今日は、本当であれば明石のIさん宅でのオフ会に参加しているはずでした。しかし、例の流行病に感染したせいで、自粛し今日は一日おとなしく家にいます。
と言いたいところですが、おとなしくするのも暇ですし、今日は前々から温めていた真空管アンプのパワー管カソード抵抗のトランジスタ化について実験を行いました。
カソード抵抗のトランジスタ化でよく目にするのは、この部分を定電流回路化する、というものがありますが、私個人的には少し疑問があり、あまり採用したくありません。なぜかといいますと、定電流回路を採用すると、大きな出力でパワー管の電流が制限されるので音声出力が歪む、というのが気になっているからです。
そこで定電流化ではなく、一定のバイアスは保ちつつも、必要な時には真空管に十分電流を流せるような回路が出来ないか、といつも思っていました。
そうであれば、ツェナーダイオードが良さそうですが、十分なW数も必要であろうと思われるので、トランジスタで簡単にできないかなと。
そこで色々考えていたのですが、この回路を採用したらどうだろう、というのが見つかりましたので、実験してみることとしました。
その回路とは、最近よく使用している下記赤枠部分のような回路です。
この回路は、以前、薄型イコライザアンプを製作した時の回路ですが、赤枠部分は、トランジスタのVce間の電圧を可変できる回路になります。ベース電圧VbをB-E間の可変抵抗とC-B間の抵抗で決定する回路で、このVceをパワー管のカソードに入れてやれば、必要な電流は十分流すことは出来て、かつ必要なカソードバイアスはVceとして保てるのではないか、というのが目論見になります。
そこで、早速回路ですが、下記のような回路としました。
トランジスタは、折角なのでPNP型を使用します。PNP型だとコレクタ側をGNDに接続しますので、放熱板などに固定する際にも絶縁シートやブッシングは不要になります。
本回路では、RbeとRcbでVbの電圧を決定し、VceはVbの電圧で決定されますので、Vceをパワー管の動作点の電圧にRbeとRcbで調整してやれば、適切なバイアスになるはずです。
そこでVceは実際どんな式になるのか、簡単に解析してみました。(PNP型になると電流の向きなどがNPNと逆になり、頭が混乱して式内の正負が逆になっている可能性があります^^;)
まず、B点の電位は、GNDなので0Vとすると、下記①のようになります。
- Vce = Vb+Vbe ーーー①
次にVb, Ibe, Ibは、それぞれ下記のようになります。
- Vb = Rcb(Ibe+Ib) ーーー②
- Ibe = Vbe / Rbe ーーー③
- Ib = Ic / Hfe ーーー④
これらの式から、
Vce = Rcb(Ibe+Ib) + Vbe = Rcb(Vbe / Rbe + Ic / Hfe) + Vbe
= Vbe(1+Rcb/Rbe) + Rcb(Ic/Hfe) ーーー⑤
とVceが算出できそうです。⑤式の左側は、定電圧特性を示しており、右側はIcによって変動する電圧になるようです。Hfeを大きく、Rcbを小さくしてやれば、Icによる電圧の変動は無視できるぐらいになりそうです。
ということで、手持ちのPNP型トランジスタに2SB1098というダーリントン型の高Hfeタイプのものがありますので、これを使用してみます。
回路定数の計算は、省略して手持ちの部品を使用し、下記のようにしました。
この回路のA-B間に電流を流し、Vceが真空管のカソードバイアスとなりえるか確認します。
回路はブレッドボードに作成し、上記回路のA点に赤色の抵抗100Ωを接続し、その100Ωの反対側とB点間に電圧をかけてみました。その結果が下記になります。
黄色のテスタの計測値は、100Ωの上からB点(GND)までの電圧、黒いテスタはVceの計測値です。Vceは約20Vに調整しています。全体で約45Vかけています。
次に実際の真空管のカソード部分にこの回路を入れてみます。
真空管は6CA7を使用しています。6CA7は3結でプレートには250V印加し、カソードに本回路を接続しています。第1グリッドは、B点に接続しています。この時、本回路でVceを適切に調整し、プレート電流Ipは60mAになりました。もちろんこの可変抵抗でIpはいかようにでも可変できます。
以上のように、真空管のカソードに本回路を入れることが出来ると分かったので、実際にアンプに入れてみますが、それはまた次回ということで。