トヨタ自動車は13日、愛知県豊田市の本社で株主総会を開いた。2009年6月の就任から丸10年となる豊田章男社長(63)は「自動車産業は100年に1度の大変革期を迎えている。将来のモビリティー社会を株主のみなさまと築いていきたい」と発言。電動化や自動運転といった次世代の技術開発に注力し、新たな企業の姿を模索する姿勢を強調した。

 総会には過去最高となる5546人が出席。従来は現金のみだった取締役の報酬に株式報酬枠を設ける議案が可決された。激化する世界での競争に備え優秀な人材を確保することがねらいだ。

 19年3月期の売上高は、国内企業で初めて30兆円を突破し、グループの世界販売台数も約1060万台と過去最高を更新。しかし、自動運転などの技術革新が急速に進み、従来のビジネスモデルが通用しなくなる可能性があるとして、移動サービス全般を手がける「モビリティーカンパニー」への変革を掲げる。

 豊田氏は総会で、「モビリティーカンパニーへのフルモデルチェンジは私の在任期間中にできると思わないが、トヨタらしさを取り戻すこと、企業文化の再構築は、私の代でやりきる覚悟だ」と述べた。

 株主からは、多発する高齢ドライバー事故への対策などについて質問が出た。吉田守孝副社長は「安全な車づくりを進めているが、道半ばだ。後付けの踏み間違い加速抑制システムを拡大していく」と答えた。(細見るい、竹山栄太郎)

ログイン前の続き後継者は「豊田姓があろうとなかろうと」

 豊田章男社長は23日で社長就任から丸10年となる。リーマン・ショック直後の大赤字から業績を立て直したが、近年は自動運転や電動化といった技術革新に直面し、「モビリティーカンパニー」への転換を急ぐ。巨大企業の変革をめざし、引き続きかじ取りを担う。

 「トヨタらしさを取り戻す闘いをしながら、同時に未来に向けてトヨタのフルモデルチェンジにも取り組んだ」。13日の株主総会で豊田氏は直近の1年をこう振り返った。

 就任直前の09年3月期、トヨタは営業損益が4610億円という赤字だった。同年秋には米国発の大規模リコール(回収・無償修理)問題が浮上し、さらに東日本大震災などの災害対応にも追われた。だが、その後は円安の追い風を受けて業績が回復。19年3月期には売上高が国内企業で初めて30兆円を超えた。

 盤石に見えるが、豊田氏は「トヨタは大丈夫、というのが一番危険」(今年5月の決算会見)と気を引き締める。

 背景には、「CASE(ケース)」と呼ばれる業界の変化がある。つながる車(C)、自動運転(A)、シェアリング(S)、電動化(E)の頭文字をとった言葉だ。

 車をつくって売る従来のビジネスモデルは通用しなくなる可能性があるとみて昨年、「トヨタを、人びとのさまざまな移動を助けるモビリティーカンパニーに変革する」と、豊田氏自ら宣言した。

 近年は「仲間づくり」に力を入れる。スズキやマツダといった同業だけでなく異業種との提携も活発だ。移動サービスをめぐって配車サービス大手の米ウーバー・テクノロジーズや東南アジアのグラブに出資し、両社の大株主であるソフトバンクとも組んだ。車載用電池ではパナソニックとの協力関係を深めている。

 豊田社長がもう一つのカギとみるのが、トヨタ生産方式や原価低減といった原点への回帰だ。総会の場で株主から自身の後継者について問われると、「豊田という姓があろうがなかろうが、誰が社長でも大切なことは創業の原点を見失わないことだ」と答えた。(竹山栄太郎)