18世紀の英国では、東インド会社という株式貿易企業が絶頂期を迎えていました。
インド各地を拠点にした商館が、アジアのエキゾティックな品物を購入し、
英国本社では、年4回の競売によって販売人へと輸入商品を引き渡し、
国内や欧州各地の消費市場へと出回って行きました。
この東インド会社、商社なのに軍隊を持っていて、
建前上は自衛軍なのでしたが、この物語の時代の頃には、
インド土着の支配者階級の争いに介入して勝利者の側となり、
ムガール皇帝から3地方の徴税権を獲得し、
商品売り上げの何倍も上回る利益を得ていました。
その後も東インド会社によって、インド各地はじわじわと植民地化されて行き、
19世紀の中頃には、会社から英国政府直轄の支配地となってしまいました。
ヴィクトリア女王(1819-1901)が初代英領インド皇帝となり、
帝国は1947年のインド共和国・英連邦王国パキスタン両国の独立まで続いて行くのでした。
1762年の3月、ハリソンさんはロンドンにある友人の屋敷で、
インドに生まれて長く住んでいたという、若く美しい人妻アラベラと出会います。
二人は心を通わし、ある夜にセンティメンタルな愛情を確かめ合うのですが、
その先には、悲しい現実とつらい別れが待っていたのでした。