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Brothers in Arms

ダイアー・ストレイツ(Dire Straits)は、いぶし銀の良さを持つ、凄いバンドだった。

"dire" が 「恐ろしい、悲惨な」、"strait(s)" が 「瀬戸際、窮乏、困窮」 を意味する他、"dire straits" で 「悲しい」 という意味のイディオムでもあるようだ。
半分自虐ジョークでつけたバンド名だと、Wikipedia には書かれている。
が、実際のダイアー・ストレイツは、全然悲惨でも貧乏でも、悲しくもなかった。

1978年にデビューし、1991年に実質活動停止になるまで、通算6枚のアルバムを発表した。
1985年のアルバム 「Brothers in Arms」 が、バンド最大のヒット作だった。
何といっても、合計35倍のプラチナセールスである(← Wikipedia の記録によると)。
それはもう、全世界中で売れに売れまくった。

1985年 「Brothers in Arms」

アルバムからは、2nd シングル 「Money for Nothing」 が大ヒットした。
CG キャラと、ブロンド美女のセクシー映像をフィーチャーした PV。
スティング(Sting)とのコラボも話題となり、バンド史上最大のシングルヒットを記録した。
「Money for Nothing」 の PV は、当時、本当にもう飽きるほどリプレイされた。

自分も、夜の MTV でたまたまそれを目撃し、ダイアー・ストレイツと出会った。
その頃はまだ、ダイアー・ストレイツの何たるかが全く分からなかったが、大学進学後、アルバム 「Brothers in Arms」 をフルに聴く機会を持った。
そして必然的に、1978年のデビューシングル 「Sultans of Swing(悲しきサルタン)」 に辿り着き、このバンド只者ではないな、と理解できた。



ダイアー・ストレイツの凄さとは、何だったのか。
中心人物であるマーク・ノップラー(Mark Knopfler)の才能と個性、そのたたずまいが発散する達人の凄み、そこに全てが集約されていたような気がする。

その旨みのエキスは、1985年7月のライブエイドで見せた 「Sultans of Swing」 のパフォーマンス映像で、存分に味わうことができる。
イントロが聞こえた瞬間の大歓声。
独特のフィンガー・ピッキングで演奏しながら、場内を、バンドメイトを見やる表情。
11分に及ぶ演奏を終え、ステージを去るときにタオルで顔の汗を拭う仕草。
一つ一つのシーンが味わい深い。
まさに 「いぶし銀」 である。



自分は大学進学後、アルバム 「Brothers in Arms」 の CD を買って聞いた。
「Brothers in Arms」 というタイトルは、腕("Arms")の中のブラザー、つまり、兄弟愛とかそういう意味を表しているのだろうと、ずっとそう思っていた。

が、後日、"Arms" は 「軍隊」 という意味であると知った。
すると、ラストのタイトル曲 「Brothers in Arms」 の歌詞の中にたった一度出てくる↓のフレーズが、心に迫ってくるようになった。

you did not desert me
my brothers in arms


君は僕を見捨てなかった
わが戦友よ

「Brothers in Arms」 は、「Money for Nothing」 に続く 3rd シングルに選ばれた。
囁くように歌うボーカルで、じっくり聞かせる曲だ。
「Money for Nothing」 が大ヒットした直後なこともあって、それほどヒットしなかった。
しかし、このスローなバラードが、バンドを世界的ビッグネームに押し上げたアルバムのタイトル曲であることが、ダイアー・ストレイツの何たるかを示しているように思う。

1988年にマーク・ノップラーは、音楽性よりポピュラリティばかりが重視される風潮に疑問と疲れを感じ、「I need a rest」 の言葉を残してダイアー・ストレイツを解散した。
その意味で、「Brothers in Arms」 の中には、マーク・ノップラーが伝えたかった重要なメッセージが込められているに違いないと思う。

Dire Straits - Brothers In Arms
https://www.youtube.com/watch?v=jhdFe3evXpk
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