「慰安婦問題」に日本政府の反論文があった 「クマラスワミ女史」を論破
新潮45 2017年5月号
5月9日、韓国で新大統領が誕生するが、誰が大統領になっても2015年の「慰安婦問題日韓合意」が見直されるのが必至の状況だ。
ところで、慰安婦問題と言うと、思い出されるのが1996年に国連人権委員会に提出された「クマラスワミ報告書」。
同報告書は、従軍慰安婦を「性奴隷」として取り上げ、今日まで続くこの問題の火種のひとつとなったシロモノである。
国連の場にまで慰安婦問題が取り上げられることになった報告書に、日本政府としても手をこまねいていたわけではなかった。
実は公開されなかったものの、外務省が作った幻の反論文があったのである。
この反論文を早稲田大学教授の有馬哲夫氏がアメリカのCIA文書の中で発見。
『新潮45』5月号の「1996年、日本の『慰安婦問題』反論文はなぜ封印されたか」で紹介している。
2号にわたって掲載されるうち、まず今月号で紙幅が割かれるのは反論文の内容だ。
***
「クマラスワミ報告書」は、94年に国連人権委員会から「女性の暴力に関する特別報告官」に任命されたラディカ・クマラスワミが提出した文書である。
詳しい内容をここで取り上げることはしないが、クマラスワミ女史はこの報告書で、慰安婦問題にまつわる日本政府の法的責任の受け入れと被害者への報償などを勧告している。
さて、これに対する「反論文」は、3年前に産経新聞が報道し、存在こそ知られていたものの、政府が公開を拒んでいたことから“幻の反論文”となっていた。
公開された「反論文」は産経報道と同一のものであるようだ。
全5章から成り立つ反論文は、英語で39ページにも及ぶ。
強制連行を偽証した吉田清治の著作の引用が「報告書」にあることなどを指摘し、クマラスワミ女史の中立性や調査の問題点にも切り込んでいる。
日本では「クマラスワミ報告書」といえば、「慰安婦問題」だが、これは「付属文書Ⅰ」の内容なのである。
報告書の本体は、現在の女性への暴力をめぐる雑多な問題を取り上げている。
それもさまざまな国に触れ、特定の国だけを非難することはしない。しかし、なぜか付属文書Ⅰは70年前の、それも日本だけを狙い撃ちにしている。
「反論文」はクマラスワミの中立性を疑いながら、その調査にも疑いの目を向けてこう指摘する。
〈さらに「証言」と題されたⅣで焦点があてられているもののいくつかは、報告者自身が聞き取りをしたものではなく人権委員会のスタッフが代わりに集めたものだ。
にもかかわらず報告者はそれらを自分自身が聞いたものと適切に区別することなく使っている。
全体として、公平に見て、付属文書で示されている『事実』は、極めて限られた情報源から集められたもので裏付けもとれていないものだというべきである〉
※〈〉は本文より引用、以下同
〈その一方で、アメリカ軍が『元慰安婦』にした聞き取り報告書のような、彼女の結論に不都合な客観的資料は無視している〉
〈したがって日本政府は裏付けのない情報に基づき報告書を出す理由を理解できない〉
公平さを欠くどころか、彼女は法律論も基本的な国際法の原則さえも知らないと指摘。
次々とクマラスワミを論破していくが、注目するべきは報告書が発端となった「性奴隷」という呼び名についての日本政府の反駁だろう。
「反論文」の該当箇所には、以下の記述がある。
〈『奴隷制』の定義は、その当時の国際法のもとで一般的に受け入れられてきた。
(中略)1926年の奴隷条約の締結以来、国際法で使われる『奴隷制』という用語は、所有者の有する権利に付随する一部、あるいはあらゆる権力が行使される人の地位または状態と定義されてきた。
しかしながら、『慰安婦』に関しては1993年に発行し、第45回国連人権小委員会に提出した日本政府の事実調査の結果では、このような『地位または状態』があったとは証明されなかった〉
一部では「奴隷制」状態にあったといえるだろう、と有馬氏はこの反論の瑕疵を認めるものの、〈クマラスワミは、「慰安所」などに入れられ、軍に管理されているのだから「奴隷」だと、今日的な基準でいっているにすぎない〉とし、こう続ける。
〈そもそも当時は、アジア、アフリカはいうにおよばずヨーロッパなどにも売春施設が沢山あった(略)軍が関わると「奴隷制」で、民間業者だとそうではないという理屈は成り立つのだろうか。
それに、戦地や占領地なのだから、軍が設置した「慰安所」で女性たちに営業させ、軍がその施設の運営規則を定めたり、性病チェックに関わったりするのは当然だろう。
ドイツ軍も同じことをしている。アメリカなど連合国の軍隊でさえ、民間の買春施設を使用したとき同じようなことをした。
戦地でも占領地でもないところで、軍が乗り出してきていろいろコントロールしたというならば別だが、「廃業の自由」(※1900年制定の「娼妓取締規則」)があった以上、この当時の基準では「奴隷制」とはいえないのではないか。
実際、慰安婦が里帰りしたり、観光旅行をしたりした例も見られる〉
有馬氏は反論文を〈ほとんどすべての論点においてクマラスワミを完全に論破している〉と評する。
こんな反論文が出されていたら、特別報告官であるクマラスワミも立つ瀬がなかったに違いない。
では、それほど優れた文書が葬り去られた理由はなぜなのか。そこにはアメリカの存在があったのだ。
詳しくは、本誌5月号掲載の記事、つづく来月号で確認して頂きたい。是非、反日大統領にも一読してもらいたい論文である。
デイリー新潮編集部
新潮45 2017年5月号
5月9日、韓国で新大統領が誕生するが、誰が大統領になっても2015年の「慰安婦問題日韓合意」が見直されるのが必至の状況だ。
ところで、慰安婦問題と言うと、思い出されるのが1996年に国連人権委員会に提出された「クマラスワミ報告書」。
同報告書は、従軍慰安婦を「性奴隷」として取り上げ、今日まで続くこの問題の火種のひとつとなったシロモノである。
国連の場にまで慰安婦問題が取り上げられることになった報告書に、日本政府としても手をこまねいていたわけではなかった。
実は公開されなかったものの、外務省が作った幻の反論文があったのである。
この反論文を早稲田大学教授の有馬哲夫氏がアメリカのCIA文書の中で発見。
『新潮45』5月号の「1996年、日本の『慰安婦問題』反論文はなぜ封印されたか」で紹介している。
2号にわたって掲載されるうち、まず今月号で紙幅が割かれるのは反論文の内容だ。
***
「クマラスワミ報告書」は、94年に国連人権委員会から「女性の暴力に関する特別報告官」に任命されたラディカ・クマラスワミが提出した文書である。
詳しい内容をここで取り上げることはしないが、クマラスワミ女史はこの報告書で、慰安婦問題にまつわる日本政府の法的責任の受け入れと被害者への報償などを勧告している。
さて、これに対する「反論文」は、3年前に産経新聞が報道し、存在こそ知られていたものの、政府が公開を拒んでいたことから“幻の反論文”となっていた。
公開された「反論文」は産経報道と同一のものであるようだ。
全5章から成り立つ反論文は、英語で39ページにも及ぶ。
強制連行を偽証した吉田清治の著作の引用が「報告書」にあることなどを指摘し、クマラスワミ女史の中立性や調査の問題点にも切り込んでいる。
日本では「クマラスワミ報告書」といえば、「慰安婦問題」だが、これは「付属文書Ⅰ」の内容なのである。
報告書の本体は、現在の女性への暴力をめぐる雑多な問題を取り上げている。
それもさまざまな国に触れ、特定の国だけを非難することはしない。しかし、なぜか付属文書Ⅰは70年前の、それも日本だけを狙い撃ちにしている。
「反論文」はクマラスワミの中立性を疑いながら、その調査にも疑いの目を向けてこう指摘する。
〈さらに「証言」と題されたⅣで焦点があてられているもののいくつかは、報告者自身が聞き取りをしたものではなく人権委員会のスタッフが代わりに集めたものだ。
にもかかわらず報告者はそれらを自分自身が聞いたものと適切に区別することなく使っている。
全体として、公平に見て、付属文書で示されている『事実』は、極めて限られた情報源から集められたもので裏付けもとれていないものだというべきである〉
※〈〉は本文より引用、以下同
〈その一方で、アメリカ軍が『元慰安婦』にした聞き取り報告書のような、彼女の結論に不都合な客観的資料は無視している〉
〈したがって日本政府は裏付けのない情報に基づき報告書を出す理由を理解できない〉
公平さを欠くどころか、彼女は法律論も基本的な国際法の原則さえも知らないと指摘。
次々とクマラスワミを論破していくが、注目するべきは報告書が発端となった「性奴隷」という呼び名についての日本政府の反駁だろう。
「反論文」の該当箇所には、以下の記述がある。
〈『奴隷制』の定義は、その当時の国際法のもとで一般的に受け入れられてきた。
(中略)1926年の奴隷条約の締結以来、国際法で使われる『奴隷制』という用語は、所有者の有する権利に付随する一部、あるいはあらゆる権力が行使される人の地位または状態と定義されてきた。
しかしながら、『慰安婦』に関しては1993年に発行し、第45回国連人権小委員会に提出した日本政府の事実調査の結果では、このような『地位または状態』があったとは証明されなかった〉
一部では「奴隷制」状態にあったといえるだろう、と有馬氏はこの反論の瑕疵を認めるものの、〈クマラスワミは、「慰安所」などに入れられ、軍に管理されているのだから「奴隷」だと、今日的な基準でいっているにすぎない〉とし、こう続ける。
〈そもそも当時は、アジア、アフリカはいうにおよばずヨーロッパなどにも売春施設が沢山あった(略)軍が関わると「奴隷制」で、民間業者だとそうではないという理屈は成り立つのだろうか。
それに、戦地や占領地なのだから、軍が設置した「慰安所」で女性たちに営業させ、軍がその施設の運営規則を定めたり、性病チェックに関わったりするのは当然だろう。
ドイツ軍も同じことをしている。アメリカなど連合国の軍隊でさえ、民間の買春施設を使用したとき同じようなことをした。
戦地でも占領地でもないところで、軍が乗り出してきていろいろコントロールしたというならば別だが、「廃業の自由」(※1900年制定の「娼妓取締規則」)があった以上、この当時の基準では「奴隷制」とはいえないのではないか。
実際、慰安婦が里帰りしたり、観光旅行をしたりした例も見られる〉
有馬氏は反論文を〈ほとんどすべての論点においてクマラスワミを完全に論破している〉と評する。
こんな反論文が出されていたら、特別報告官であるクマラスワミも立つ瀬がなかったに違いない。
では、それほど優れた文書が葬り去られた理由はなぜなのか。そこにはアメリカの存在があったのだ。
詳しくは、本誌5月号掲載の記事、つづく来月号で確認して頂きたい。是非、反日大統領にも一読してもらいたい論文である。
デイリー新潮編集部