2017-10-22 05:00:00
韓国、「対北朝鮮」トランプ氏を誘導する安倍首相の「日本第一」
勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
なんと、安倍氏はトランプ氏の相談相手になっている!
今日は、衆院選投票日である。私は、選挙運動目的でこのブログを書くのでない。
ただ、一部マスメディアの「安倍憎し」が異常であることに、異議を申し立てたいだけである。
その安倍首相が、北朝鮮問題で、米トランプ大統領を自家薬籠中の物にしつつあるという記事が、韓国有力紙『中央日報』のコラムに掲載された。
「憎い安倍だが、外交手腕に脱帽」という主旨である。普段の韓国紙には見られない「エール」が来た。
日本の「反安倍」メディアは、自らの筆で日本の政治を動かせると信じている。
それは全くの錯覚である。その自覚もないままに、「反安倍」記事を垂れ流している。
有権者は、一部メディアが考えている以上に、総合的な視点で日本の将来を考えている。
「反安倍記事」を小馬鹿にして読んでいるのだ。そのことを知るべきだろう。
私の古巣の東洋経済は、「東洋経済オンライン」で毎日、総合的情報を掲載している。
聞くところによると、ヤフー・朝日新聞に次いで三番目にヒット数が多いという。
各記事には、コメント欄がある。その多彩な内容に目を見張るのだ。
極めて高度のコメントが載っている。
こういうハイレベルの読者が、マスメディアの記事を見ていることに気づくべきである。
読者の方が、書き手の記者よりも教養度合いが高い現実を知れば、恐ろしくて「反安倍」の扇動的記事を書けず、もっと地道な記事になると思う。
つまり、観察・データ・理論という三段階を踏んで、まっとうな記事を書くことである。
現に、今回の総選挙の予測では、「憎い安倍」の続投気配が濃厚である。反安倍のマスメディアは、「負けた」と言って良かろう。
安倍首相につては、例の「森友・加計問題」でゴタゴタしてきた。
「忖度」したとか、知り合いの利益を図ったとか、野党と一部メディアは一緒になって追及している。
この問題で、唯一救いなのは、「金銭」が絡んでいないことだ。
「忖度」したかしなかったか。それは、水掛け論である。
こういう問題だけで、貴重な国会審議の時間を使ってきた。
惜しいことだ。目を外に転じれば、北朝鮮問題が差し迫っている。これについての国会議論は深まらなかった。
安倍首相が、トランプ大統領と肝胆相照らす関係にある、という記事が韓国紙の『中央日報』に掲載されたのだ。
日本では、「反安倍」ゆえにあえて紹介しないのかも知れないが、「トランプ・安倍」ラインによって北朝鮮政策が動かされているというのだ。
韓国では、この日米首脳の動きを注目している。
『中央日報』(10月17日付)は、「トランプ大統領の訪韓、1泊であろうと2泊であろうと」と題する、風変わりなタイトルのコラムを掲載した。
筆者は、同紙の金玄基(キム・ヒョンギ)ワシントン総局長である。
この記事は、日本のメディアでは報道されない内容だ。
反安倍が基本的スタンスであるから、安倍首相とトランプ大統領が腹を割って話し合える関係にあるのは、日米外交史上でも珍しいケースである。
その意味では、「外交の安倍」の面目躍如たるものがある。
プーチン露大統領とも「ファーストネーム」で呼びあえる関係である。
この安倍氏を、「森友・加計」問題で足を引っ張る。
その得失を考えない野党と一部メディアの狭量さに驚く。
「国益」よりも「私益」優先である。反安倍で、政権に近づきたい。
反安倍で、新聞の発行部数を増やしたい。こんな見え透いた行動は先刻、有権者に警戒されているのだ。
(1)「10月4日午後10時、ラスベガス銃乱射事件の現場へ向かう専用機『エアフォースワン』でトランプ大統領は安倍晋三首相の電話を受けた。
慰めの言葉が終わると、トランプ大統領はすぐに北朝鮮の核問題に入った。
最初の言葉は『シンゾウ(晋三)、私は何をすればよいのか』。2人の12分間の対話録を見たというワシントンのある外交消息筋は『2つの理由で驚いた』と伝えた」
安倍首相の特技は、初対面の人間を取り込むことだという。
「人垂らし」とも言えるようだ。
自民党内に目立った「反安倍」の声を聞かないのも、安倍本人の性格による面があるのかも知れない。
この安倍流「交渉術」によって、トランプ大統領と腹蔵なく語り合える関係を作り上げたのであろう。
政治家としての経験は、トランプ氏よりも安倍氏の方がはるかに先輩だ。
その点で、トランプ氏が気安く相談できる相手なのだ。
(2)「ワシントンの外交消息筋が驚いた一つは、トランプ大統領の安倍首相に対する絶対的依存度である。
『北朝鮮との対話はいけない。無条件に圧力だ』と主張する安倍首相に対し、トランプ大統領は『私はシンゾウの言葉に絶対に同感』という言葉を繰り返したという。
もう一つは文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対するトランプ大統領の不信感だ。
激しい表現(私が直接確認したのでないため具体的には書かない)まで使ったのをみて驚いたという。
トランプ大統領の激怒に、(安倍首相は)「私がうまく(文大統領に)伝える」と言ってなだめたりもした」
ワシントンの外交消息筋は、二つの点で「トランプ・安倍」の濃密な関係に驚いたという。
①、トランプ氏の安倍氏に対する絶対的な依存性。
②、トランプ氏の韓国文大統領への厳しい批判と、それを執り成す安倍氏の柔軟性。
超大国の米国大統領を引きつける安倍首相の外交術は、過去の日本の首相には見られなかったタイプかも知れない。
小泉・元首相もこれに近かったが、相手に対する好悪の差も目立った。
安倍氏の場合、外国首脳とは誰でも胸襟を開けるのは、天性のものであろうか。
インドのモディ首相とも「親友」になっている。
(3)「トランプ大統領が、対話論を展開するティラーソン国務長官に『時間を浪費するな』と面と向かって非難した。
また『嵐の前の静けさ』を叫ぶ理由は何か。
ある人は(大統領と国務長官の)『戦略的役割分担』というが、ホワイトハウスに詳しい人たちは首を横に振る。それが、その時点でのトランプ大統領の率直な考えだという。そこに、多大な役割をしているのが安倍首相だ。経済は『アメリカファースト』、
北朝鮮問題は『ジャパンファースト』(ネーション紙)だ。
我々はその間、安倍首相を『トランプのプードル』と嘲弄していた。
しかし、すでに安倍首相はトランプ大統領のパートナー、いや調教師になってしまった」
トランプ大統領は、北朝鮮問題で安倍首相への絶対的依存性を高めているとすれば、日本の頭越しに対北政策が決まる懸念は消える。
これまで、北朝鮮のミサイル実験前夜、安倍首相が公邸に泊まっていることが報道された。
この記事を見た瞬間、私は米国から極秘情報を得ている結果と見ていた。
先の「トランプ・安倍」の関係から言えば、当然の連絡なのだ。
(4)「カギは、安倍首相の考えが韓国と同じかどうかだ。安倍首相が憎くても、我々と同じ方向にトランプ大統領を導いてくれれば悪いことはないからだ。
ところがそうでもないところに問題がある。
安倍首相は、非核化を前提にしない対話には反対だ。
北朝鮮が、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を放棄する代わりに、米国が金正恩(キム・ジョンウン)政権の存続、『最小限の』核兵器黙認に動くのではないかと極度に警戒している。
それなら、いっそのこと軍事行動がよいということだ」
安倍首相が、対北戦略でトランプ大統領を動かしているとすれば、韓国としても安倍首相の動きに関心を持たざるを得ない。
日韓が、同一方向に向かっているならば問題ない。
逆方向だと、韓国にとっては不利益を被るからだ。
安倍首相は、非核化を前提にしない対話に反対している。
安倍首相は、米国が金正恩政権の存続や核兵器黙認に動くことを警戒している。
この点について、後のパラグラフにある通り、日本の了解なしには行なわない「約束」が米国との間でできあがっている。
万一、外交交渉に失敗すれば、軍事行動もやむを得ないとする考えが、安倍首相にあるのでないか。
韓国は、その点が心配だとしている。
対北問題で、米国も「ジャパンファースト」(日本の国益優先)を認めている。
北に核武装を認める妥協は将来、日本へ大きな禍根を残すので、それを認める訳にはいかない。
圧力をかけ続けても解決できない場合、部分的な米軍の軍事行動によってでもその災いの根を絶つべし、という考え方である。これについて、韓国が同調するか意思統一が必要であろう。
(5)「(安倍首相は)文在寅政権の対話路線に逆らって、時には(日韓を)仲違いさせる理由があるのだ。
それが日本の国益なら、我々にはどうすることもできない。
ただ、(安倍首相を)説得しないのも我々の問題だ。
中国には、トランプ大統領と対等に向き合う交渉力と核という安全装置がある。
日本には、日本に知らせず米国が行動に踏み切ることはない、とするトランプ大統領への信頼という安全装置がある。
韓国には、韓半島(朝鮮半島)戦争を防ぐ安全装置があるのか。いや、我々には果たして『味方』がいるのか」
韓国大統領府は、「86世代」と言われる「反米・親中朝」派が陣取っている。
彼らの立場は、戦争に反対。米国の戦術核を韓国に置くのも反対。
要するに、北朝鮮がなすがままに「白旗」を掲げるという反戦主義集団である。
この根っこには、民族統一という悲願がある。
共産主義であろうと何だろうと、南北統一が絶対的な目標という民族派である。
これら民族派には、北の核開発を内心で喜ばしいことと受け取っている気配すらある。
この集団が、韓国大統領府に巣くっている現実を見ると、日本が真面目に話し合える関係をつくるのは困難であろう。
日本は、民主主義を守る立場である。
韓国の「86世代」は、民主主義を守らず共産主義も受け入れるというスタンスである。
こうなると、日本は韓国を抜きにして、米国とともに対北戦略を進めざるを得ない。
日本は、韓国と運命をともにすることはできない以上、対北戦略において「ジャパンファースト」にならざるを得ない。
その場合、韓国はどうするのか。
文政権を説得して、「86世代」を大統領府から遠ざけることだ。
韓国は、大統領府と政府の安保政策が異なっている。
この不統一を正すには、政府に一本化して政策の統一を図ることであろう。
韓国の安全保障は、韓国政府の意識統一から始まるのだ。
(2017年10月22日)