歴史に題材を採ったバラエティ番組がしばしばテレビで放送される。そういう番組における最近の“坂本龍馬絶賛”ぶりは異常と言っていい。
曰く、「明治維新最大の功労者」「戦争を嫌った平和主義者」「日本だけに留まらない世界的視野を持ったコスモポリタン」等々。
先日平成19年9月18日 に日本テレビ系で放送された『本当にあった日本史サスペンス劇場』でも「常に革新的・先駆者的発想を持った幕末の英雄」「龍馬の頭のなかにあったのは常 に”世界の中の日本”」「日本の夜明けを生み出した男」と褒めちぎっていた。
坂本龍馬が幕末維新期においてそれなりの役割を果たしたことは事実だ。だが、あくまでも“それなり”という程度のことであって、彼の働きで明治維新が成ったというわけではない。芝居に例えるなら、セリフが一言二言有ることは有るという程度の端役に過ぎない。
実在の坂本龍馬の人となりやその事績は、司馬遼太郎の空想歴史小説『竜馬がゆく』等によって作り出されたイメージとは全くと言っていいほど違っていて、“龍馬が薩長の和解と連携(いわゆる「薩長同盟」)を発案し、彼が仲介して両者を説得し手を結ばせた”という「薩長連携発案仲介伝説」や“龍馬が大政奉還を発明し、彼の奔走によって実現した”という「大政奉還発明奔走伝説」などは作り話に過ぎない。
以前放送された『日本人の好きな英雄100人』とかいうタイトルの番組のなかで、織田信長に次いで人気第2位だった坂本について、司会の島田紳助氏がゲストと 会話しながらこう言い放った。「(坂本龍馬は)商売人ですよね。」
間違っていると思う。坂本はまともな「商売人」ではない。「詐欺師」あるいは「泥棒」と言う方が近い。嘘だと思う方は、坂本について書かれた小説や其れに等しいレベルの「伝記」ではなく、歴史的実在の彼について書かれた本をお読みになるとよい。有名な「いろは丸事件」においても、有りもしない鉄砲弾薬や金などを積んでいたとウソを言い張り、紀州藩から現代の価値なら15億円前後と推定されるの巨額の金を騙し取っている。
異様なほど持ち上げられる坂本龍馬に対して、逆に不当に貶められているとしか思えない扱いを受けているのが西郷隆盛だ。
「平和主義者」の坂本に対して、“好戦的で何事も武力・戦争で決着をつけないと気がすまない人物”という描き方をされることが多い。『本当にあった日本史サスペンス劇場』でも“平和的手段による改革を目指す坂本龍馬の存在が、武力での倒幕にこだわる西郷にとっては邪魔であったため、西郷が中村半次郎を差 し向けて殺害したのではないか”という説が提示されていた。建前上は幾つかある説の一つという扱いだったが、一番怪しいという印象を視聴者が受けるような演出がなされていた。
実は、近代史を専門とする歴史学者で“坂本龍馬殺害に薩摩藩が関与している”という見解を持っている者はほぼ絶無である。根拠の無い珍説・俗説の一つでしかない。他人と違う「説」を唱えて目立ちたい、或は商売のネタにしたいだけの自称研究者や作家が言い張っているだけ、というのが実情である。
西郷を意図的に悪役に仕立て上げようとしているとしか思えない。
西郷は“いざとなれば戦争を厭わない”という人物である。それは西郷だけではなく、坂本を含めあの当時の武士ならほぼ全員がそうなのだ。その武士共通の価値観を現代人の価値観で非難し、西郷(のみ)を愚者扱いし、彼の優れた思想・人間性や大きな事跡を顧みない扱いは異常としか言いようが無い。
こうした史実を無視した露骨な“龍馬絶賛”と“西郷降ろし”は何が原因なのだろう。
西郷隆盛の言葉をまとめた『南洲翁遺訓』にこういう意味の言葉がある。
「正しい道をふみ、国を賭して倒れてもやるという精神がないと外国との交際はこれを全うすることはできない。外国の強大なことに恐れ、ちぢこまり、ただ円 滑にことを納めることを主眼にして自国の真意を曲げてまで外国のいうままに従うことは、あなどりを受け、親しい交わりがかえって破れ、しまいには外国に制圧されるに至るであろう。」
「国が外国からはずかしめを受けるようなことがあったら、たとえ国全体でかかってたおれようとも正しい道をふんで道義をつくすのは政府のつとめである。」(『西郷南洲先生遺訓 口語訳付』発行:西郷南洲百年記念顕彰会より引用)
西郷のこうした思想を日本人が“再発見”し、そうした姿勢で諸外国、特に所謂「特定アジア」に臨むことを恐れてい る人物や勢力が、坂本龍馬を「平和主義者」「コスモポリタン」としてまつりあげ、その勢いで、坂本と対極にいるように見える西郷の評価を落とそうと画策しているのではないか?
そういえば、『本当にあった日本史サスペンス劇場』は、読売新聞と一緒に世論操作までして「(屈中・屈朝の)福田康夫自民党総裁・総理」実現を企んでいることが暴露された日本テレビの番組だ。そして、坂本龍馬ファンを公言する元在日北朝鮮人孫正義氏のソフトバンクがスポンサーの一つだった。
まあ、私の被害妄想かもしれないが。。。