1.はじめに:
後期高齢者の筆者が、シャープ製のワイヤレス イヤホン タイプの耳穴式補聴器を初めて使用(20日間)したので、難聴が気になる高齢者の参考にと思い、補聴器選定、使用感、難聴問題などを述べる。
2.難聴に気付く:
下記のような状態が次第に多くなり、難聴ではないかと気づき耳鼻咽喉科に行き、聴力検査を受けた結果、軽度難聴と診断されたが、補聴器が無くても良いのではないかと言われた。然し、自分としては不自由を我慢しているわけで、医師の意見には納得できず、補聴器をレンタル試用してみることにした。
■最近、テレビでドラマを見ていて、音声が小さいシーンではっきり聞き取れない場合が多々あり、その結果、ストーリーの理解が不十分になってしまう。
■ミーティング等では音量、音色などさまざまで細かい部分を聞き落としてしまう。
■対話時に多少聞き逃しても、大筋が分かれば適当に相槌を打つ時が多々ある。
■高齢者のエクササイズ系講座などで講師の指示を聞き落とし、他の受講者と違った動作をすることがある。
3.補聴器の選定:
(1)一般的な補聴器:
購入時に補聴器店へ出向き、3回以上のフィッティング(使用者の聴力特性に応じて調整する)をしてもらう必要がある。購入価格も30万円以上であり、気安く購入できない。
(2)シャープの補聴器:
シャープが2021年9月に発売した補聴器(MH-L1-B) で、外観は一見ワイヤレス イヤホン様である。改善点及び付加機能は次項に示す通り魅力的で、又、購入に先立っての一週間のレンタル試用結果も満足だったので迷わず、当製品を選定した。
尚、シャープでは補聴器と言わず、「メディカル リスニング プラグ」と呼んで新鮮味をアッピールkしている。
[充電ケースと補聴器]
(3)シャープ補聴器(MH-L1-B)の概要:
■フィッティング:スマホを使いリモート(在宅)で行うので、補聴器店へ出向く必要はない。
(注)但し、この方法はスマホを使い慣れていない人には不向きである。
■価格は¥99,800:他の補聴器の1/3以下である。
■ワイレスイヤホンとしても使用でき、高音質で音楽が聞ける(ストリーミング モード)ほかハンズフリー通話も可能ある。
■タッチ センサーによる音量調整、モード(リスニングとストリーミング)切替、シーン(標準、打合せ、会議、リビング、コンサート他11シーン)切替の使い勝手が良い。要約すればワイヤレスイヤホンに近い使用感である。
4.使用しての感想:
■装着時に違和感もなく、雑音もなく、ハウリングも問題ない。
■会話がよく聞こえるようになった。
■身の回りは色んな音が溢れていて、世間は思ったよりも活気があるように感じ、気分が若返ったような気がする。
■今まではテレビの近くに椅子を引き寄せて視聴していたが、家人と一緒の席で見られるようになり、疎外感が軽減された。
■趣味でウクレレを習っているが、ウクレレの音が豊かにに聞こえる。
このような結果から、脳の活性化→行動が活動的→QOLの向上などが期待でき、現時点では良い買い物をしたと思っている。
5.気がかりな点:
■脱落:何かの拍子に落下しないか不安である。
本品に限ったことでなく耳穴式の補聴器、イヤホンに共通の問題と思うが、実用上問題ないのかもしれない。
■耐環境性:耐水性、耐衝撃性に強くないようであり、アウトドアでの使用は避けたほうが賢明であろう。
■耐用年数:2021年9月発売で、使用実績データがなく不明である。
6.高齢者の難聴問題は潜在的な重要課題:
最後に、日本では、補聴器の重要性の認識が足りないように思われるので、私見を述べる。
(1)日本の難聴者数と補聴器所有者数:難聴者率;11.3%、難聴者の補聴器所有率;14.4%から次のようになる。
日本の人口;1.25億人とすると、難聴者数≒1,400万人、補聴器所有者≒200万人
この数字から、日本では1,200万人もの人が難聴を軽視し、補聴器を持たず不自由を我慢していることになる。
因みに、難聴度には4段階(軽度、中等度、高度、重度)あるが、難聴者の52%が中等度難聴、39%が軽度難聴で、夫々の補聴器所有率は15%、10%である。
出典:「Japan Trak 2018 調査報告」、日本補聴器工業会
(2)高齢難聴者数推計:
話を簡単にするため男性の高齢難聴者の難聴率のデータ例を示す。
60歳~64歳:18.8%
65歳~69歳:43.7%
70歳~74歳:51.1%
75歳~79歳:73.3%
80歳~ :84.3%
このデータから自分は難聴でないと思っていても、現実には高齢者(65歳~)の多くが難聴者であるのが分かる。
出典:「全区高齢難聴者数推計と10年後の年齢別難聴発生率」、日老医誌、2012;49
(3)難聴問題の重要性:
難聴は国民の11%が罹患し、加齢に比例して、難聴率は拡大し、重症化するので、到来しつつある超高齢化社会でQOLの向上、健康寿命延伸のための重要課題のひとつになって然るべきであろう。又、脳に悪影響を及ぼし、認知症の一要因とも言われている。
然しながら、難聴は直接、生命に関わるものでなく、又、徐々に進行するものであるので当人も、重要問題であるのに気付かずに、補聴器を購入しないのが現状である。
因みに、欧米諸国での補聴器所有率は日本の数倍、高く、古いデータであるが、日本の14.1%に対してアメリ;25%、イギリス;41%、ドイツ;34%である(出典;Japan Trak 2012 、日本補聴器工業会)。
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