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流されて蜀の国へ

2008-10-15 02:48:44 | 歴史
これは読書録で、書名は「流されて蜀の国へ」(川口孝夫著)である。
自費出版なので、Amazonのアフィリエイト投稿にリンクしようと思ったがそこにはない。
友人が、私なら興味を持つかもしれないと、送ってくれた本である。
10年ほど前に北海道新聞の1面トップを飾ったらしい。
ここに紹介されている。
http://www.netlaputa.ne.jp/~rohken/kawaguchi.htm


終戦から1950年代、日本の社会は左右の政治勢力が力で激突する時代であり、様々な事件が起きた。
それは、多くはGHQが朝鮮戦争を前にして仕掛けた謀略であるとの論が多く展開され、それが昭和史の謎として今も語り継がれている。
その中にあって、どうも本当に共産党の側が引き起こしたらしいのが「白鳥事件」という、北海道の札幌で起きた警察官殺害事件である。その本当らしさを決定づけた本がこれである。

この著者の川口孝夫氏はすでに亡く、最終的なことはついに語らず、亡くなったらしい。
歴史とはこうして、闇の中へ消えてしまうのであろうか、と思うと残念である。

この本を読んで、私が驚いたというのは、1960年代以降も、1950年代に密航した多くの日本共産党員が中国に残り、そこで歴史的な大躍進運動や文化大革命の中で翻弄されたということである。そのことの歴史的証言がここにある。
この著者は、人生の大半を革命運動の幻想の中で翻弄され、最後には本人も信じた文化大革命の「敵」にされ、ようやく自分自身で考える事の重要性に気がついたことを告白している。
その時は、既に齢50を超えていた。

しかし、そのことによって帰国を果たし、晩年は穏やかな人生であったという。彼が人生を掛けて確保した、この自らの頭で考えることの重要性が、少しでも周囲をかえる事ができたとしたら、本望であったに違いない、と思う。

1950年代の恨みは、いまでもあちこちに渦巻いている。

(本の題名が反対になっていました。「蜀の国に流されて」ではなく、「流されて蜀の国へ」です。関係者の皆様、読者の皆様へお詫びして訂正いたします)


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