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Cloudbusting

UK 出身の女性アーティスト、ケイト・ブッシュ(Kate Bush)。
「実験的音楽と奇異なパフォーマンスで知られる」 と Wikipedia で紹介されているように、万人受けするポピュラーな存在とは言えないかもしれない。
が、マニアック層からの支持は今も厚い。

1978年 「Wuthering Heights」

1978年にシングル 「Wuthering Heights(嵐が丘)」 でデビュー。
「さんまの恋のから騒ぎ」 のオープニング・テーマとして、日本人にも馴染み深い1曲だ。
「嵐が丘」 でデビューしたとき、ケイト・ブッシュは弱冠19歳。
楽曲自体もさることながら、PV で魅せたパフォーマンスが衝撃的だった。

Kate Bush - Wuthering Heights - Official Music Video - Version 1
https://www.youtube.com/watch?v=-1pMMIe4hb4

「天才少女あらわる!」
「あの子は誰?」


・・・・ 等々と、事務所に問い合わせの電話がバンバン殺到し、それはそれは一大センセーションが巻き起こったらしい。
ちなみに↑の PV は 「嵐が丘」 の UK リリース・バージョンの PV だ。
「嵐が丘」 にはもう1つ、US リリース・バージョンの PV も存在する(↓)。

Kate Bush - Wuthering Heights - Official Music Video - Version 2
https://www.youtube.com/watch?v=Fk-4lXLM34g

いずれの PV を見ても、デビュー時点で既にアーティスティックを極めていることが分かる。
同時に、奇才(鬼才)であるがゆえの一種の狂気が見え隠れしている。
デビューアルバム 「The Kick Inside」 には 「天使と小悪魔」 という邦題がつけられた。
↑の PV(特に Version 1)を見るにつけ、実にぴったりなネーミングである。

人間の精神世界を、どこまでも深く正直に見つめる。
ケイト・ブッシュは、そんな独自の創作活動を突き詰めていった。
その結果、内的クライシスに陥り(?)、療養生活を送った時期もあったそうである(=という内容のことがアルバムに付属の解説に書いてあった)。

ケイト・ブッシュのアルバムリリースは、決して多い方ではない。
しかし、人間の魂を表現することに挑戦し続けた、孤高の活動の軌跡が詰まった濃密な作品ばかりであり、鑑賞する側にも相応の感性が要求される。



そんなケイト・ブッシュのディスコグラフィーにおいて、最大のセールスを記録したアルバムが、1985年の 「Hounds of Love(愛のかたち)」 だ。
1st シングル 「Running Up That Hill(神秘の丘)」 の大ヒットが、成功の決め手となった。

1985年 「Running Up That Hill」

自分は高3の冬に、「Hounds of Love」 のカセットを買い、ケイト・ブッシュに入門した。
きっかけは、2nd シングル 「Cloudbusting」 の PV を MTV で見かけたことだった。
(当時はまだ)可憐だったケイト・ブッシュの面影が気に入った。

1985年 「Cloudbusting」

ドラマチック仕立てな PV のストーリーも胸に残った。
闇の組織の妨害と闘いながら、人工降雨装置の発明に挑む博士の物語。
助手(=ケイト・ブッシュ)の天真爛漫に支えられて、研究に励む日々。

しかし、装置が完成目前となったある日。
闇の組織の使いがやってきて、博士は拉致連行されてしまう。
なす術もなく呆然と立ち尽くす助手。
が、意を決して、丘の上にある装置に駆け登り、博士の見様見真似でレバーを操作した。
すると、上空がみるみる雲で覆われ、大粒の雨が降ってきた!
やった! ついに完成した!

"cloudbusting" の直訳は 「雲を破壊する、退散させる」 だが、それが転じて 「暗雲(心の不安)を晴らす」 という意味になる。
雲を吸い寄せて雨を降らせる人工降雨装置、つまり本来の "cloudbusting" とは真逆なのだけれど、それがついに完成し、心はどこまでも感激で晴れ渡る。
分厚い雲に覆われた丘の頂上で、何度も何度もガッツポーズを見せるケイト・ブッシュ。

高3の冬に 「Cloudbusting」 の PV を見てから、32年。
自分もようやく、この PV のラストシーンの妙味が味わえるようになりました。



Kate Bush - Cloudbusting - Official Music Video
https://www.youtube.com/watch?v=pllRW9wETzw
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