韓国の通貨スワップ、米国など基軸通貨国と結べない理由は…
2017年10月11日09時59分
[ⓒ 中央日報/中央日報日本語版]
通貨スワップは外貨準備高が底をついた場合に備え相手国に自国の通貨を預けて相手国の通貨やドルを受け取る契約だ。
外貨準備高が有事の際に備えた「積立金」なら、通貨スワップは一定の「マイナス通帳」の性格だ。
2つとも万一発生しかねない外貨不足事態を考慮した「安全弁」の役割をする。
だが依然として韓国の通貨スワップ構成は弱いという指摘が出ている。
韓国は現在中国(560億ドル)をはじめ、インドネシア(100億ドル)、マレーシア(47億ドル)、オーストラリア(77億ドル)と通貨スワップ協定を締結している。
アラブ首長国連邦(UAE)との54億ドル規模の通貨スワップは昨年10月に満期終了したが、両国は延長には合意しており、具体的な事項について協議を進めている。
このほか韓国は東南アジア諸国連合(ASEAN)、中国、日本と共同で作ったチェンマイイニシアチブ(CMI)から384億ドルを引き出すことができる。これをすべて合わせれば1222億ドルだ。
ところが韓国が結んだ2国間通貨スワップの中に基軸通貨はない。
CMIを除いた他の通貨スワップ協定はすべて双方が自国通貨を交換することにしている。
オーストラリアドルは世界5位圏の通貨と評価されるが国際的に広く通用する通貨とみるには無理がある。
マレーシアリンギットとインドネシアルピアは国際金融市場での存在感はわずかだ。
中国との通貨スワップも人民元(3600億元)基準の契約だ。
人民元の価値が高まってはいるがドルなどと比較すると価値はまだ弱い。
韓国が結んだ通貨スワップのうち基軸通貨はCMIで引き出しできる384億ドルがすべてということだ。
これすらも実際に資金を利用するには多くの加盟国の同意と国際通貨基金(IMF)との協議が必要で、相対的に利用は容易でない。
韓国金融研究院マクロ経済金融研究室のパク・ジョンギュ室長は「中国と通貨スワップを延長するのは当然望ましいが、実際の通貨危機時の防御膜の役割は限定的。
米国と通貨スワップを結ぶのが韓国の立場では最も良い」と話した。
問題は米国との通貨スワップ締結が容易ではない点だ。
2008年の金融危機当時米国と300億ドル規模の通貨スワップを結んだ。韓国が危機を抜け出すのに大きな役割をした。
この契約は2010年に終了した。韓国は米国と通貨スワップを結ぶことを望んでいる。
だが米国側は冷淡だ。切実なのは韓国側であり米国はあえて急ぐ理由はない。
その上韓米自由貿易協定(FTA)再協議が現実化し通商分野で両国は争わなければならない状況のため通貨スワップ締結を強く要求することも難しい。
やはり主要国際通貨である円を持つ日本を代案として求めることもできるが政治的問題が障害だ。
日本との通貨スワップは2001年に20億ドルから始まり2008年に300億ドルに増額され、2011年には700億ドルまで増えた。
この規模は徐々に減り2015年に終了した。
昨年8月に交渉が再開されたが、今年1月に「少女像」問題で日本が交渉中断を宣言した。
韓国政府もあえて自分から通貨スワップ締結を「物乞い」したりはしないという立場だ。
先月末現在3848億ドルに達する外貨準備高を持つ状況であえて国民的感情を損ねてまで通貨スワップ締結を先に提案しないというのが韓国政府の考えだ。
だが外貨準備高がいくら多くても危機勃発時に外国為替が引き潮のように抜け出しかねないため基軸通貨国との通貨スワップ締結が必要というのが専門家らの診断だ。
ソウル市立大学経営学部のユン・チャンヒョン教授は「難しくても米国に通貨スワップ締結提案を持続的にする必要がある。
日本とは政経分離の原則の中で通貨スワップ締結を通じ実利を求めるのが望ましい」と話した。
主要国との通貨スワップだけに頼りにくい環境だけに外貨準備高管理に努力すべきとの指摘も出る。
延世(ヨンセ)大学経済学部のソン・テユン教授は「米国や日本との通貨スワップ締結は容易でなく、中国との関係も壮語しにくい状況。
第1の安全網である外貨準備高を十分に維持し、韓国に投資された海外資金が抜け出ないよう管理するのが重要だ」と話した。
通貨スワップという外国為替安全網構築に出たのは韓国だけではない。
金融危機などを経て各国の中央銀行も足早に動いている。
米連邦準備制度理事会(FRB)と欧州中央銀行(ECB)、英国、日本、スイス、カナダの6カ国中央銀行は2013年に常時通貨スワップ契約を結んだ。
自国のドル流動性が不足すれば他の中央銀行から満期3カ月の短期流動性貸し出し供給をするものだ。
中国は人民元国際化のために通貨スワップを積極的に活用している。
中国人民銀行によると7月末現在で中国は32カ国と3兆510億元の通貨スワップを締結した状態だ。
日本銀行も域内影響力強化手段として通貨スワップを活用する様相だ。シンガポールとオーストラリアに続き今年に入りタイ(30億ドル)、フィリピン(120億ドル)と2国間通貨スワップ協定を締結した。
通貨スワップが外交手段として活用され通貨スワップは米国と中国の通貨戦争のまた別の戦線になりかねないとの分析も出ている。
フランス最大のシンクタンクである国際経済予測研究センター(CEPII)は
「米国は金融市場の流動性梗塞を防ぐ一方ドルの影響力を強化しようとする目的で通貨スワップを締結しており、
中国は人民元の国際化を通じてドル中心の国際通貨体制から抜け出すために通貨スワップを利用している」と指摘した。