サッカー・ワールドカップ(W杯)が15日、閉幕した。世界中から100万人以上もの外国人が訪れたとされるビッグイベント。2年後に控える東京五輪パラリンピックに生かせそうな取り組みも見えた。

 今大会、ファンから好評だったのがロシア国内の交通手段だ。試合のチケットを購入した人には全員「ファンID」という顔写真入りの身分証が発行された。

 ファンIDはビザ代わりになり、入国手続きが簡素化された。各開催都市では「フリーライド(無料乗車)」が導入され、試合の日はバスや地下鉄などがファンIDを見せるだけで無料に。本来は数千円する各都市間の寝台列車も、事前に予約すれば無料で乗車可能。30万人が観戦に利用し、好評を博した。

 ロシアは日本同様、英語が通じにくいと言われるが、タクシーについては、スマホの配車アプリが普及。行き先を指定してタクシーを呼べば、料金も事前に表示され、目的地が自動的に運転手に伝わる仕組みだ。料金も安く、外国人ファンも気軽に利用した。

 大会には約3万5千人のボランティアが参加。17万人を超える応募があり、英語の話せる18歳以上の人たちが国内外から選ばれた。大学生など若者が多く、平均年齢は24歳だった。

 ログイン前の続き目印は赤いシャツ。会場だけでなく、主要な駅や空港にその姿があった。ロシア語ができない国外ファンが大多数のなか、英語のサポートは貴重な存在。恒例となったファンとのハイタッチも大会を彩った。

 ロシアでは6月は大学の試験期間。だが多くの大学では、ボランティアへの参加証明があれば試験日をずらす対応が取られたという。遠隔地から参加する費用は自己負担だが、ユニホームや食事、担当都市内での交通費は無料。専用のアプリまで開発し、効率的に勤務シフトを管理した。

 「一生に一度の機会。やってよかった」。大会を終え、若者たちは充実感をにじませていた。

 会場でファンの人気を集めたのが、ドリンク用の「カップ」だった。ドリンクは紙コップでなく、専用のプラスチックカップで販売された。カップには日付や対戦国名などが印刷されていた。会場限定の「プレミア感」が手伝い、捨てて帰る人は少数派。むしろ落ちているカップを拾い集め、山ほど重ねて持ち帰るファンが続出した。

 ビールは、カップ込みで1杯350ルーブル(約630円)。最も売れ筋の商品がゴミを生まないため、紙コップなどを使った場合に比べると、大会全体のゴミの量はかなり減ったはず。前回大会から続く取り組みといい、「ゴミ拾い」だけでなく「ゴミ削減」の工夫も光った。