視力と聴力が出会う、不思議な場所がある。
そこはとてもやわらかい場所で、ちょっとでも四角い物音を立てれば簡単に崩れてしまうような、
あやうい丸みを帯びた色しかわからないような場所で、
いわば輪郭の無い世界なのだけど
その泉にある水は、決して汚れない。
あるいは簡単に、とても簡単に汚れてしまう。
だから僕は、その水を、決して耳から出さないように
呑み続けるように護らないといけないのだと思う。
かつて、無我夢中で中空を捕まえようとした手が触れたものに近くて
そして苦みと痛みがとてもよく似ている場所でもある。
そういう領域のことを、決して人は忘れてはいけないのだと思う。
いくつかの、手がかりがある。
僕は視力を失っていないのに、まるで現実が見えていないことや、
眠っている間も手が動き続けていることや、
舌の動きと、指の動きが連動していると感じることがあるような錯覚や、
そうした類の出来事は、
僕にとって、とても大切ななにかで、
そういう何かは、普通名前をつけて呼ぶことはない。
いわばそれは粘土から引きはがした魔力に近くて
忘れてしまったカオスの土でできてて、
そういう土を奪い続けることを人は「知る」と言うけれど、
そんなもので、
たったそれだけの暴力的な行為で、
いったいひとは何をしることができるというのだろう。
だから僕は知らない事をおそれ続ける。
明日を怖がり続ける。
それが例え、自分の決められた通りに動く、
時計の物語のような正確なきざみとりずむを持って啼いたとしても
僕の孤独に触れることもなく、
そして出会うことも無い別世界のアンダーランドなのだから。
だけどまた、僕は運命に刃向かうことで運命を作り出す。
運び続ける命を絶つことで、
その橋を落とすことで、
奈落の底に落ちている絶望を拾う。
それが僕の救済に繋がっているとは自信を持って言えない。
だけどまた、それが必要な行為であると言わざるをえない。
まるで僕は、
閉められた宇宙船の、
閉じられたロケットの、
縮こまった密室の、
そのトーカルエリアを爆破するテロリストに似ていると思うことさえあるというのに。
だけどぼくに
だけどそんなぼくに
いったいなにが、どれほどの、なにができよう。
いったい僕が、この世界で、何を壊すことが出来るというのだろぅ
この世界で刻まれたどんな出来事も、
この世界で確認されたどんな出来事も、
やがてこの世界自身によって、
全ては世界自身から追い出される。
そうすることで、
世界は世界を忘れながら生きている器だと呼べる。
そしてそう呼ぶことが、
変化する自分をたゆたんでゆけるひとつの証明に似ている。
僕は遷ろう魂の溶け出し続けるその箱の中で
シュレディンガーの猫に似たふるえを持つ。
その寒さにゾッとしながら、
血で血を洗う行為にとてもよく似ている。
このわずかばかりの声が、
わずかばかりな小さな叫びが、
決して響かない、
届かない手紙に似ているように。
とてもよく、似ている。
この寒さを僕は、
現実の寒さと、間違えるようなアホさがよくある。
だから僕は
そしてぼくらは、
いつだってなにかに対して、
いつでもだれかに対して、
ずっとずっと寒さにふるえる。
そのことを、白い糸にのせて、
そっと君につたえる。
ちいさな鈴の音が
やがてくる、明日へのおそれと、
喜びを打ち興るわすようにと。
そこはとてもやわらかい場所で、ちょっとでも四角い物音を立てれば簡単に崩れてしまうような、
あやうい丸みを帯びた色しかわからないような場所で、
いわば輪郭の無い世界なのだけど
その泉にある水は、決して汚れない。
あるいは簡単に、とても簡単に汚れてしまう。
だから僕は、その水を、決して耳から出さないように
呑み続けるように護らないといけないのだと思う。
かつて、無我夢中で中空を捕まえようとした手が触れたものに近くて
そして苦みと痛みがとてもよく似ている場所でもある。
そういう領域のことを、決して人は忘れてはいけないのだと思う。
いくつかの、手がかりがある。
僕は視力を失っていないのに、まるで現実が見えていないことや、
眠っている間も手が動き続けていることや、
舌の動きと、指の動きが連動していると感じることがあるような錯覚や、
そうした類の出来事は、
僕にとって、とても大切ななにかで、
そういう何かは、普通名前をつけて呼ぶことはない。
いわばそれは粘土から引きはがした魔力に近くて
忘れてしまったカオスの土でできてて、
そういう土を奪い続けることを人は「知る」と言うけれど、
そんなもので、
たったそれだけの暴力的な行為で、
いったいひとは何をしることができるというのだろう。
だから僕は知らない事をおそれ続ける。
明日を怖がり続ける。
それが例え、自分の決められた通りに動く、
時計の物語のような正確なきざみとりずむを持って啼いたとしても
僕の孤独に触れることもなく、
そして出会うことも無い別世界のアンダーランドなのだから。
だけどまた、僕は運命に刃向かうことで運命を作り出す。
運び続ける命を絶つことで、
その橋を落とすことで、
奈落の底に落ちている絶望を拾う。
それが僕の救済に繋がっているとは自信を持って言えない。
だけどまた、それが必要な行為であると言わざるをえない。
まるで僕は、
閉められた宇宙船の、
閉じられたロケットの、
縮こまった密室の、
そのトーカルエリアを爆破するテロリストに似ていると思うことさえあるというのに。
だけどぼくに
だけどそんなぼくに
いったいなにが、どれほどの、なにができよう。
いったい僕が、この世界で、何を壊すことが出来るというのだろぅ
この世界で刻まれたどんな出来事も、
この世界で確認されたどんな出来事も、
やがてこの世界自身によって、
全ては世界自身から追い出される。
そうすることで、
世界は世界を忘れながら生きている器だと呼べる。
そしてそう呼ぶことが、
変化する自分をたゆたんでゆけるひとつの証明に似ている。
僕は遷ろう魂の溶け出し続けるその箱の中で
シュレディンガーの猫に似たふるえを持つ。
その寒さにゾッとしながら、
血で血を洗う行為にとてもよく似ている。
このわずかばかりの声が、
わずかばかりな小さな叫びが、
決して響かない、
届かない手紙に似ているように。
とてもよく、似ている。
この寒さを僕は、
現実の寒さと、間違えるようなアホさがよくある。
だから僕は
そしてぼくらは、
いつだってなにかに対して、
いつでもだれかに対して、
ずっとずっと寒さにふるえる。
そのことを、白い糸にのせて、
そっと君につたえる。
ちいさな鈴の音が
やがてくる、明日へのおそれと、
喜びを打ち興るわすようにと。