日本と世界

世界の中の日本

文在寅圧勝、しかしもって3年

2017-05-20 19:36:49 | 日記
投稿日:2017/5/11

文在寅圧勝、しかしもって3年

朴斗鎮(コリア国際研究所所長)

5月9日に実施された韓国大統領選の得票率は、左派系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補が、13,423,762票の41.08%を獲得し新大統領に当選した。

2位は保守系の自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)候補が、7,852,843票の24.03%を獲得、3位は左派中道の国民の党の安哲秀(アン・チョルス)候補が6,998,323票の21.41%を獲得した。

文候補と安候補は直前のギャラップ調査の誤差範囲内であったが、洪候補は大きく外れた。

洪候補は世論調査よりも8ポイントも高い結果となり、やはりというか保守系標本の抽出に問題があったことが示された。

3,280万人が投票に参加し暫定投票率は前回2012年の時より1.4%増の77.2%となり20年ぶりの高さとなった。



1、選挙結果分析 若者の安保意識低下と経済格差問題

文在寅候補が洪準杓候補に大きく差をつけた地域は、首都圏と全羅道であった。

これに対して洪候補は、慶尚道を席巻したものの、江原道の半分と京畿道北部それに忠清道の一部を獲得したにとどまった。

そうとはいえ、壊滅的だった保守の牙城である慶尚道を取り戻した意味は大きい。

自由韓国党立て直しで大きな担保が確保されたと言えるからだ。惜しむらくは安哲秀候補に流れた10%近い保守票を取り戻せなかったことだ。

選挙の期間があまりにも短かったことが影響したと思われる。

自由韓国党から分裂した「正しい党」ユ・スミン候補の獲得票6.76%と安哲秀候補に流れた10%近い保守票を加えると40%となることをみても、保守勢力の分裂が保守敗北をもたらしたことを明示している。

世代別に見ると、20、30、40代では文在寅候補支持が圧倒的に多く、50代でも保守を越えた。

60代以上では洪準杓候補支持が多かった。安哲秀候補はいずれの世代でもトップを取れなかった。

対立構造も解消されなかった。

地域別に見ると、ソウル以外では依然として全羅道対慶尚道の対立構造が目立った。

特に深刻な対立構造は世代間対立である。若者と高齢者の意識断絶は一層深まっている。その主な要因は若者の安保意識低下と経済格差問題にあるとみられる。

2、文新大統領の前に立ちはだかる難題 

文在寅氏が新大統領に就任したが、提起される課題は決して少なくない。先行きも安定的でない。

その最大の要因は得票が50%を超えなかったことにある。60%もの有権者が文候補を支持しなかった意味は決して軽視できない。

また洪準杓候補の活躍で保守の分裂に歯止めがかかったことも文候補の前途を暗くしている。

洪候補が保守分裂の苦境の中で24%もの票を獲得したことは保守の新リーダー誕生を意味する。文候補側が保守を壊滅させると叫んでいたがそれは難しくなった。



■少数与党の壁

特に問題なのは国会の議席が過半数に満たず少数与党だということだ。

左派中道系の国民の党と極左の正義党の協力を得ても、「与野党間で意見の食い違いがある法案を本会議に上程する場合、在籍議員5分の3以上が賛成しなければならない」と規定した「先進化法」をクリアするのは容易ではない。

約10年ぶりに政権与党に復帰した「共に民主党」は第1党であるものの、議席数(計300)は119に過ぎない。

一方、朴政権で与党だった保守系「自由韓国党(旧セヌリ党)」は現在94議席だが、セヌリ党を離党した議員らが結成した「正しい政党」の国会議員の一部が同党を離党し、自由韓国党に復党するとしており、手続きが終われば106議席になる。

40議席の左派中道系「国民の党」は与野党間でキャスティングボートを握り、大規模な離党を阻止して院内交渉団体(20議席以上)の資格を維持した「正しい政党」も無視できない勢力だ。

そのため新政権と「共に民主党」だけでは主な法案の国会通過さえままならないというのが現実だ。政界では新政権が韓国の憲政史上最弱になる可能性があるとの見方も出ている。

■険しい人事の壁−国会聴聞会

首相や閣僚の人事も険しい道となることが予想される。

大統領職の引き継ぎ委員会が設置されなかったため、新政権の初代首相や閣僚候補に対する検証が不十分になる可能性も排除できない。国会の人事聴聞会で野党側が反発すれば、閣僚の任命も難しくなる。

■簡単ではない政府の組織改編

政府の組織改編も難しくなる見通しだ。これまでの政権は発足するたびに組織改編で与野党間の攻防があった。文氏は大統領選期間中に


▼中小ベンチャー企業部の新設

▼外交部を外交通商部に改編

▼海洋警察庁・消防防災庁の独立

▼公職者の不正を捜査する組織の設置

▼未来創造科学部の改編

▼教育部の機能縮小

−−などを公約として掲げた。

しかし既得権勢力がやすやすと利権を渡すとは考えにくい。

首相や閣僚の人事、政府の組織改編、改憲議論などで与野党が対立した場合、新政権が数カ月にわたり機能しない事態も起こり得る。

■改憲問題

さらに改憲議論も今後の政局を左右する変数となる。

大統領選で改憲が争点になると、主要候補は2018年の統一地方選で改憲の賛否を問うとの立場を明らかにした。

政界では野党側が改憲を材料に与党への圧力を強める可能性が高いとの見方が出ている。

■所得格差の解消と失業率の改善

人口約5050万人の韓国。失業者は116万7千人。うち約47%の54万3千人が大学卒業以上で初めて50万人を突破(韓国統計庁)。

家計負債額も増え続け1300兆ウォン(約130兆円)。一方で貧富の格差は開くばかりだ。

朴前大統領を弾劾に追いやった根底には、所得の格差や若者の失業率の高さがあった。

若年層を支持基盤とする文大統領がこの点を解決できなければ、政権はすぐにほころびを見せるだろう。


文大統領は公務員枠の拡大をはじめ公共部門での雇用を80万人増やし、中小企ベンチャー企業創出をはじめとした部門での雇用拡大で110万人規模の雇用創出を主張しているが容易なことではない。

もしもこの政策が失敗すれば我慢することに慣れていない若者層が再びデモに出てくる可能性は十分にある。

■待ったなしの外交安保

特に心配されるのは外交安保分野である。親北朝鮮姿勢を明確にする対北朝鮮政策では保守と対立しているだけではなく、THAAD(サード)問題などで米国とも対立している。
また日本とは慰安婦合意問題での対立は明確だ。米、日だけではなく中国とも複雑な状況だ。

そればかりではない。北朝鮮核問題を自身が主導すると息巻いている文大統領であるが、そもそも北朝鮮は一貫して核問題は韓国と協議する問題ではないと主張している。

願望を持つのは良いが、現実離れすると今度は朴前大統領とは違った意味で孤立することになる。

■分裂した社会の統合

今回の大統領選挙には13人もの候補が乱立した。これは韓国社会の分裂状況を如実に表したものだ。そのため新政権にとって「協力政治と連合政府」は選択ではなく必須になる見通しだ。

文氏もこのような現実を認識し、統合の意思を明らかにした。

文氏は9日、投票を済ませた後に記者団に対し、「選挙が終わればこれからわれわれは一つ」とし、「競争したほかの候補、ほかの政党を私から迎え、協力する政治をする。

国民も選挙が終われば一つになり、国民統合を必ず成し遂げて下さるよう願う」と強調した。

統合政府は党派や地域、世代を超え、公平を原則に韓国最高の人材を発掘し、最高の政策を作る政府を目指すことだという。

ただ、野党側が大統合にどの程度応じるかについては不透明だ。

「保守を壊滅させる」と叫び分裂を煽った文氏がにわかに「統合」を叫んでも保守層がそう簡単に許すはずはない。

「協力政治と連合政府」という政治体制を構築するというが、文氏の力量では多分無理であろう。

■尾を引くスキャンダル

文新大統領には、疑惑が解明されていないスキャンダルも多い。

まず挙げられるのが、2003年の釜山(ブサン)貯蓄銀行問題だ。

釜山貯蓄銀行の大株主や当時の大統領府の関係者と会った席で、金融監督員担当局長に、釜山貯蓄銀行への検査に手加減してほしいという趣旨の電話をかけたというものだ。

また対北朝鮮問題では有名な「国連北朝鮮人権決議棄権問題」がある。

2007年、当時の盧武鉉大統領と金正日総書記による第2回南北首脳会談(07年10月2~4日)から約40日後の11月18日、

盧大統領が主宰した会議で、北朝鮮人権決議案への賛成を求める宋旻淳(ソン・ミンスン)元外交通商部長官と棄権を支持する出席者らの間で論争が激化し、

金万福(キム・マンボク)国家情報院長が北朝鮮に直接意見を求めることを提案、文在寅氏がこの提案を受け入れ、

南北ルートを使って北朝鮮の立場を確認するとの結論を出したとした疑惑である。

この問題は大統領選の過程で訴訟にまで発展したが、今後の火種として残っている。

もう一つ大きな問題は息子の「韓国雇用情報院不正コネ就職問題」である。

文大統領の息子は2006年に準政府機関である韓国雇用情報院に採用され就職したのだが、この採用に不正があったのではないかという疑惑である。

2006年といえば文大統領が盧武鉉政権の青瓦台民政主席秘書官という国家権力の中枢にいた時期である。

この息子は大統領選挙期間中姿をくらましたので自由韓国党が行方を追及している。

その他大小のスキャンダルがあるが、以上の主要なスキャンダルと山積する難題を重ね合わせると、文政権は3年を経ずしてほころびが出るとの見方が有力だ。

すでに朴サモ(朴前大統領を支持する勢力)を中心としたセヌリ党(代表チョウ・ウォンジン)は、朴前大統領弾劾罷免事態が法治主義に反し、文大統領のスキャンダルが弾劾に値する内容だとして「弾劾」準備に入っている。

韓国大統領に文在寅氏 政経癒着の克服が課題 

2017-05-20 17:16:42 | 日記

韓国大統領に文在寅氏


毎日新聞2017年5月11日 東京朝刊

オピニオン


解説


紙面掲載記事

.
 韓国の朴槿恵(パククネ)前大統領の弾劾・罷免を受けて9日に実施された大統領選。新大統領に選ばれたのは革新系最大野党「共に民主党」の文在寅(ムンジェイン)氏(64)だった。

保守から革新への約9年ぶりの政権交代で、傷ついた韓国政治は安定に向かうのか。日韓関係はどうなるか。緊迫する朝鮮半島情勢への大統領選の影響は。


政経癒着の克服が課題 

陳昌洙・世宗研究所所長


陳昌洙氏

 国政介入事件に関与したとして逮捕、起訴された朴槿恵前大統領の親友、崔順実(チェスンシル)被告ら既得権層を社会的に認めないという判断を国民が下した形となった。

与党だった保守系の自由韓国党は、朴前大統領の個人的な資質の問題として事件を片付けようとした。

だが、国民は既得権について、強い大統領権限の下、政経癒着によって形成される構造的な問題だと捉えた。

大統領の弾劾を求めるろうそく集会に参加した市民の圧倒的な支持を受けて当選した文在寅氏は、腐敗した社会構造の刷新や財閥企業への規制に乗り出すだろう。

 国民の怒りの背景には

「1987年の民主化以降、権威主義的な大統領による力の支配ではなく、努力すれば報われる学歴社会になったはずだ」という国民意識の変化がある。

公務員でも専門家でもない崔被告が国の政策を左右し、娘が有名大学に裏口入学したスキャンダルは学歴社会の信用を傷つけ、社会秩序を破壊した事件だった。


民主化後に生まれ、頑張って受験勉強した若者が最も敏感に反応したのはそのためだ。

ろうそく集会が国会、憲法裁判所まで動かし、無血の政権交代が実現したことには歴史的意義がある。

しかし、今回のようなプロセスが繰り返されることは国家の安定にとって望ましくはない。

文氏は国会や司法による制度的秩序の信頼回復に取り組む必要がある。

今回の経験で、国民にとって大統領を弾劾するハードルは下がった。文氏が国民統合を成し遂げ、融和を実現できるかがカギだ。

文氏の政権基盤は決して強くない。

朴前大統領は前回大統領選で51%以上の得票で当選した。

文氏の得票率は41・08%にすぎず、分裂した社会を統合する力は十分ではない。

国会で過半数に満たない少数与党「共に民主党」は連立を組まなければ安定せず、難しい政権運営を迫られる。

さらに政権基盤を脅かすのは、選挙戦での公約だ。

文氏は大統領制を現行の「任期5年で1期限り」から「任期4年で再任可能」にする憲法改正を主張したが、

自らの任期を延長することはできないため、公約を実現した途端にレームダック(死に体)化する。

大統領権限の縮小や分権化を推進するなら、民間の活力を利用する必要があるが、財閥規制に着手すれば経済が冷え込む可能性があり、ジレンマを抱えている。

外交政策は、側近として支えた盧武鉉政権時代の対北朝鮮融和策に回帰し、中国との関係を改善する一方、米国とは距離を保とうとするだろう。

対日関係の改善は優先課題ではないが、「日韓関係の断絶は対米関係を悪化させる」というのが朴政権で学んだ教訓だ。

2015年の慰安婦問題に関する日韓合意の再交渉を公約に掲げているが、米韓関係が不透明な中で、日韓歴史摩擦が再燃するのを避けるのではないか。

日韓合意は元慰安婦や支援団体の合意が不十分だったと文氏は問題視している。

慰安婦に会い、支援団体に耳を傾け、日本政府が10億円を拠出した「和解・癒やし財団」をどう処理するのか、韓国内での検討に時間をかけるだろう。【
聞き手・堀山明子】

「反日」のレッテル、正しくない 西野純也・慶応大教授

西野純也氏

文在寅氏について「左派」「反日」とレッテルを貼るのは正しくない。

朴槿恵前大統領の独善的な政治スタイルを否定し、前政権によって損なわれた社会的公正や社会正義を希求する社会的雰囲気の中で発足する新政権にとって、慰安婦問題を巡る日韓合意を前向きに評価するのはそもそも難しい。

多くの韓国民にとって、日韓合意は朴政権による「正義のない合意」だと見なされている。

安倍晋三首相との首脳会談すら拒んできた朴氏が、

元慰安婦の声を十分くみ取ることなく、急転直下で合意を結んだとして、そのプロセスを問題視してきた。

文政権もこうした世論を無視できない。

文政権は日韓合意を、外交よりは韓国の国内問題という文脈で捉え、合意を再検証して対応方針を決める可能性が高い。

文政権が発足してすぐに、日本が公館前にある少女像の撤去を求めても、文氏がいきなりこの問題に手を付けるのは困難だ。

また文政権にとって、まず取り組むべきは南北関係や対米、対中関係であり、対日関係の優先順位は必ずしも高くない。

北朝鮮の核開発問題をはじめ、日本にとって韓国と協力すべき課題は多い。文氏もその点は認めている。

首相には知日派の李洛淵(イナクヨン)全羅南道知事が指名された。日本の政界にも知己が多い李氏の首相就任は、日韓関係にはプラスになるだろう。

日本は安全保障面での協力を維持しながら、まずは文政権との関係構築に努めるべきだ。最初から慰安婦問題で急ぐ必要はない。

両首脳に直結する高いレベルでの対話チャンネルを早期に開き、首脳同士の対話を準備することが望ましい。

首脳間の対話を急いでボタンを掛け違えてはならないが、意思疎通がないままでは朴政権初期の冷え込んだ両国関係を繰り返すことになる。これは避けるべきだ。

当面心配なのは日韓関係より、むしろ米韓関係だ。韓国への配備が始まった迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」の費用負担を巡り、トランプ米大統領が配備費用10億ドルを韓国が支払うべきだと主張したことで、米韓関係は波乱含みのスタートとなる。

韓国内には、トランプ政権が朝鮮半島の危機をあおり、日本がそれに便乗しているように見えることにも反発が強い。

文氏は就任演説で「条件が整えば平壌にも行く」と述べた。

今後、盧武鉉政権で中心的な役割を果たした人々が青瓦台(大統領府)に多く入ることになれば、南北関係の改善を強く主張し、北朝鮮に対する認識は日米両国との間でかなり違いが出ることになる。

日米韓はこれまで「抑止」と「防衛」で協調してきたが、韓国は北朝鮮への「関与」に力点を置くだろう。

他方、北朝鮮への圧力を最大限にかけたトランプ政権がある段階で一転して「関与モード」に入り、日本が米韓に取り残される可能性も否定できない。

文政権は「朝鮮半島の緊張緩和に日本がどのように貢献してくれるのか」という点から日本との関係を考えるはずである。

日本はそれにどう応えるのかが、文政権から問われることになる。【聞き手・尾中香尚里】

危険な対北朝鮮融和政策 神谷万丈・防衛大学校教授

神谷万丈氏

韓国は大丈夫なのだろうか。

文在寅新大統領は北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との対話に前向きだが、融和的な姿勢は、北朝鮮の核・ミサイル開発の黙認につながる。

日米は北朝鮮の核とミサイルに重大な脅威を感じていればこそ、中国も巻き込んでその暴走を抑えようとしている。

韓国がこの現実を無視すれば、これまでの取り組みを根底から覆しかねない。


終末高高度防衛(THAAD)ミサイルについて、文氏は就任演説で「米国、中国と真摯(しんし)に協議する」と述べたが、そもそも米韓両国間の取り決めとして韓国に配備された。

韓国が約束をたがえればトランプ米大統領は「同盟国でない」と突き放す可能性もあり、東アジアの安全保障に重大な影響を及ぼす。

抑止力とは、相手が好ましくない行動を取ることを思いとどまらせる力であり、中心は軍事的な報復力だ。

北朝鮮を抑止するには専守防衛の日本だけでは不十分で、米国の核による「拡大抑止」が必要だ。

北朝鮮の核能力が高まる中、冷戦期に欧州で論議された「万一の際には米国が本当に報復してくれるのか」というテーマが日本に突き付けられている。

日本が攻撃された時、自らも標的になるリスクを冒す覚悟が米国にあるかどうかということだ。

韓国も米国の拡大抑止に依存しているが、韓国が北朝鮮に対して融和的になれば、報復しようという米国の意思の低下を招きかねない。

視点を日本に移せば、

長らく日本の平和主義は「国際平和のために行動する意思」と「平和のために軍事力を『使う』意思」について考えることを避けてきた。

軍事力は人を殺傷するが、同時に平和を築く役割もある。

湾岸戦争(1991年)をきっかけに国際貢献は必要だという認識が定着し、北朝鮮による弾道ミサイル「テポドン」の発射(98年)を機に軍事力への極端な忌避感も薄れてきた。

だが、「平和のためには軍事力が必要だ」との認識はまだ広まっていない。

敵地攻撃能力を持てばいいという安直な話ではない。軍事力をうまく使わなければ平和は保てないということを理解した上での冷静な議論が求められる。

今日、軍事力の役割は戦争に勝つことではなく、抑止することにある。

北朝鮮もそれは理解していると信じたいが、心配なのは偶発的衝突だ。

3月6日に北朝鮮のミサイルが日本の排他的経済水域に落下した時、多数のイカ釣り漁船などが操業中だった。

万一被害が出ていたらどうなったのか。北朝鮮はその危険を認識していただろうか。

日本は日米同盟を基調に北朝鮮の暴走を抑えるしかない。

少し風向きが変わってきたとはいえ、中国には韓国主導の朝鮮半島統一は悪夢で、平壌を抑える役割には限界があるだろう。

そんな中、肝心の韓国には暗たんたる思いがする。

懸案だった慰安婦問題で政府間合意ができ、軍事情報包括保護協定も結ばれ、ようやく日韓関係改善かと期待したのに、合意の一方的破棄を唱える政権が誕生した。

「韓国との関係はどうにもならない」という空気が日本で広がることを心配している。【聞き手・隈元浩彦】


盧政権を中枢で支える

文氏は1982年、後に大統領となる盧武鉉(ノムヒョン)氏の法律事務所の経営に参加。人権派弁護士として活躍した。

盧政権では大統領秘書室長を務めるなど政権を中枢で支えた。

2012年の前回大統領選にも立候補したが、朴槿恵前大統領に敗れた。

朴前大統領の失脚に伴う今回の選挙で当選した文氏は10日の就任演説で「権威的な大統領文化を清算する」と訴えるとともに、北朝鮮問題では「条件が整えば平壌にも行く」と述べ、訪朝の意思も示した。
.

文在寅氏当選:米紙「対北『月光政策』がソウルとワシントン間に亀裂もたらす可能性も」

2017-05-20 16:58:17 | 日記
記事入力 : 2017/05/11 08:34

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

文在寅氏当選:米紙「対北『月光政策』がソウルとワシントン間に亀裂もたらす可能性も」

ショーン・スパイサー米大統領報道官は9日(現地時間)、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の当選に関する声明で、「我々は文在寅大統領の当選を歓迎する。

そして、韓国国民と共に平和で民主的な権力移譲を祝う」と述べた。

また、「我々は米韓同盟を引き続き強化し、両国間の永遠の友情とパートナーシップを深めるため協力していくことを期待する」とも言った。

さらに、同日の定例記者会見でも、「トランプ大統領は文在寅大統領と会い、共通の関心事について話し合うことを楽しみにしている」と述べた。

米議会からも当選を祝うコメントが相次いだ。

共和党のナンバーワン、ポール・ライアン下院議長は同日、

「我々は米韓同盟強化のため協力するものと期待する」

「米韓両国の戦略的パートナーシップは、韓半島(朝鮮半島)とアジア・太平洋地域の安定に非常に重要だ」

「核・ミサイル計画を含め、現在進行中の北朝鮮の挑発行為に対応するため、引き続き協力していくべきだ」と述べた。

ジョン・マケイン上院軍事委員会委員長長(共和党)も、同委員会の民主党幹事ジャック・リード議員と発表した共同声明で、

「韓国はこの数カ月間、苦しい時期を経験したが、新大統領の就任を機に新たな力をもって再浮上してほしい」と述べた。

エド・ロイス下院外交委員会委員長(共和党)も「韓国はアジア・太平洋地域において米国の最も良いパートナーであり友人だ。

韓半島と域内の安定を維持するため、文在寅大統領と協力していくことに期待する」と言った。

親韓派議員の集まり「コリア・コーカス」共同議長団も同日の声明で「我々の関係は約70年前(6・25戦争=朝鮮戦争)の戦場で結ばれた。

今はアジア・太平洋外交の『リンチピン(核心軸)』の役割をしている」「地域の平和と繁栄を確保し続け、北朝鮮の侵略に断固対抗していくだろう」と述べた。

ワシントンの外交消息筋は「米議会は北朝鮮問題などに関連して米韓同盟がこれまで以上に重要であることをよく分かっている」と話した。

だが、米国のメディアや専門家は韓国の新政権発足を歓迎しながらも、今後の北朝鮮問題をめぐり、韓米間に確執が生じるのではないかとの懸念も多かった。

また、文在寅大統領が金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の「太陽(Sunshine)政策(北朝鮮融和政策)」を継承して「月光(Moonshine)政策」を行うだろうとの見方もある。

米紙ワシントン・ポストは「韓国は全世界に民主主義が生きていることを示した」と伝えながらも、

「対北朝鮮政策ではソウルとワシントンの間に潜在的な亀裂が生じる可能性もある」と書いた。

ニューヨーク・タイムズも

「文在寅大統領当選は北朝鮮の核問題で対立する『北東アジア地政学』を揺るがすかもしれない」

「トランプ政権は核心同盟国(韓国)が北朝鮮融和政策を追い求める状況に直面している」と伝えた。

ウォール・ストリート・ジャーナルは

「李明博(イ・ミョンバク)・朴槿恵(パク・クネ)政権の対北朝鮮政策の劇的な変化が予想される」

「ソウルとワシントン間の摩擦(friction)につながる可能性がある」と見通した。

英国のジャーナリスト、マイケル・ブリン氏は同紙への寄稿文で「

韓国は月光政策の時代に入った」「これは、従来の太陽政策よりも現実的な性格を帯びるものになるだろう」と評した。

AP通信は「文在寅大統領は左右に分裂した国を統合し、貧富の格差をなくし、核で武装する北朝鮮の好戦的独裁者を相手にしなければならないという重い課題を背負った」と書いた。

欧のメディアも期待と懸念の声を伝えた。

英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は「文在寅大統領は平壌とのデタント(緊張緩和)を主張している」とする一方で、トランプ政権の米国との緊張を高める可能性もある」と書いた。

米国の専門家は、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)など韓米同盟の確執要素に言及、両国が対話を通じて解決するよう助言した。

米戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国専門家ビクター・チャ氏は「新政権はノコギリではなくメスを持つべきだ」と言った。

対北朝鮮政策で急激な変化を追い求めるのではなく、巧みな手術のような修正が必要だという意味だ。

スコット・スナイダー米外交問題評議会上級研究員も「THAAD配備などの懸案について『間違っていた』という証拠もなしに覆そうとすれば問題になるだろう」

「米韓両国とも同盟に関する問題での政治的争点化は避けなければならない」と述べた。

韓国「衝撃が広がった」ソウルの大気汚染、北京より深刻? 対策に本腰

2017-05-20 16:41:23 | 日記
韓国「衝撃が広がった」ソウルの大気汚染、北京より深刻? 対策に本腰

西日本新聞 5/19(金) 10:08配信

韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は、深刻化する大気汚染対策の第1弾として、稼働32年以上の石炭火力発電所8基を6月に1カ月間停止する方針を決めた。

来年以降も電力需要が比較的少ない3~6月に停止する。

ソウルの大気汚染は中国・北京より悪化しているとのデータもあり、韓国国内からは期待の声が出ている。

停止するのは、韓国で稼働中の石炭火力発電所59基のうち、稼働32~44年の8基。

文大統領はこの8基を含め、稼働30年以上の計10基を任期の2022年までに廃止する方針も表明した。

子どもの健康への影響を監視するため、全国の小中高約1万1千校全てに大気測定の機器を設置する。

韓国大統領府は、老朽化した石炭火力発電所8基を1カ月間停止すれば、大気汚染の原因である粒子状物質「PM10」が1~2%減ると試算している。

来年以降、4カ月間停止することで、液化天然ガス(LNG)火力発電所で発電を補うコストが約600億ウォン(約60億円)増える見込みだが、その分は韓国電力に負担させる。

世界保健機関(WHO)が設けているPM10の環境基準値は大気1立方メートル当たり年平均20マイクログラム。

ソウル市の測定では16年の年平均は48マイクログラムに上った。世界の大気汚染を監視する団体が公表したPM10やPM2・5などの総合指数は今年3月時点で、ソウルがインド・ニューデリーに次いで世界2番目に悪かった。

深刻な大気汚染で知られる北京(6位)より悪いデータに、韓国では「衝撃が広がった」(東亜日報)。

韓国の大気汚染は、老朽化した火力発電所や年式の古いディーゼル車の排ガスが原因とみられている。

文大統領は、大統領選で汚染物質を任期中に30%削減する公約を掲げて当選。

石炭火力発電所の削減のほか、電気自動車などエコカーの推進、工場の排ガス基準の強化などを柱とする対策を取りまとめる方針だ。

=2017/05/19付 西日本新聞朝刊=