化学系エンジニアの独り言

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2009年に中国は世界一の温室効果ガス排出国に

2006-11-17 | 環境
先日国際エネルギー機関(IEA)が温暖化ガスの予想レポートを発表しています。これまでにもあちこちで言われていることですが、今後中国の影響がますます大きくなり、2009年にはUSを抜いて世界一の温暖化ガス排出国になるといいます。これは、昨年の予想よりも10年以上早くなっているとのことです。

中国、インド、ブラジルを初めとする発展途上国は京都プロトコルに入っていません。さらには自主的に排出量の制限を設けるようなこともしていませんので、地球全体としての温室効果ガスの削減は、遅々として進まないというのが実情です。

中国は先進国が今以上の温室ガス削減をすべきであると主張しています。今現在の温室効果ガス増加は、先進国が過去に排出したものによります。従って、先進国は過去の付けをもっと払うべきで、それを途上国にまで押し付けるのはおかしいとの主張です。食べることも満足にできていない国の国民に向かって、温暖化ガスの排出削減を訴えることは無理でしょう。確かにそういう面は否定できません。しかし、一口に中国といっても年収1億円以上の生活をしている人口は日本より多いといいますから、それらの人々は温暖化ガス削減に協力しても良いのではないかと考えられます。

一方、排出量が現在No1のUSは、中国などの地球温暖化に大きな影響を持つ国が入らないのはフェアーでないので、プロトコルを批准しないというスタンスです。最も、京都プロトコルという枠組みではありませんが、自主的に温暖化ガスの排出量削減に取り組んでいることも事実です。その目標削減量が大きいか、小さいかの議論はあるでしょうが。

推定によれば、2030年までの世界のエネルギー需要は53%増加し、石油消費量は85 million BDから116 million BDに増加します。増加量の大部分は発展途上国によるものです。
一方、石炭消費は59%増加して、その結果CO2排出量は55%増加して2030年には44.1 billionトンになるといいます。

2012年に京都プロトコルの第一履行期間が終わります。2013年以降の枠組みを話し合うための会議が始まっています。次の枠組みではインド、中国、ブラジルなども参加を目的としていますが、すんなりとは行きそうもありません。

京都プロトコルにしてもカナダや西ヨーロッパの国々は足元で、1990年よりも温暖化ガス排出削減ができていません。日本も同様です。結局これらの国々は排出権を購入し、森林吸収に期待するしか道が無い様に思われます。2013年以降も同じような枠組みを続けることに同意はできないでしょう。そもそも、削減量を比率(日本ならば-6%)ではなく、絶対量で決めるべき、との意見もあります。しかし、省エネと同じように比率でやるしかないと思います。絶対量で規制していくと、エネルギー効率の高い国ほど厳しい規制になってしまいますから。あるいは一人当りのエネルギー消費効率を向上させるなどを指標にすることも一考に値します。

USや中国を初めとして発電を石炭に頼っている国は多数あります。過去3年間の石炭消費の増加量は、それ以前の23年分に相当するといいます。その増加量の90%は中国です。今後、中国の5.5%の成長率を見込むと2009年にはCO2排出量がUSのそれを抜きます。

中国ではCO2排出よりも依然として硫黄化合物の排出削減に注力しています。増え続ける電力需要に応じて増え続けるSOxの低減に手一杯というところでしょうか。しかし、石油消費抑制には対応しつつあり、新車の燃費規制を打ち出しています。規制値はUSよりも厳しくEUよりも甘いというものです。

中国だけではありません。イギリスも原油高騰の影響を受けて古い石炭火力を再開させて石油火力の割合を落としています。これにより温暖化ガス排出は確実に増えているのですが、EU内の他の国から排出権を買ってその増加を埋め合わせています。

中国に限らずEUも本質的に温暖化ガスの削減を実現しているとは言いがたいようです。