今回から、ハリソンさんのトリストラム・シャンディ氏に対する感情が描かれて行きます。
第4話でのハリソンさんの話からすると、あまり売れていないノヴェライズ作家のハリソンさんが、
5年ほど前に、英国で大ブレイクした人気作家シャンディ氏に対して、
「ネタミー&ウラミー」を持っているかのように見えます。
―まぁ、シャンディ氏のせいで、浮かび上がるチャンスを逃した物書きが、
当時大勢いたって事は、確実ですから。
「作家は人生の不幸を逆転させられる職業」と言っていた人がいますが、
60年代の英国で、シャンディ氏一人がその幸運を独占 してしまったのです。
「これを恨まずにいられようかーっ!」
―と。
ところが、今回デュポン先生の前では、一転してシャンディ氏に対して「親しみ」や、
「感謝の心」すら持っているかのような話しっ振りとなります。
あとは、デュポン先生について一つ弁護しておくと、
エロい本ばかり読んでいるかのような印象を与えかねないのですが、
「人気がある本だったので、話題に上り易かった。」
―という事にしておいて下さい。
「パミラ」は、「18世紀版シンデレラ」みたいな感じで、
当時の特に女性読者に人気があって、エロい話というよりは、「玉の輿バイブル」
みたいな感覚で読まれていたのではないかな―という事でOK?
現代人目線では、どうも「セクハラ・ロマン」っちい感じなのですが。
ハリソンさんとデュポン先生、
明日は「シャンディ氏の名前がヘン!」だという事についての話をします。
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「トリストラム・シャンディ」/ローレンス・スターン(1713-68)作
先週出てきた、「ジョーゼフ・アンドルーズ」の訳者、朱牟田夏雄さん訳で、
筑摩世界文学大系と岩波文庫にあります。
八潮出版社刊/「トリストラム・シャンディ氏の生活と意見」
のタイトルで綱島窈さん訳もあります。
作者が知りたいのは、1760年の発表以来、
この本を読んで人生を狂わされ、(しかもその自覚症状が皆無のまま末期状態へ突入?)
―な男性読者が、世界中でいったい何人いるのか?
―という事です。
まだ読んでいない男性の方で、読みたい方はどうか、「自己責任」でお読み下さい。
―女性の場合は、ほとんど心配いらないようです。