い毛が付く。
日本には明治時代に導入されたが、現在では帰化植物として野外でも多く見られる。原産地同様に麦畑に侵入すると、収量を5割から9割も減らす強害雑草となるため恐れられている。
栽培
ヤグルマギクの種子
東北地方以北または寒さの厳しい中部山岳地帯では春播きにするが、関東地方以西の平地では秋まきにする。現在販売されているタネはほとんどが寒咲種で、8月末にまき、暖かな日だまりに植えておいてやると、年内に開花する。普通は9月下旬に播種し、4月頃から咲かせる。
病虫害も少なく、丈夫な草花で、花壇や家庭の切り花などに用いられる。このため、上記のような問題も発生するので注意が必要である。
文化
その青紫色の美しさから、最高級のサファイアの色味を「コーンフラワーブルー」(ヤグルマギクの花の青)として引き合いに出される。
ノヴァーリスの小説『青い花』(邦題;原題は「ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン」)に登場する青い花(ロマン主義の象徴ともされる)はヤグルマギクといわれる
ツタンカーメン王の棺の上にはヤグルマギク、蓮、オリーブ等で作られた花輪が載せられていた。
マリー・アントワネットが好んだ花であり、洋食器の『小花散らし』の模様は彼女がデザインしたヤグルマギクの柄に由来する。