公害問題に始まり地球温暖化にいたるまで環境保全と企業利益、あるいは社会的コストとはどのような関係があるのかは興味深く、さまざまに議論されてきたところです。環境対策のためには、何らかの装置を新たに設置したり、規制に違反すれば罰金を払わなければいけないので、企業利益は明らかに低下すると考えられます。一方で、環境保全対策をとらなかった場合、国民の健康が損なわれる、経済的には医療費の上昇や平均寿命の低下、気候変動による農業生産量低下などがあり、結果として企業利益も低下するというとらえ方もあります。
もっともみんなが早死にするのではそもそも企業利益も何もあったものではありません。
この様な環境保全と企業利益の量的関係についてOGJ誌に記事がありました。記事ではカナダの製油所について、有害物排出量、原油処理量、運転のための資金と純利益の関係について重回帰分析をしています。カナダ国内の15の製油所について過去10年間のデータ、総計51データを利用したといいます。
データはすべて公表されているものを用いており、有害物排出量はNPRI統計値、その他の数値は各企業のAnnual reportによっています。
純利益の計算式は以下のとおりです。
純利益=a+b*有害物排出量+c*原油処理量+d*資金+e*西暦年
最後に西暦年を入れているのがこの解析の味噌とも思われます。この西暦年の中に説明できない要因を全部入れ込もうという狙いです。51個のデータを用いて重回帰分析によりaからeまでの係数とt値を求めています。T値により各変数と純利益の相関が統計学上有意であるかどうかを判断しています。分析結果から有害物排出量と資金は危険率5%で、原油処理量は危険率1%で純利益と相関があると判断しています。
例えば、有害物排出量が1トン減ると純利益は2,000カナダドル向上するそうです。これは随分と大きな影響で、CO2排出権取引で1トンあたり1,000円から2,000円ですから、これと比較すると2,000カナダドルという数値が随分と大きいことが理解できるでしょう。
一方、原油処理量が大きくなると利益が向上するという関係が得られていて、これはリーズナブルです。しかしその係数は2,700BDアップで1,000カナダドルです。つまり、10,000BDの処理量アップを達成しても年間の利益向上はたったの4,000カナダドルにしかなりません。これは明らかに小さすぎます。
これらの結果については記事の中でも矛盾というか、合理的でないと指摘しています。重回帰分析の結果は変数と変数間の因果関係を与えるものではなく、二つの変数が同時に変化しているかどうかの関係を与えるものです。
有害物排出量が減少すると純利益が向上するのは、環境規制に適合するように精製装置を改造したり運転方法を変更したりすることで、同時に生産効率の向上が達成され、それにより純利益が増大したものと考えられます。
逆に言えば、93年から2002年にかけて、カナダの製油所は有害物排出量を減らしながら同時に生産性の向上を技術開発により達成し、利益を向上させたということでしょう。
さらに環境保全に積極的に取り組む企業は社会的評価も高く、株価が上昇すると予想されます。それにより資本調達コストが下がり、利益向上につながったとも考えられます。
環境保全のための製油所コストとしては93年当時、全米の製油所で環境規制への対応で152ビリオンドルが投資された、あるいは最近のガソリンや軽油のサルファーフリー対応のため、カナダの製油所では全体で5.3ビリオンドル投資したなどが上げられます。
これらの投資は直接的には利益を生まない投資といわれますが、実は直接、間接に生産性の向上につながっていると考えられます。
通常技術屋は、精製装置の改造や新設を検討する時、ただ単にCO2を減らす装置だとか硫黄分を減少させる装置を考えることはしません。同時に総合的に生産性が向上するような工夫や改善を盛り込むように努めるわけです。この様な技術開発や改善の積み重ねが結果として、環境保全と収益向上の両方に寄与していると考えられます。
もっともみんなが早死にするのではそもそも企業利益も何もあったものではありません。
この様な環境保全と企業利益の量的関係についてOGJ誌に記事がありました。記事ではカナダの製油所について、有害物排出量、原油処理量、運転のための資金と純利益の関係について重回帰分析をしています。カナダ国内の15の製油所について過去10年間のデータ、総計51データを利用したといいます。
データはすべて公表されているものを用いており、有害物排出量はNPRI統計値、その他の数値は各企業のAnnual reportによっています。
純利益の計算式は以下のとおりです。
純利益=a+b*有害物排出量+c*原油処理量+d*資金+e*西暦年
最後に西暦年を入れているのがこの解析の味噌とも思われます。この西暦年の中に説明できない要因を全部入れ込もうという狙いです。51個のデータを用いて重回帰分析によりaからeまでの係数とt値を求めています。T値により各変数と純利益の相関が統計学上有意であるかどうかを判断しています。分析結果から有害物排出量と資金は危険率5%で、原油処理量は危険率1%で純利益と相関があると判断しています。
例えば、有害物排出量が1トン減ると純利益は2,000カナダドル向上するそうです。これは随分と大きな影響で、CO2排出権取引で1トンあたり1,000円から2,000円ですから、これと比較すると2,000カナダドルという数値が随分と大きいことが理解できるでしょう。
一方、原油処理量が大きくなると利益が向上するという関係が得られていて、これはリーズナブルです。しかしその係数は2,700BDアップで1,000カナダドルです。つまり、10,000BDの処理量アップを達成しても年間の利益向上はたったの4,000カナダドルにしかなりません。これは明らかに小さすぎます。
これらの結果については記事の中でも矛盾というか、合理的でないと指摘しています。重回帰分析の結果は変数と変数間の因果関係を与えるものではなく、二つの変数が同時に変化しているかどうかの関係を与えるものです。
有害物排出量が減少すると純利益が向上するのは、環境規制に適合するように精製装置を改造したり運転方法を変更したりすることで、同時に生産効率の向上が達成され、それにより純利益が増大したものと考えられます。
逆に言えば、93年から2002年にかけて、カナダの製油所は有害物排出量を減らしながら同時に生産性の向上を技術開発により達成し、利益を向上させたということでしょう。
さらに環境保全に積極的に取り組む企業は社会的評価も高く、株価が上昇すると予想されます。それにより資本調達コストが下がり、利益向上につながったとも考えられます。
環境保全のための製油所コストとしては93年当時、全米の製油所で環境規制への対応で152ビリオンドルが投資された、あるいは最近のガソリンや軽油のサルファーフリー対応のため、カナダの製油所では全体で5.3ビリオンドル投資したなどが上げられます。
これらの投資は直接的には利益を生まない投資といわれますが、実は直接、間接に生産性の向上につながっていると考えられます。
通常技術屋は、精製装置の改造や新設を検討する時、ただ単にCO2を減らす装置だとか硫黄分を減少させる装置を考えることはしません。同時に総合的に生産性が向上するような工夫や改善を盛り込むように努めるわけです。この様な技術開発や改善の積み重ねが結果として、環境保全と収益向上の両方に寄与していると考えられます。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます