800ダイナミックカップリングアンプですが、完成したものの電力効率が思わしくない旨について、前回記載しました。
そこで、今回はこれを改善すべくいろいろ試したうちの1つを記載したいと思います。
800ダイナミックカップリングの(9)回目の記載で、終段回路の接続方式について検討しましたが、これで下記の(3)の回路がびっくりするような特性だった(が、さらっと流した)と記載したかと思います。
そこで、この(3)の回路でいろいろ実験して見ました。確認したのは、純粋に出力と音質になります。なお、オシロでの確認では、負荷を純抵抗の8Ωとし、1kHzの正弦波で確認しています。また、800のプレートには325V、100mAを印加しています。
まず、(2)の回路がダイナミックカップリングの標準回路としていますが、この回路の場合、下記のような最大出力になります。
出力が、7.2Vでクリップしています。最大出力は、約3.5Wです。印加した電力のおおよそ10分の1が出力になっている感じです。
そこで、次は(3)の回路で試してみました。(3)の回路では、ダーリントン回路とするトランジスタをどうするか、バイポーラか、ユニポーラかあるいは最近はIGBTなんて素子もあります。
そこで、今回は載せませんが、2SCタイプのトランジスタか、FETかで音質を確認したところ、FETの方がよく感じたので、とりあえずFETとしました。
この接続で、ほぼ同じ電力を800に加えて確認したところ、次のような結果となりました。
クリップするところが、9.4Vとなりました。出力は5.5Wとなり、電力効率が少し上がりました。
やはり、トランジスタとダーリントン接続することで効果はあるようです。
そこで、この結果が面白いので、トランジスタをIGBTにしてみました。
IGBTは、東芝のGT40T301という品番のものです。この結果は不思議なことに(2)の場合と同じ出力になりました。ただ単に差し替えだけなのがいけなかったのかもわかりませんが、IGBTの特性はまだよくわかっていなく、使い方は今後の課題にしたいと思います。
今日は折角なので、この3つのタイプで音質比較していきました。
音質はあくまで主観ですが、下記のような感じでした。
(2)の回路の場合
音質は、響きが良くドラムが”ボンッ”となるところで、胸腔に響くような感じがし、どことなくエネルギーを感じるような傾向です。しかし、全体的に音質は甘く、輪郭が少しぼやけたような感じがしましたが、音質としては私の好みの音の1つです。
(3)の回路でFETの場合
FETは、NECの2SK2141とSTマイクロのSTB20NM50で比較しましたが、STB20NM50が好みの音だったのでこちらにしました。どちらもオーディオ用の品種ではなく、私は電源の平滑用にいつも使っているのですが、高耐圧ですし、この用途に使えそうなので確認してみたところ、音質は案外よかったのです。
音の傾向ですが、(2)の回路で感じた”胸腔に響くような感じ”が薄れてしまいました。が、代わりに張りのある音質で透明感はあるもののトランジスタのような硬さも混じったような音でした。しかしこれはこれでよい感じがしました。
(3)の回路でIGBTの場合
これは恐らく、真空管アンプの増幅部にIGBTを使用したアンプとして、世界初の回路ではないかと思います。そもそもIGBTを増幅回路に使用したアンプはほとんど見なくて、あまり増幅用に適した素子ではないのかもわかりません。私は今まで電源部分に使用したくらいで、増幅部分に使用したことがありませんでした。
出てきた音質は、ちょっと歪っぽくて大味な感じがしましたが、もう少しバイアスを調整するなどすればよいアンプになる可能性があります。音は朗々と鳴っていて、今後ものにしたい素子でもあります。
FETやIGBTは、入力容量が大きいので、出力インピーダンスの高い真空管アンプで使用して大丈夫か、とお思いの方もいらっしゃるかと思いますが、試した回路は、(2)を流用した下記のようなカソードフォロワの回路なので、そのあたりはほぼ大丈夫だと思います。
下記赤枠内にFETやIGBTを接続しています。
このあたりの回路で、良い動作点などを模索し次回のオフ会に臨みたいと思います。