JT生命誌研究館館長 中村桂子
技術は、ある想定の下に進める他ない一方、
自然には想定はありません。
想定外は言い訳にならないのです。
でも現代文明は、
自分たちの想定の中で埋立地に高層ビルを建て、
一見華やかな生活を作ってきました。
そこが夜中までキラキラ輝いているのをすばらしい生活としてきたのです。
高槻から東京へ。
夕方出て夜遅くに着き、渋谷を通って帰宅する時、
いつもその異常な明るさを嫌だと思っていました。
今、そこは適度な暗さです。
空には星が見えます。ホッとしながらその裏にある大きな事故を思うと辛いのです。
しかも、もし東北地方が大きな地震と津波で潰滅状態になっても、
もし電気が供給されていれば東京では今まで通りの生活をしていたのではないかと思うと気持の整理がなかなかつきません。
科学技術立国と言いながら、結局は人に頼るしかなく、しかもそこで「線量計が足りなかった」と言うのが科学技術のありようだとしたら、あまりにもひどすぎます