勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2019-02-16 05:00:00
韓国、「対日関係」突然の危機論登場、日本再評価の裏に「何が?」
テーマ:ブログ
韓国メディアで突然、対日強硬外交への反省論が持ち上がった。
韓国国会議長の「天皇謝罪要求発言」が、日本政府と国民の猛烈な反発を呼んでいることへの危機感もあるようだ。
先ず、『朝鮮日報』(2月15日付)は、「韓国識者が朝鮮日報に提言、最悪の韓日関係、日本の対韓政策の変化を注視せよ」と題する記事を掲載した。
(1)
「最悪の方向に向かっている韓日関係は、歴史戦争を超え、国内法・国際法問題に飛び火し、北朝鮮の核をめぐる外交・安保の次元に広がりつつある。
1次的な責任は韓国政府の教条的で無責任な外交行動にある。
政府が非理性的な反日感情的でこじつけに近い要求を乱発し、韓国の外交的立場を困難なものにしている。
また、最近生じている韓日間の確執は、日本の対韓外交が根本的に変わってきているためのものだ。
韓国問題をめぐり、日本の外交関係者・政界関係者の間で起こっている深層部の変化に焦点を合わせて分析しなければならない」
この記事は、『朝鮮日報』読者権益保護委員会なるものが2月の例会において、日本について注意深く取材し、報道せよというものだ。
ここでは、日韓関係が最悪化している一次的な責任は韓国政府にあると断じている。これは、韓国で出てきた最初の反応である。
1.韓国政府が非理性的な反日感情的でこじつけに近い要求を乱発し、韓国の外交的立場を困難なものにしている。
2.最近生じている韓日間の確執は、日本の対韓外交が根本的に変わってきているためのものだ。韓国問題をめぐり、日本の外交関係者・政界関係者の間で起こっている深層部の変化に焦点を合わせて分析しなければならない
韓国の無原則で非理性的な対日外交が、日本政府や外交界・政界へ大きな衝撃を与えている。
日本は、従来のような「包容的」な態度で韓国に対応することをせず、徹底的に「戦う外交方針」に転じた兆候が見られるとしている。
これは、韓国の国益に大きな影響を及ぼすので、『朝鮮日報』は、日本の深層部で起こっている変化を取材せよ、と言っているもの。
『中央日報』(2月15日付)は、「韓国の日本に対する5つの誤解と真実」と題する記事を掲載した。
日本を正しく見るためには5つの誤解を正す必要があるとして、次の点を上げた。
「第一に、日本は歴史に対する反省・謝罪が不足しているという認識だ。
1965年の国交樹立当時には、椎名悦三郎外相の遺憾表明だけがあった。
その後、80年代に日本政治家の妄言波紋を経て、95年自民党・社会党連立政権の村山富市首相がアジア対象の談話で植民支配に関する反省・謝罪を表明し、98年金大中(キム・デジュン)-小渕による韓日パートナーシップ宣言もこれを継承した」
「第二に、日本の軍国主義復活に対する誤解だ。
「強い日本」を指向する安倍晋三政権以降、日本社会で保守右傾化現象が強くなったのは事実だが、日本社会には戦後70余年間に平和憲法下で育まれた平和意識がある。
憲法改正に反対する世論が半数を超える。集団主義傾向には留意しなければならないが、財政赤字、人口減少、平和憲法など制約がある」
「第三に、日本国力に対する低評価だ。
日本が「失われた20年」で世界2位の経済地位を中国に譲ったが、
アジアの近代化に真っ先に成功し、40年間世界2位の経済で蓄積した有形・無形の資産があり、世界1位の純債権国だ。
中国の台頭で隠れてはいるが、日本は依然として東アジアの主要行為者だ」
「第四に、安倍首相と日本を同一視してはいけない。
安倍首相が歴代最長寿首相に向かって突き進んでいるが、これは経済回復に対する期待と毎年首相が変わる政治不安を体験した日本国民の安定に対する希求が反映されたものであり、
右傾化政策の支持を意味しない。韓国の対日政策も日本全体を見て長い観点から冷静に展開しなければならない」
「最後に、韓日と米国との関係だ。東アジアの戦略地形で最も重要な行為者である米国の東アジア政策は韓日関係に多くの影響を及ぼす。
米国は経済・外交・軍事的に韓国よりも日本を重要視している。
日本は米国軍事力の東アジア展開の核心であり、戦略競争関係である中国を封じ込める「不沈空母」としての地政学的位置を占めている。
世界3位の経済大国であり、唯一のアジアG7メンバーだ」
中央日報が、上述のような冷静な記事を書いたのは珍しい。
「旭日旗」では、韓国の大学教授と一緒になって騒ぎ回る記事を報じてきたメディアだ。
日本企業に対して、「戦犯企業」と罵り、天皇を「日王」と呼ぶこともあった。
朝鮮日報もかつてはこういう調子であったが、ここ3~4年、論調が公平なっている。
韓国の二大紙が、揃って「対日冷静」を呼びかけるのは初めてである。韓国の経済実態の悪化が進んできた証拠であろう。
迫り来る長期不況の兆しに怯えるも対策なく「呆然」
文在寅大統領の1年9カ月を振り返ると、経済政策では立派なことを語るが、実行を伴わないというのが定評だ。
最低賃金の大幅引上げは、経済活性化の切り札と叫んでいたが、逆に失業者を増やしている。
「所得主導経済」というお題目に誘われて始めたことだ。
この間違った政策が、韓国経済の基盤を徹底的に破壊することは明白である。
この先、韓国経済はどうするのか。反日をやっている時間はないはずだ。
『朝鮮日報』(2月14日付)は、「韓国政府の雇用対策、バラマキ頼みを反省して修正せよ」と題する社説を掲載した。
今年1月の就業者数が前年同月に比べ1万9000人の増加にとどまった。
韓国政府が今年の経済運用計画で「月間雇用15万人増加」を掲げたが、年初から目標値に遠く及ばなかった。
失業者数(122万人)は1月としては過去19年で最多だ。
失業率は4.5%に上昇し、過去9年で最悪を記録した。この原因は、最賃の大幅引上げにあるが手直し、ないし棚上げするという動きはゼロ。集団自殺のような場面である。
(1)
「過去には雇用の優等生と評価された韓国は雇用情勢が悪化し、米日に失業率の低さで逆転された。
韓国よりもはるかに豊かな先進国よりも雇用を創出できない状況なのだ。
そうであるなら、韓国政府は原因が何かを分析し、対策を示さなければならない。
しかし、意固地になっている。馬車が馬を引っ張るような所得主導政策、税金を注ぎ込む雇用政策を続けるのだという。
1月の厳しい雇用統計が発表され、韓進重工業が債務超過だと発表したその日、経済副首相は『今年は政府系企業が2000人を採用する』というとんでもない場当たり的な対策を表明した」
今の韓国に、経済政策というものは存在しない。単なる思い込みによる妄念だけである。
貧しい人を豊かにしたい。その動機は正しいが、手段を間違えているのだ。病気の治療でも同じであろう。
手順を間違えた治療は健康を損ねて逆効果になる。現在の韓国がその状態である。
もはや、この問題を取り上げるのも飽きるほどだが、文氏の頭にはこの惨状が分らないのであろう。妄念とは恐ろしい。
雇用対策として、経済副首相は「今年は政府系企業が2000人を採用する」と簡単に言い切る当たりに、経済政策不在という烙印が押されるのだ。
雇用の基本は民間にあることを忘れた発想法である。
繰り返しになるが、賃金と生産性はバランスを取らなければならない。
このポイントが文政権では理解不能である。
文政権5年間で、韓国経済はその発展基盤をメチャクチャにして次期政権へバトンを渡す。
だが、もはや次期政権でも手の施しようのない末期症状に立ち至るであろう。
(2)
「文在寅政権発足以降はこんな調子が続いている。
悲惨な雇用統計が示されるたびに『状況を厳しく受け止める』としながらも、抜本的な対策を立てるのではなく、税金ばらまきによる対策を打ち出すパターンを繰り返している。
大学の講義室の電灯を消す『エネルギー節約ヘルパー』、
たばこの吸殻を拾うだけの『伝統市場維持者』を採用し、雇用統計を粉飾するという手まで使った。
税金ばらまきではなく、企業と市場にやさしい経済活性化政策に転換しなければ、雇用は決して増えない。
雇用対策の予算として54兆ウォン(約5兆3200億円)を注ぎ込んでも、最悪の雇用事情が続いているならば、それを反省し、路線を修正するのが常識のはずだ」
政府が、大学の教室の電灯を消すというアルバイトや、たばこの吸殻を拾うというアルバイトをつくって、「雇用増」を水増しするとは前代未聞である。
文政権では、この程度のアイデアしか浮かばないのだろう。
なぜ、「所得主導経済」というまやかしの理屈に取り憑かれているのか。
何の役にも立たない事業に、5兆円以上の貴重な財源をつぎ込む。国民は、怒りを表わさなければならない。
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します。
2019-02-16 05:00:00
韓国、「対日関係」突然の危機論登場、日本再評価の裏に「何が?」
テーマ:ブログ
韓国メディアで突然、対日強硬外交への反省論が持ち上がった。
韓国国会議長の「天皇謝罪要求発言」が、日本政府と国民の猛烈な反発を呼んでいることへの危機感もあるようだ。
先ず、『朝鮮日報』(2月15日付)は、「韓国識者が朝鮮日報に提言、最悪の韓日関係、日本の対韓政策の変化を注視せよ」と題する記事を掲載した。
(1)
「最悪の方向に向かっている韓日関係は、歴史戦争を超え、国内法・国際法問題に飛び火し、北朝鮮の核をめぐる外交・安保の次元に広がりつつある。
1次的な責任は韓国政府の教条的で無責任な外交行動にある。
政府が非理性的な反日感情的でこじつけに近い要求を乱発し、韓国の外交的立場を困難なものにしている。
また、最近生じている韓日間の確執は、日本の対韓外交が根本的に変わってきているためのものだ。
韓国問題をめぐり、日本の外交関係者・政界関係者の間で起こっている深層部の変化に焦点を合わせて分析しなければならない」
この記事は、『朝鮮日報』読者権益保護委員会なるものが2月の例会において、日本について注意深く取材し、報道せよというものだ。
ここでは、日韓関係が最悪化している一次的な責任は韓国政府にあると断じている。これは、韓国で出てきた最初の反応である。
1.韓国政府が非理性的な反日感情的でこじつけに近い要求を乱発し、韓国の外交的立場を困難なものにしている。
2.最近生じている韓日間の確執は、日本の対韓外交が根本的に変わってきているためのものだ。韓国問題をめぐり、日本の外交関係者・政界関係者の間で起こっている深層部の変化に焦点を合わせて分析しなければならない
韓国の無原則で非理性的な対日外交が、日本政府や外交界・政界へ大きな衝撃を与えている。
日本は、従来のような「包容的」な態度で韓国に対応することをせず、徹底的に「戦う外交方針」に転じた兆候が見られるとしている。
これは、韓国の国益に大きな影響を及ぼすので、『朝鮮日報』は、日本の深層部で起こっている変化を取材せよ、と言っているもの。
『中央日報』(2月15日付)は、「韓国の日本に対する5つの誤解と真実」と題する記事を掲載した。
日本を正しく見るためには5つの誤解を正す必要があるとして、次の点を上げた。
「第一に、日本は歴史に対する反省・謝罪が不足しているという認識だ。
1965年の国交樹立当時には、椎名悦三郎外相の遺憾表明だけがあった。
その後、80年代に日本政治家の妄言波紋を経て、95年自民党・社会党連立政権の村山富市首相がアジア対象の談話で植民支配に関する反省・謝罪を表明し、98年金大中(キム・デジュン)-小渕による韓日パートナーシップ宣言もこれを継承した」
「第二に、日本の軍国主義復活に対する誤解だ。
「強い日本」を指向する安倍晋三政権以降、日本社会で保守右傾化現象が強くなったのは事実だが、日本社会には戦後70余年間に平和憲法下で育まれた平和意識がある。
憲法改正に反対する世論が半数を超える。集団主義傾向には留意しなければならないが、財政赤字、人口減少、平和憲法など制約がある」
「第三に、日本国力に対する低評価だ。
日本が「失われた20年」で世界2位の経済地位を中国に譲ったが、
アジアの近代化に真っ先に成功し、40年間世界2位の経済で蓄積した有形・無形の資産があり、世界1位の純債権国だ。
中国の台頭で隠れてはいるが、日本は依然として東アジアの主要行為者だ」
「第四に、安倍首相と日本を同一視してはいけない。
安倍首相が歴代最長寿首相に向かって突き進んでいるが、これは経済回復に対する期待と毎年首相が変わる政治不安を体験した日本国民の安定に対する希求が反映されたものであり、
右傾化政策の支持を意味しない。韓国の対日政策も日本全体を見て長い観点から冷静に展開しなければならない」
「最後に、韓日と米国との関係だ。東アジアの戦略地形で最も重要な行為者である米国の東アジア政策は韓日関係に多くの影響を及ぼす。
米国は経済・外交・軍事的に韓国よりも日本を重要視している。
日本は米国軍事力の東アジア展開の核心であり、戦略競争関係である中国を封じ込める「不沈空母」としての地政学的位置を占めている。
世界3位の経済大国であり、唯一のアジアG7メンバーだ」
中央日報が、上述のような冷静な記事を書いたのは珍しい。
「旭日旗」では、韓国の大学教授と一緒になって騒ぎ回る記事を報じてきたメディアだ。
日本企業に対して、「戦犯企業」と罵り、天皇を「日王」と呼ぶこともあった。
朝鮮日報もかつてはこういう調子であったが、ここ3~4年、論調が公平なっている。
韓国の二大紙が、揃って「対日冷静」を呼びかけるのは初めてである。韓国の経済実態の悪化が進んできた証拠であろう。
迫り来る長期不況の兆しに怯えるも対策なく「呆然」
文在寅大統領の1年9カ月を振り返ると、経済政策では立派なことを語るが、実行を伴わないというのが定評だ。
最低賃金の大幅引上げは、経済活性化の切り札と叫んでいたが、逆に失業者を増やしている。
「所得主導経済」というお題目に誘われて始めたことだ。
この間違った政策が、韓国経済の基盤を徹底的に破壊することは明白である。
この先、韓国経済はどうするのか。反日をやっている時間はないはずだ。
『朝鮮日報』(2月14日付)は、「韓国政府の雇用対策、バラマキ頼みを反省して修正せよ」と題する社説を掲載した。
今年1月の就業者数が前年同月に比べ1万9000人の増加にとどまった。
韓国政府が今年の経済運用計画で「月間雇用15万人増加」を掲げたが、年初から目標値に遠く及ばなかった。
失業者数(122万人)は1月としては過去19年で最多だ。
失業率は4.5%に上昇し、過去9年で最悪を記録した。この原因は、最賃の大幅引上げにあるが手直し、ないし棚上げするという動きはゼロ。集団自殺のような場面である。
(1)
「過去には雇用の優等生と評価された韓国は雇用情勢が悪化し、米日に失業率の低さで逆転された。
韓国よりもはるかに豊かな先進国よりも雇用を創出できない状況なのだ。
そうであるなら、韓国政府は原因が何かを分析し、対策を示さなければならない。
しかし、意固地になっている。馬車が馬を引っ張るような所得主導政策、税金を注ぎ込む雇用政策を続けるのだという。
1月の厳しい雇用統計が発表され、韓進重工業が債務超過だと発表したその日、経済副首相は『今年は政府系企業が2000人を採用する』というとんでもない場当たり的な対策を表明した」
今の韓国に、経済政策というものは存在しない。単なる思い込みによる妄念だけである。
貧しい人を豊かにしたい。その動機は正しいが、手段を間違えているのだ。病気の治療でも同じであろう。
手順を間違えた治療は健康を損ねて逆効果になる。現在の韓国がその状態である。
もはや、この問題を取り上げるのも飽きるほどだが、文氏の頭にはこの惨状が分らないのであろう。妄念とは恐ろしい。
雇用対策として、経済副首相は「今年は政府系企業が2000人を採用する」と簡単に言い切る当たりに、経済政策不在という烙印が押されるのだ。
雇用の基本は民間にあることを忘れた発想法である。
繰り返しになるが、賃金と生産性はバランスを取らなければならない。
このポイントが文政権では理解不能である。
文政権5年間で、韓国経済はその発展基盤をメチャクチャにして次期政権へバトンを渡す。
だが、もはや次期政権でも手の施しようのない末期症状に立ち至るであろう。
(2)
「文在寅政権発足以降はこんな調子が続いている。
悲惨な雇用統計が示されるたびに『状況を厳しく受け止める』としながらも、抜本的な対策を立てるのではなく、税金ばらまきによる対策を打ち出すパターンを繰り返している。
大学の講義室の電灯を消す『エネルギー節約ヘルパー』、
たばこの吸殻を拾うだけの『伝統市場維持者』を採用し、雇用統計を粉飾するという手まで使った。
税金ばらまきではなく、企業と市場にやさしい経済活性化政策に転換しなければ、雇用は決して増えない。
雇用対策の予算として54兆ウォン(約5兆3200億円)を注ぎ込んでも、最悪の雇用事情が続いているならば、それを反省し、路線を修正するのが常識のはずだ」
政府が、大学の教室の電灯を消すというアルバイトや、たばこの吸殻を拾うというアルバイトをつくって、「雇用増」を水増しするとは前代未聞である。
文政権では、この程度のアイデアしか浮かばないのだろう。
なぜ、「所得主導経済」というまやかしの理屈に取り憑かれているのか。
何の役にも立たない事業に、5兆円以上の貴重な財源をつぎ込む。国民は、怒りを表わさなければならない。