これは石原慎太郎が田中角栄になり代わって一人称で角栄の生涯を記述したものです。
毀誉褒貶相半ばする男の汗と涙で彩られた生涯は壮絶とすら言えます。
高等小学校しか出ていない男が総理にまでのし上がったのは、幼いころから身に着けた金銭感覚と
類稀なる天才的な人間通を身に着けていたからにほかなりません。
石原慎太郎は田中角栄の金権主義を批判し真っ向から弓を引いた人間だったのに、何が彼をして
田中角栄を天才とまで言わしめてこの本を書くことになったのか?
以下この本の「あとがき」より抜粋してみます。
今私たちは高度成長を経て他国に比べかなり高度な繁栄と新しい文化文明を享受しているがその
要因の多くは他ならぬ田中角栄という政治家が造成したことは間違いない。
例えば、国民の多くの様々な情操や感性に多大な影響を与えているテレビというメディアを造成した
のはほかならぬ田中角栄という政治家の決断によったものだし、狭いようで実は南北に極めて長い国土
を緻密で機能的なものに仕立てた高速道路の整備や新幹線の延長配備、さらに各県に一つずつという
空港の整備促進を行ったのも彼だし,エネルギー資源に乏しいこの国のために未来エネルギーの最たる
原子力推進を目指しアメリカ傘下のメジャーに依存しまいと独自の資源外交を思いたったのも彼だった。
そのために、彼はアメリカという支配者の虎の尾を踏みつけて彼らの怒りを買い、虚構に満ちた裁判で
失脚に追い込まれたのだった・・・・・
いずれにしろ、田中角栄という未曽有の天才をアメリカの支配者の策謀によって失われてしまったが、
田中角栄という天才の人生は、この国にとって実は掛け替えのないものだった。