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「君よ憤怒の河を渉れ」憤怒をどう読むかで小説派・映画派かが分かる/少数派

2019年04月18日 | 文化・文芸
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君よ憤怒の河を渉れ/憤怒をどう読むかで小説派・映画派かが分かる

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映画とは異なる機種/セスナは社名なので現在は軽飛行機・小型機と呼ぶ

西村寿行氏の出世作、「君よ憤怒の河を渉れ」の話です。小説は1975(S50)に発表、翌年、映画化(監督:佐藤純彌、主演:高倉健)されました。わざわざ取り上げたのは、小説と映画とではタイトルの読み方が違うのです。小説の原作名と映画名が異なるのは多々見られますが、同じタイトルながら読み方が違うのはほかに知りません。「憤怒」が小説では<ふんぬ>、映画では<ふんど>とされていることです。因みに辞書には両方が載っており、意味も同様です。「怒」を<ぬ>と読むのは、日光の鬼怒川がよい例です。ただそれだけのことですが、投稿者流に内容を膨らませました。

相違の経緯は、西村氏の作品検索を掛けても分かりませんでした。想像ですが、映画製作の段階で<>より<>のほうが分かりやすいと判断したと思われます。“激情型”の、あの西村氏が了解したのは、まだ新人の頃だったからではないでしょうか? 私が相違を知ったのは、高倉健を悼むTV番組で映画が放映(BS・レターボックス版)された時でした。大昔、小説は読みましたが映画は見ておらず、TV番組のタイトルが<ふんど>とふりがなが振ってあったので、間違いだろうと思ったのです。恥ずかしながら、40年遅れの“発見”でした。お陰?で、40年ぶりに小説を読み返しました。

著作マナーに触れない程度に、ストーリーをご紹介します。西村氏のハードロマン(ハードボイルド)ぷんぷんで、健さん扮する検事の杜丘(もりおか)が罠にはめられ、強盗・強姦魔にされる。警察から逃れるために、北海道の日高山脈に。途中、大牧場の娘(中野良子)がヒグマに襲われているところを、杜丘が救出。その恩から牧場主(大滝秀治)はセスナ機を与えて逃がすが、逮捕されないよう茨城沖で胴体着水。追い駆ける刑事の原田芳雄も、当時から渋かったですね。彼女が披露した、全身<>(ヌード・後ろ姿)も見処です。関心のある方は、小説かDVDで!

笑ってしまうのが、杜丘は全くセスナを操縦したことがないのに離陸。東京に潜入も警察に包囲、健さんを助けるために中野率いる10頭のサラブレッドが、夜の新宿繁華街を大暴走。彼女も根っから?のオテンバぶりを発揮、初々しく綺麗でした。小説では過程を丹念に書いているのですが、映画はカットされ突拍子なことが多かったですね。また後半から結末が、小説と映画ではだいぶ異なってきます。映画では、首謀の悪代議士を健さんと原田とで射殺。そして健さんは、「法律だけで裁いてはいけない罪がある。法律では裁けない悪がある」。かっこいい~!正当防衛が下されたが、健さんは中野とどうなるのか?

この映画を見て、今から思えばS40年代から50年代は、ハチャメチャながらも元気な時代でした。高倉健が亡くなった時、中国それも異例の共産党直々に弔意が示されました。その理由は、1966年から10年余り続いた文化大革命以降、中国で解禁された初めての日本映画がこれでした。中国13億人のうち7億人が見たと言われ、かなり大袈裟ながらも相当な数の中国人が見たのは確かです。映画を通じて日本の発展ぶり、自由さ、アクションやスケールの凄さに驚嘆したでしょうね。当時から健さんは中国でも「国民的英雄」であり、現在でも親しみを抱いているのです。

中野さんも中国での上映後、現在まで80回近く訪中し、依然、中国でも人気著名人の存在感を示し親しい交流を続けています。両国は、民間外交は友好関係なのです。話を戻し、健さんの訃報を伝える民放TV女子アナが、この作品名が読めずに数秒間絶句し、ムニャムニャとお茶を濁す、“放送事故”(番組中断や混乱する際に使う用語)に近い事態があったそうです。下読みができない、「速報」で飛び込んできたニュースなのかも知れません。40年前に仕掛けられた罠? 運悪い女子アナは、さぞかし「憤怒」だったでしょうね!「女子アナよ憤怒(ぬ?ど?)の人生を渉(わた)れ」(応援)

Ntopkeiji

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