JAZZを聴きながら ふたたび

恥も顧みないで再々開、よろしければお付き合いを

人非人でも生きてさえいれば

2009年09月08日 | m-o

爽やかな秋晴れが続き、今日も気持ちの良い一日、と思ったら3時過ぎには空一面雲に覆われてしまいました。大きな崩れはないとの予報ですから、良しとしましょう。

モントリオール世界映画祭で、根岸吉太郎監督が最優秀監督賞を受賞されたそうで、おめでとうございます。賞が全てではありませんが、邦画が世界的に認められることはじつに嬉しいことです。(なんと偉そうな物言いか)
受賞した作品は『ヴィヨンの妻~桜桃とタンポポ~』、原作は太宰治の短編『ヴィヨンの妻』だそうですが、あの小説のニアンスがどう表現されているのか、観るのが楽しみです。

あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。・・・・・・・・(太宰治『ヴィヨンの妻』)

あの『ヴィヨンの妻』の奥さん『椿屋のさっちゃん』は太宰の理想の妻なんでありましょうかねぇ、女性目線で書かれた太宰の小説は、それぞれに太宰のじつに身勝手な理想女性を描いているように思えてならないわけですが、グータラ亭主にも献身的に寄り添う妻は私も理想とはするものの、その理想の妻に一時の浮気までさせる太宰の心理は今ひとつ理解できない・・・・いや、小説の中でそういった事件を持たせることで、自分の浮気を正当化する、う~~ん有りかもしれない。(こら!)
「人でもいいじゃないの。私たちは、生きていさえすればいいのよ」
さっちゃんのこの最後の言葉に、しょせん、男は肝の据わった女性にかなうわけもなく、太宰がいかに甘えん坊だったのかが分かるようにも思えます。私も負けず劣らずの甘えん坊ですけどね。

あはは、『ヴィヨンの妻』の内容を知らない方には、こんな話チンプンカンプンかもしれませんね。
ともかく、現代の女性がこの映画を観て何を思うのか、じつに興味が湧きます。

それにしても、最近の邦画は頑張ってますよねぇ、もちろん質、内容ともに良い作品が数多く出てきたということなのでしょうが、もともと洋画ファンであった私には、洋画の質、内容が、それ以上に貧素になってきた結果とも思えます。
だって、最近は「洋画ではこれ!」ってぇのになかなか出会えないんですもん。

「それは、違うと思うよ」
と異論を挟んだのは家人であります。
「多感な時期に観たものは、それが一番だと思いたがるんじゃないの」
う~~ん、なるほど、たしかにその時期必至に観ていたのは洋画でしたからねぇ、音楽もそうだし、ジャズもしかりかぁ・・・・

考えてみれば、私なんざぁ、歳を取って映画を観る姿勢もずいぶん変わってきましたもんね。
映画館にはさほど足も運ばず「煙草吸いながら観られるし、途中でトイレも行けるし、こっちの方がいいやぁ」なんて自宅でDVD鑑賞ばかり。しかも、最近じゃ字幕を読むのが面倒で、洋画も日本語吹き替えで観ちゃうみたいな。(笑)
「悪の根源はDVDだ!」
責任転換は私の十八番です。(笑)

まっ、最近DVDすら観る時間がなかなか取れませんので、未観の作品が溜まっています。今度の休日は「まとめ見」でもしましょうかね、字幕で(笑)

さて、今日の一枚は、ハル・マクシックです。

ベツレヘムのイースト・コースト・ジャズ・シリーズの一枚。
マクシックというと、知名度は今ひとつですよね。イースト・コーストの白人ってぇのは、そこがかわいそうっちゃかわいそうなんだよなぁ。(笑)

演奏内容は、堅実で確実、悪く言えば、癖なくスムーズ、そしてクールってな感じでしょうか。
こういったスタイルは、往々にして「堅実だけどつまらない」との評価になりがちなのですが、このアルバム、マクシックに関しては、そうではありません。
しっかりした音と構成には知的さを感じさせ、そのくせ、無駄のないソロはアイディアに富んでいます。
もし、マクシックを未聴の方がいらっしゃいましたら、ぜひとも一度お聴きになってみてはいかがでしょうか。ちょっと、深めの良さがあるかもしれませんよ。

HAL McKUSICK QUARTET
1955年2月17日録音
HAL MCKUSICK(cl,as) BARRY GALBRAITH(g) MILT HINTON(b) OSIE JOHNSON(ds)

1.TAYLOR MADE
2.YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
3.THEY CAN'T TAKE THAT AWAY FROM ME
4.LULLABY FOR LESLIE
5.MINOR MATTERS
6.BLUE-WHO
7.BY-IAN
8.WHAT'S NEW
9.INTERWOVEN
10.GIVE 'EM HAL