2017.5.21 01:00
難題山積の文在寅政権の韓国 熱狂的な左派の期待に応えられなかったとき、何が待っているか やられたことは…
産経
一部省略
朴政権の借金背負う
新政権が、前政権のできなかったこと、課題を背負うのはどこの国でも同じだ。
ただ、朴槿恵政権から引き継いだ文在寅政権の課題は膨大。
課題を引き継ぐと言うよりも「そのまま背負わされた」と言った方がいい。
それほど、文在寅政権の発足時の韓国はまずい状況にある。
韓国国民の誰に聞いても、その現実を否定はしない。
韓国国民の最大の懸念は「暮らし」。
韓国経済は低迷を続けており、再生は相当厳しい。
文在寅大統領が選挙中、最も力説したのは「雇用」であり失業対策だった。
韓国の今年第1四半期(1~3月)の失業者は1年前より1・2%増え116万7000人だった(韓国統計庁による)。
うち約47%の54万3000人が大学卒業以上の学力を持つ者で、史上最悪を記録した。
失業は特に若年層で著しく、格差も拡大している。
家計負債額は1300兆ウォン(約130兆円)。
カード債務の返済不能の件数、額は増加をたどっている。
「公共部門を中心に81万人分の雇用を創出する」と公約していた文氏は就任直後に「約31万人の公共企業の非正規職員を、任期中に全員正規職にする」と表明した。
大統領直々の約束に、非正規職の間で期待は高まっているようだ。
ただ、国の経済が回復しない現状で、民間企業の雇用までがいきなり回復するわけはない。
雇用や格差是正は文氏が朴槿恵氏に敗れた前回2012年の大統領選でも争点となり、当時、文氏も改善を約束した。
だが、これらの問題、韓国経済は「何もできなかった朴槿恵政権」(韓国紙)を経て、5年前よりも、もっとまずい状況になっている。
こうした現状にも関わらず、文氏はバラ色の雇用創出に加え、「社会の公正と正義」を掲げ、あえて韓国経済を牽引(けんいん)してきた財閥の改革を進める方針だ。
北朝鮮という爆弾を抱え、文在寅政権の韓国は急いで主要各国との外交関係修復に急いでいる。
首脳会談の早期開催に向け、日米中などに特使を派遣した。6月下旬には文氏が訪米し、首脳会談に臨む。
自ら作った負の遺産
経済、外交など課題山積の文在寅大統領。
ただ、これら朴槿恵政権が残した“負の遺産”は皮肉にも、当の文在寅氏が手を貸して作ってしまったものも少なくない。
文氏が今、まさに取り組もうとしている経済改革、経済活性化、雇用回復は、いずれも朴槿恵前大統領が実現に向けて任期内の関連法案の成立を目指していた。
しかし、野党の反対で国会を通らず、そのまま放置された。
経済関連法案を政争の具として利用し、“憎き朴槿恵政権”の足を引っ張ったのは、まさしく文氏ら野党勢力だった。
また、当時の野党勢力はTHAADの配備に頑強に反発し、文氏は「配備是非は次期政権に委ねるべきだ」と主張。
慰安婦問題をめぐる日韓合意についても文氏は「再協議」を主張し、釜山の日本総領事館前に違法設置された慰安婦像には今年1月にいち早く訪れ、「保存」を主張した。
文氏は左右に分かれた世論の和合を目指し、「国民の統合と共生」を訴えてもいる。
ただし、自ら大規模集会に積極参加したことで、保守派との亀裂は深まったままだ。
“反文在寅”の世論は依然として根強い。
昨日の敵は今日も敵
文在寅大統領は国内で今度は、守る側に立たされている。
就任当日、文氏は国会で野党各党を回り、新政権への協力をお願いして回った。
ただ、保守系の野党が文在寅政権に素直に協力することは想像しにくい。
政権与党となった左派の「共に民主党」は国会議席数(300)のうち、120議席で、過半数にも満たない少数与党だ。
重要法案の上程と可決には国会議員の6割(180人)の賛成が必要で、朴槿恵政権が経済関連法案の成立にしくじった原因はここにある。
文在寅氏ら野党勢力の反対で、法案成立はつぶされ続けた。
自分たちがやってきた妨害を、政権を取った文氏は受ける側に立つ。
内政だけでなく、外交関係の修復に奔走している文在寅政権。
まさしく、自分たちがあおった炎を消すという「マッチポンプ」を今、演じているかのようだ。
このマッチポンプ現象。文氏に限らず、韓国がよくやらかすことだ。
最近の例では朴槿恵前大統領。
慰安婦問題をめぐり、各国で日本を非難し、日本の世論を悪化させた揚げ句の果てに、訪韓日本人が激減。
「これではまずい」と感じたのか、2014年秋ごろから対日関係改善に急にシフトし、
日韓国交正常化50周年の節目に合わせるかのように、慰安婦問題での日韓合意に持ち込んだ。
文氏は彼ら左派勢力のバックアップもあり、大統領に上り詰めた。
今後、彼らの要求に応じられない場合、理想の韓国社会を公約通りに作れず国民を失望させた場合、何が待っているのか。
韓国の“民衆の力”の壮絶さは、大規模集会の中で一緒になって叫んでいた文氏が最も分かっているはずだ、
まっとうすれば5年後の5月に大統領の任期は終わる。
それまでの任期中に文在寅政権を根本から脅かす事態が、韓国国内で起こらないという保証はどこにもない。