化学系エンジニアの独り言

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ガソリン消費量の減少

2006-12-22 | 石油
フォードやGMの経営不振は主力のSUVが売れない、あるいは売れ筋の燃費の良い小型乗用車を作れないことにあるといわれています。その影響でしょうか、USではガソリン消費量が減少してきていると、O&GJの記事に出ています。

USのガソリン消費量は90年代において年率1.6%の伸びを続けてきましたが、2005年は0.3%の伸びに落ち込み、2006年も1%に留まっているといいます。この25年間で初めて平均走行距離が減少しました。その原因は何でしょうか?

自動車会社の販売不振から想像すると自動車の数が減少しているのではないかと思われます。しかし、フォードやGMは販売不振ですが、トヨタや本田は米国での販売数量を伸ばしており自動車数が減少しているわけではなさそうです。統計によれば、USでは自動車免許人口以上に自動車があるそうです。免許を持っている人、一人当たり1.15台の車を保有しているそうです。一家に一台どころか一人一台以上あるというのは、ちょっと贅沢すぎます。

次に考えられるのはガソリン価格の高騰により、ドライブの距離が短くなったことです。2003年のガソリン価格はガロン当り$1.5ですが、2006年のピーク時には$3と実に二倍になりました。確かにこれが一番大きい原因でしょう。特に燃費の悪いSUVに好んで乗っていた米国人にとっては、ガソリン価格が上昇した分、ガソリン購入数量を減らしていると予想されます。

ところでSUVは一体どれくらい売れていたのでしょうか。75年には新車の16%だったものが2004年には56%まで増加しています。新車の半分以上はSUV(ミニバンや小型ピックアップを含む)というから驚きです。GMでは小型乗用車で日本車に売り負けている時、ローンの金利0%というサービスをしていましたが、SUVの販売ではこのローン金利ゼロを付けなくても売れていたといいます。しかし、2004年以降は減少し、今は53%だそうです。ハイブリッドが爆発的に売れていることをみても、SUVの販売減少は理解できます。

ガソリンの消費量が減るということは、その分温暖化ガスの排出が減っているということに他ならず、それはそれでよいことです。需要と供給をバランスさせるのが価格の役目、というのは経済学の初歩です。ですからガソリンの価格上昇はガソリンの需要を抑えます。これを広く解釈すると、エネルギー価格の上昇はエネルギー消費量の抑制を通じて直接的には温暖化ガスの排出を減らす働きがあります。ひいては過熱している経済を調整する役割もある、原油価格は経済成長のビルトインスタビライザーと呼ぶ人もいます。

原油価格の内訳の解釈の一つに、OPECの目標価格$35/bbl、中国インドなどの需要増大と産油国の供給余力低下で$10/bbl、いわゆる地政学的リスクで$10/bbl、さらに投機資金の原油マーケットへの流入で$15/bblで合計$70/bblになる。これが2006年夏に付けた最高値の理由という説明があります。今は投機資金が減ってきているので、価格が60ドル台に下がったと解釈します。

USのガソリン消費量は減ってはいるのでしょうが、そもそもが多すぎます。その理由の一つに税金が安いということが上げられます。税抜きのガソリン価格は安い中国で$1.8、USや日本で$2.3、一番高いイタリアで$2.8です。(いずれも2006年3Qの価格) 税金はUSで15%、日本は45%、さらに高いのが欧州でUKは64%に達します。日本の小売価格はガロン当り$4.5になりますが、USは$2.8、UKはなんと$6.5に達します。ヨーロッパでディーゼル車が普及しているのはガソリンの税金が高いことも一因です。

話を戻して、平均走行距離の減少は人口構成が高齢化しているためとの説明もあります。確かに高齢になれば若者ほどは長距離ドライブをしないでしょう。これについては医療の進歩で平均寿命が延びているのだから、現在の60歳代は昔の50歳代くらい元気なので長距離ドライブをしなくなるわけでは無い。むしろ、リタイアして自由な時間があるのでドライブの距離は伸びるのでは、との指摘もあります。これはどっちが正しいのかは分かりません。

もう一つエタノールを代表とする代替燃料が増えてきたので、という理由もあります。確かにエタノールの生産量は伸びていますが、ガソリン消費量の減少をすべてエタノールのせいにするには量的に無理です。
但し、エタノールは温暖化ガス削減の観点からも確実に伸びてゆくでしょう。研究機関の報告ではガソリンの10%までは現在のコーンエタノールで代替できる可能性がある、としています。それ以上は、食料としてのコーンが足りなくなるのでコーンエタノールは増やせないようです。食料と競合しないセルロースエタノールならばさらに増産ができ、ガソリンの3分の1を代替できるそうです。但し、一番の課題は経済性です。価格が高いままでは需要は増えていきません。さらにはエタノールガソリンを多くのステーションで売るためには物流の課題を解決する必要もあります。

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