トヨタ自動車が日本市場に投入する電気自動車(EV)の概要が判明した。大きさは軽自動車より小さい「超小型」で、乗車定員は2名。最高速度は時速60キロで、フル充電の走行可能距離は約100キロだ。発売は2020年を予定している。トヨタはなぜ、小さなEVを日本に投入するのだろうか。
© マイナビニュース トヨタの超小型EV
トヨタは6月7日、MEGA WEB ライドスタジオ(東京都江東区)にて「トヨタの電動車普及チャレンジ」説明会を開催。日本向け超小型EVの概要を明らかにした
軽より小さい新規格のEVを開発中
トヨタは2017年の東京モーターショーに展示した小型コンセプトカー「i RIDE」をベースとし、日本市場で市販する超小型EVを開発中。サイズは全長約2,500mm、全幅約1,300mm、全高約1,500mmとなる。現時点で、日本には軽自動車よりも小さいクルマの規格自体が存在しないが、国土交通省では現在、規格の整備が進んでいるらしい。新しい規格のクルマとなるので、自動車税の金額なども軽自動車とは違う基準になるかもしれない。
© マイナビニュース トヨタの「i RIDE」
トヨタの「i RIDE」
トヨタの説明員によれば、このクルマの開発では、小さいながらも可能な限り室内のスペースを確保するのに苦労したそう。主な用途は買い物など日常の近距離移動や、近距離の巡回/訪問などの業務利用を想定する。基本的には自宅周辺で乗るクルマとして開発しているが、安全面にも手を抜くつもりはないというのが同説明員の解説。エアバッグはもちろんのこと、最近は軽自動車でも充実してきている先進安全装備の搭載についても検討しているとのことだ。
トヨタは今回の説明会で、超小型EVの商用車についても構想を発表した。まだコンセプトカーを作った段階で、市販の計画は「現時点でない」(前出の解説員)とのことだったが、「i RIDE」が市販車になった経緯を考えると、商用の超小型EVが発売となっても不思議ではない。
© マイナビニュース トヨタの超小型商用EVコンセプトカー
超小型商用EVのコンセプトカー
トヨタはなぜ、日本向けに軽自動車よりも小さいEVを作るのだろうか。その理由は、当然ではあるが、そこに商機を見出したからだ。トヨタによれば、日本の顧客はEVに対し、「近所の用事を済ませられること」であったり、「訪問先でも駐車場に困らない大きさ」であったりといった商品性を期待しているとのこと。EVでは航続距離(フル充電で走行できる距離)が注目されがちだが、顧客は必ずしも、EVで長い距離を走りたいと思っているわけではないというのがトヨタの見立てだ。
© マイナビニュース トヨタが集めたEVに対する顧客の声
トヨタが集めたEVに対する顧客の声
日本では、まず超小型EVで需要を開拓しようとしているトヨタだが、EVのグローバル展開に向けては、2020年以降に10車種以上のモデルを用意する方針。コンパクトEVではスズキおよびダイハツ工業と、ミディアムSUVではスバルとクルマを共同企画する。
© マイナビニュース トヨタのグローバル展開向けEVクレイモデル
中国、米国、欧州など、大きな需要が見込まれるグローバル市場に向けては、2020年以降に10車種以上のEVをラインアップするというのがトヨタの考え。説明会場にはグローバル市場向けEVのクレイモデルも展示してあった
トヨタは2030年の目標として、ハイブリッド車(HV)およびプラグインハイブリッド車(PHV)で計450万台以上、EVおよび燃料電池自動車(FCV、水素で走るクルマ)で計100万台以上を販売したいとの考えを示している。同目標の達成は5年程度、前倒しになるかもしれないとのことだ。ただし、この数値目標をトヨタが達成できるかどうかは、実際に顧客が電動車両を買ってくれるかどうかにかかっている。トヨタとしては超小型から大型までEVを幅広くラインアップすることで、顧客に豊富な選択肢を提供したいという思いなのだろう。