沖縄 8 Scene

沖縄で生まれ沖縄に生きる
      8郎家の日記

コロナは宅シネマ

2020年04月04日 | 映画

 今回のカテゴリーは久しぶりに「映画」なのですが、まずこの悲報に触れずにはいられません。

 

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 新型コロナウイルスに関して、多くの国民を悲しませる大きなバッドニュースが飛び込んできました。コメディアン志村けんさんの訃報です。死因はコロナウイルスによる重度の肺炎だったそうです。

 志村けんさんは、オキナワンポップの名曲「ハイサイおじさん」をパクった「変なおじさん」という国民的ギャグもあって、8郎らウチナンチュにもなじみのあるコメディアンでした(地元紙の記事で、作曲者の喜納昌吉さんに許可を取っていなかったことが判明!不謹慎ですが笑)。

 8郎は個人的にも志村けんさんに強い思い入れがありました。というのも、幼いころ「テレビはNHKしか見るな」と異常なまでに厳格だった父が、唯一見ることを許してくれた民放番組が『8時だよ!全員集合』だったのです。ヒゲダンス、カラスの勝手でしょ、アイーンなどなど。貧しく苦しい生活を強いられていた幼い兄妹3人にとって週末の最大の楽しみでした。父親はじめ周囲の大人がみな、いつもしかめっ面で生きている姿ばかりを見ていた8郎たちにとって、「大人ってこんなに面白いんだ」というカルチャーショックを与えてくれました。ただのお笑い番組ではありません。大人になることに夢を与えてくれた番組でした。日本中の子供たちが「志村、うしろ!」と呼び捨てにしたのも、志村けんを軽蔑していたのではなく、日本一親しみやすい大人だったからでしょう。そんな志村けんの頭をしばく浜田雅功にムカっとしていた8郎は変でしょうか(てめーはただ志村けんに乗っかってるだけあらにっていう!笑)。ダウンタウンの才能とパワーは認めますが、人を傷つけずに自分で笑いを取ったという意味では、自称天才の松本仁志も志村けんの足元に及ばないと思います(バカ殿のセクハラ要素は否めませんが・・・)。話が脱線しすみません。

 昭和、平成を彩った偉大なるコメディアンのご冥福を心からお祈りします。志村けんがもういないお笑い界なんて今でも信じられませんね。昭和がどんどん遠い過去になっていきます。

 

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 そんな悲報が訪れることを知らなかったとある平日。会社帰りの8郎はコロナによる外出自粛ムードの中 “あえて”の行動に出ました。それは、映画館に行く、です。決して暴挙ではありません。間違いなく人が少ない、というのを想定していたからです。目的は、昨年から世界の映画界の話題をさらった『パラサイト 半地下の家族』です。8郎が最もリスペクトする韓国の映画監督ポン・ジュノ氏の力作。外国語映画初のアカデミー作品賞という快挙だけでなく、4冠というおまけも付いてきました。すでにご覧になった方も多いでしょう。

 マスク着用で訪れた映画館内。8郎の予想は当たりました。半径2㍍どころか、10㍍周囲にも人がいませんでした(笑)。閉店ガラガラ状態です。このまま東京のように休館になってしまいかねない、というのも急いだ理由です。この映画だけは大型スクリーンで見たかったのです。ちなみに劇場内は10数人しかいませんでした。

 備え付けのアルコール消毒液でしっかり手をぬぐったあとは、感染個所として一番危険な喉もアルコール消毒します。アルコール濃度5%の液体が強力にのどを殺菌してくれました。金銭的理由から1杯だけだったのが残念。って。

 さて感想ですが結果から言うと、前評判が高すぎたこと、事前情報がかなり入っていたこともあって、「これまで見た中で一番!」「ポン・ジュノ監督の最高傑作」などという最高得点はつけられないものの、世界中の高評価に納得の完成度でした!

 早速、超シニカル映画評論家8郎(怖)による感想&超辛口分析です。なるべく核心のネタバレがないように書きますが、まだ観ていないという方はここでページアウトをおすすめします。

 まず、よかったポイント。それはもちろんテーマ設定です。名優ソン・ガンホを父親役に据えた「半地下」での生活を余儀なくされる貧困一家を主役に、格差社会という韓国の社会問題にストレート勝負します。ネタバレになりそうですが、地下でなく「半」地下、というコンセプトも大きな意味を持ちます。この設定の意味が明らかになる中盤の展開もとても面白いです。

 半地下家族を通して描く格差社会の矛盾、それが近い将来に何をもたらすのか、という問題提起。同時に、下には下がいる、ここまで進んでしまった社会構造を変えるのは非常に困難だという現実も突き付けます。金持ちは性格もよくなるが貧乏人は性格もやさぐれてしまう、貧乏人は自分より貧乏人を助けない、などという「言ってはいけない」的な部分にも正面から切り込みます。エンターテイメントとしての要素、コメディー、ロマンス、スリル、サスペンス、ホラー、エロチシズム、アクションも惜しみなく取り入れています。ジャンル分けができないほどのてんこ盛りですが、それが乱雑になっていない仕上がりが素晴らしい。

 状況設定も秀逸です。金持ち夫婦の豪華リビングでのいちゃつきを、半地下家族そろって隠れた豪華テーブルの下で一晩中聞かされる。そしてそこで金持ち夫から身分差別的なことを聞かされる父親ソン・ガンホの屈辱。大雨による浸水で半地下生活の人たちが家を追われ、公民館で寝食する中、災害とは無縁の高台の豪邸で開かれる誕生日パーティー。そして、金持ちのご主人様からパーティーの道化役として、公民館から着の身着のままで呼び出されるソン・ガンホ。いずれの場面設定も、高いところに住む人間と低いところに住む人間の格差を象徴することに成功しています。そもそも大雨が高台から階段を伝わって流れ落ち、半地下に浸水するシーンがまさにそうですが。

 役者たちもソン・ガンホはじめ、みなさんいい演技をしていました(ていうか三流役者は一人も登場しません)。家政婦役が北朝鮮のアナウンサーの真似をするところは抱腹絶倒ものです。中盤からの方向転換には引き込まれること間違いありません。全体を通して、同監督の傑作『殺人の追憶』ほどの圧倒的迫力は感じなかったものの、円熟期を迎えた?ポン・ジュノ監督の技が隅々まで施されている感じです。

 以上が高評価ポイントでした。

 お待たせしました(笑)。ここからは、超シニカル映画批評家8郎から恐怖の減点ポイントに入ります。ちなみに減点をするのは、いやがらせではありません。傑作だっただけに指摘したくなるだけです。つまり批評したくなるだけ傑作だったとも言えます(ややこしい)。

 すでに世界的名声を得ているポン・ジュノ監督だけに、若いときのギラギラ感?が薄くなっていたというのが一番でしょうか。ほとばしる情熱より芸術的な完成度を目指した的な・・・。具体的にいうと日本映画のようなスポンサーへの配慮的な部分を少々感じるようになっていました(あとで書く役者の肌つやというのもそういう意味です)。アカデミー賞受賞前後もアメリカのメディアに精力的に出演していたという同監督。そうなるとどうしても商業主義の影響力を避けて通ることはできません。次回作はあまり期待できないのかもしれませんね。人間、ギラギラ感がなくなったら、面白みもなくなります。 

 具体的な面では、貧困層の生活にしては主役家族の精神構造が比較的明るい、というのがまずリアリティに欠けました(8郎個人的にも「幼少時の俺たちよりいい生活ではないか」と思ってしまいます)。また、貧困生活にもかかわらず息子と娘の肌つやが良すぎるなど(役者も商品なので画面映えするためのメークアップなのでしょうが)など、シニカル8郎は違和感を覚えました。大雨による水害で下水道の汚水に浸るような目に合ったソン・ガンホを、翌日豪邸に呼び出した金持ち主人が臭いを指摘しないなど、ストーリーを進めるために時系列的矛盾をスルーしたシーンも散見します。 

 しかし、怒涛の急展開となる後半シーンでソン・ガンホが見せる怒りの表情は、貧しさの中でも陽気なキャラクターを崩さなかった父親が、実は重度のコンプレックスを心の闇として抱えていたのだということを浮き彫りにします。ほころびかけた脚本、物語進行をソン・ガンホの鬼気迫る演技力が強引に救った、と言えそうです。ラストシーンに関しては、過去の作品と似ている上に、その作品を超える迫力がなかったというのが、ただただ残念。過去の作品を見てない方は気づかないかもしれませんが。

 超シニカル批評家8郎的には、上記のように感じました。

 とは言え、貧困の連鎖、という社会問題に真正面に取り組み、「ハリウッドなんかより面白い映画をつくるぞ」という気迫に満ちあふれているのは間違いありません。どこかの国の『〇引家族』の数倍のエネルギーを感じます。練りに練った脚本がもたらす、最初から最後まで目が離せないというストーリー展開だけでも希代の傑作といえるでしょう。

 まだ見ていないという方はぜひ。映画館で見てきた8郎が言うのもなんですが、内容が濃いのでレンタルビデオのテレビ視聴でも十分楽しめます。(注)ただし、多少のエログロがあるので子供と一緒に見るのは避けた方がいいですね。

 

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 さて、映画といえば、BS放送にもお世話になっていることを、何度か当ブログでもご紹介してきました。ちょっと古めの名作がよく放送されているので、とりあえず録画しておき、時間があるときに自宅鑑賞しています。レンタルしようと思っていたものがタイミングよく放送されていたりするので、とてもお得感があります。その中でも特に印象に残った作品を数本紹介します。

 まずは『シンドラーのリスト』です。超有名なのでほとんどの方がご覧になっていることでしょう。スピルバーグ監督による1993年アカデミー賞7冠作品です。鑑賞までに四半世紀余を費やしてしまった自分を恥じました。

 シンドラーという人物が実際の偉人かどうかはどうでもいいことです。人間がこれだけの恐ろしいことをしてきたことを歴史に残しておかなくてはなりません。「血のにじんだお金はいらない」と監督料を受け取らなかったというユダヤ系アメリカ人スピルバーグ氏の執念がにじんだ歴史に残る傑作であることは間違いありません。劇中では助けることができなかった赤いコートの無邪気な女の子。その女の子の手を握る大人の手を作品イメージに持ってきたところに、スピルバーグ監督の思い入れを感じました。全編モノクロの世界であえて女の子だけカラーにした意味。弱いものを助けることができなかった人類共通の過ちを、映画という手法によって負の歴史遺産として残したのです。

 お次は『戦場のピアニスト』(2003年、ロマン・ポランスキー監督)です。

 こちらもナチスのユダヤ人虐殺をテーマにしています。フルカラーなので臨場感という意味では『シンドラーのリスト』を上回りますね。こちらもアカデミー賞作品賞受賞かつ3冠。車いすのおじいさんがナチスによってアパートの5階から投げ落とされるシーンはあまりにも衝撃ですね。『シンドラーのリスト』同様、簡単に人が殺されていくので、見ているこっちもマヒしてきます。その怖さも体感することができます。

 次はベトナム戦争を題材にした40年前の『地獄の黙示録』(1979年、フランシス・フォード・コッポラ監督)です。

 この映画は、まさに一人で部屋に閉じこもって観る価値のある映画だと思います。よく「何が言いたかったのかわからない」と評される難解な部分は確かにありますが、コッポラ監督の執念を感じることは間違いありません。主役のマーティン・シーン(『プラトーン』のチャーリー・シーンの父)が川面から顔を出す超有名なシーンなど、不気味だけど美しすぎる映像に圧倒されます。CGなんて使ってないのでリアル感がハンパないっす。世界観に引きずり込まれます。

 『シンドラーのリスト』がユダヤ人虐殺に対する怒りに満ち溢れているのに対し、こちらはベトナム人への贖罪という視点はあまり感じません。どちらかというと戦争という巨大なエネルギ―の虚無と、それに翻弄され狂っていく人間の心理を描いています。空爆の下でコーヒーを飲む、サーフィンをするアメリカ軍の余裕というかイカれた姿を現す有名なシーンは、のちの『アバター』等でもモチーフとして使われています。残虐な行為を指示する上層部は、血とは無縁の世界でボタンを押しているだけなのです。この作品でアカデミー賞作品賞を取れなかったことにコッポラ監督は晩年まで怒っていたそうですが、確かに不思議です。

【小話】同じくベトナム戦争がテーマの『プラトーン』を作ったオリバーストーン監督は実際にベトナム戦争の従軍体験があり、『地獄の黙示録』を観て、そのリアリティのなさに強い違和感をもったそうです。それで自分で脚本を書き制作したのが『プラトーン』だそうです。その主役に『地獄の黙示録』の主役マーティン・シーンの息子であるチャーリー・シーンをあてたのは巨匠コッポラに対する当てつけの意味もあったのでしょうか。こちらはアカデミー賞4冠に輝きました(賞が中身に比例するとは考えていませんが・・・)。

 

 ほかに『ファイトクラブ』(1999年、デビット・フィンチャー監督)も10年ぶりに鑑賞。有名などんでん返しは今となってはよくあるネタですが、若き日のブラピの魅力や、暴力社会への警鐘というテーマが色あせることはありません。

 これだけの名作群を宅シネマで見られるなんて幸せですね。

 

 

 さて、BS放送のメリットをお伝えしましたが、YOU TUBEにも、また違った面でお世話になっています。映画のあらすじをコンパクト(10分程度)に紹介するチャンネルがいくつもあって(著作権的にどうだろう?)、それを見ると、まるで2時間の映画を完見した気分になります。その中で一番引き付けられたのが、こちら『ゲットアウト』(2017年、ジョーダン・ピール監督)です。戦争ものばかり紹介してきたので、ここで一息お願いします。※下はあらすじチャンネルでなく公式予告サイトです。

 

 一息つけたでしょうか? それどころか、息もつかせぬ展開だったのではなかったでしょうか。家政婦の黒人女性が笑顔のまま涙を流しながら「No,no,no,no~!」と口走るシーンはサスペンス映画史に残るものとなるでしょう。女性の笑顔と涙はオチを知ったあとに余計怖さが増します! 8郎もレンタルして全部見てみようと思います。同監督の2作目『アス』も超怖くて面白いのだとか。もしご覧になったという方、おすすめ度を教えてください。

 以上、すべて有名作だけに紹介というのもはばかられますが、おすすめしたい一心でアップしました。

 例えコロナで外出自粛となっても、映画さえあれば、宅8郎的にはなんの支障もありませんね(経済的には直撃しそうですが)。今日はこれまたコロナの影響で野球もお休みなので、これまたナチス戦時下がテーマの家族愛を描いたイタリア映画にしてアカデミー賞3冠『ライフ・イズ・ビューティフル』(1997年、ロベルト・ベニーニ主演・監督)を鑑賞しようと思います。8郎家と同じく夫婦と息子3人家族の物語です。シニカルおっさん、泣いてしまうかも。

 

 映画って本当に素晴らしいもんですね(by水野8郎

 

 そろそそ宅シネマが開演するので、今日はこれにて。


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