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原油価格の動向

2006-10-18 | 石油
2005年のハリケーン・カトリーナの時には70ドルに迫った原油価格は、その後60ドルまで下がったものの、2006年に入って上昇を続け7月中旬には75ドルをはるかに上回りました。しかしその後は下落を続け、足元は60ドルを割り込んでいます。今夏にはこのまま行けば100ドル越え、という論調も聞かれましたが、今はやや落ち着いている感があります。しかし、2003年-4年は30ドルでしたから、下がったとはいえ消費者の感覚からすればまだ高いといえます。

原油価格の予測はできませんが、FACTS(Fesharaki associates Consulting & Technical Service Inc.)レポート要約を見ながら、原油価格がどのような要因に影響されるのか考えてみました。原油は翌月渡しなどの先物価格で表されますので、現在よりも将来のことを重要視します。そこで個々の要因の解析も今度どれだけ増加(減少)するかという言い方になります。

世界の需要では2006年に1.2 million b/d増加し、2007年には1.6 million b/d増加するとIEAは予想しています。今後5年間で年平均1.5 million b/d増加するとしていますので、最終的には7.5 million b/d増加することになります。言うまでもなく中国やインドなどのアジアパシフィックでの消費増大が大きな要因です。日本は近年の経済回復が消費増加要因ではあるけれども、既に充分成熟した国、成熟した産業構造で今後は人口が減少していくことを考えると、長期的に見て石油消費は増大しないと考えられます。

原油は精製して初めてガソリン、軽油などの商品になりますから、精製能力(余力)は石油製品の価格に関係し、ひいては原油価格にも関係します。2005年の米国ガルフ地域がハリケーン被害にあったとき、原油価格とガソリン価格は上昇しました。しかしそれは原油生産が減ったことが主因ではなく、精製設備がダウンしたためガソリンの供給不足となりガソリン価格が上昇し、原油価格も上昇しました。1990年代の原油価格低迷期に精製設備に対する投資を行なわなかったため、米国の精製能力(余力)が全くなかったためです。また、備蓄原油があるのにガソリンが不足したということからも精製設備能力(余力)の重要さがわかります。

今後見込まれている世界の精製能力増強は、中国2.3 million b/d、インド1.3 million b/d、中東3.0 million b/d、その他1.2 million b/dで合計7.8 million b/dです。これは石油消費量の増加とほぼ見合う値ですので、今後精製能力(余力)が原油価格に与える影響は小さいといえます。

原油生産能力(余力)はどうでしょうか。Non-OPECは現在53 million b/dの生産量ですが、2006年で1.1 million b/d、2007年には1.7 million b/dの増加を予想しています。しかし予想通りに生産能力は増えておらず、予想は毎月下方修正されているそうです。Non-OPECで不足する分をOPECの増産で補完できるかといえばむしろ逆で、OPEC能力は毎年 1.2 million b/d減少するとの予測がなされています。2010年までに世界で新たに10 million b/dの原油生産能力を増加させる必要がある、というのが専門家のひとつの見方です。このようにみてみるとColin Cambellのpeak oilの様相を呈しているといえます。最も、今後の生産能力増加は可能とする専門家の意見もあります。

原油が北米や北海、オーストラリアなどで充分に生産できれば良いのですが、残念ながら中東や南米といった地域の原油に頼らなければならないのが実情です。つまり、常に供給不安にさらされているということです。いわゆる地政学リスクとか、カントリーリスクといわれるやつです。政情不安、テロ、労働争議、住民争議、事故などにより原油はあるのに市場に供給されないかもしれないという不安です。この不安の度合いの大小も原油価格に大きく影響します。特に昨今の市場でのキープレーヤーであるヘッジファンドは、原油供給のサプライチェーン、ハード面よりもこのリスク面に強く関心を払っているのではないでしょうか。

原油への依存は供給不安との戦いとなります。いきおい、もっと安定でクリーンなエネルギー、例えば再生可能エネルギーへ移行するという話になります。自給率の向上に努める必要はあるでしょうが、そうかといって石油以外の地下資源(鉱物)や食糧のすべてを自給することは不可能です。当たり前ですが、付き合いにくい石油とも当分の間、付き合う覚悟は必要です。

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