勝又壽良の経済時評
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します
2017-07-12 05:00:00
韓国、「文政権」労組寄り政策で労働改革絶望「ゼロ成長目前」
外資企業進出に強い労組が壁
10年以内にゼロ成長時代へ
韓国与党「共に民主党」は、時代遅れの政策に自己陶酔している。
「原理主義」と「独善」がもたらす弊害は、韓国の運命を狂わせることは確実である。
それほど、現実感覚に乏しく学生時代の感覚のままの言動を繰り返している。
表記の労働改革=労働市場流動化は、韓国政権を支える労組が反対しているから、まず実現する可能性はない。
安保政策でも、中国に同調しているのだ。
韓国与党「 共に民主党」の秋美愛(チュ・ミエ)代表が7月7日、邱国洪駐韓中国大使に会って発言した内容は耳を疑わせているようなものだという。
「THAAD体系の実用性が誇張されている」とし「THAAD配備に対する中国の懸念を十分に理解する」という発言をしたのだ。
「政府与党代表の発言にしてはあまりにも無責任で甘い安保認識を反映している」(『中央日報』社説7月8日付)と強く批判される始末だ。
文在寅大統領が同日、習近平中国主席と会談した際、「THAAD設置は譲れない」として、中国の撤回要求を拒否している一方で、与党代表がこういった「八方美人的」な外交辞令をばらまいている。
この「お調子者」が与党代表であることは、労働市場改革でも簡単に労組の要求に歩調を合わせるであろう。余りにもリアリティのなさに驚くのだ。
韓国の経済成長率を高めることは、今後の高齢社会で増大する社会保障費を賄う上でも不可欠である。
ところが、韓国新政権は、成長政策よりも分配重視の政策である。
スローガンとして言えば、「成長よりも分配重視」が何かスマートに聞こえるかも知れない。
だが、成長政策を軽視していると、後で取り上げるように、韓国経済は間もなく「ゼロ成長」に落ち込む危険性が高まっている。
この危険性を脱して、成長率を維持しないと増大し続ける社会保障費を払えなくなるのだ。
大言壮語は儒教社会の習わしだが、ここは目を見開いて、美辞麗句に酔っている時ではな。
日本人の私が、ここまで心配する必要はないに違いない。
ただ、経済学を学び、かつてジャーナリズムに席を置いた人間として、知りながら沈黙しているのは、余りにも人情がなさ過ぎる。
普段、「反日」の言動に辟易している身であるものの、隣国の誼(よしみ)でご注意に及ぶ次第だ。
外資企業進出に強い労組が壁
『韓国経済新聞』(7月7日付)は、「労働市場を改革してこそ外国企業の投資増える」と伝えた。
韓国が、外国企業誘致に成功するには『労働分野』を真っ先に改革する必要がある。
こういう指摘がかねてから強い。過度な許認可規制も改善課題に挙げられてきた。
韓国経済新聞が韓国外国企業協会と共同で、外国企業66社を対象にアンケート調査を実施した結果が、前記のような結果が出てきた。
(1)「『投資誘致拡大のための政府の最優先政策課題は何か』という質問に対し、対象企業の32.4%(44社、複数回答可能)が『労働市場柔軟化政策』を選んだ。
また25.7%(35社)が『許認可制度の再整備』が必要だと答えた。
外国企業は特に週あたりの労働時間を最大52時間に制限し、非正規職員を正規職員に転換しようとする現政権の政策的基調を懸念の目で眺めている。
ある外国系企業の社長は、『政府は契約員職や派遣職員に対して批判的な見方をするが、経歴中断者、障害者、低学歴者など就職が難しい人には絶対に必要だ』と述べた」
韓国は、外資企業の誘致に努力しているが、硬直化した労働市場がネックになっている。
韓国労組はなにしろ、終身雇用制と年功序列賃金制の二つを絶対に守ると宣言している。
それを政治的に支えているのが文政権の与党「共に民主党」である。これでは、自ら外資系企業の韓国進出を阻止しているようなものだ。
その矛盾に気づかないという文政権も、困った存在である。この政権が続く5年間で、韓国経済の体質は大きく傷つくに違いない。
文政権を支える「86世代」は、「反米・親中朝」である。
これは、「反市場主義」であり、「反企業」と言って差し支えない。
それ故、終身雇用制と年功序列賃金制の2つを維持することは、「反企業論」から導かれる当然の帰結である。
問題は、「反市場主義」=「反企業論」が、韓国経済の息の根を止める危険性を帯びていることだ。それを明確に意識していないから困るのだ。
韓国経済はずるずると落込みながら、原因が分からないという悲劇を演じるであろう。
労働市場柔軟化政策とは、雇用の流動化である。
離職と採用を容易に行えるようになれば、企業は安心して新規採用に臨める。
だが、企業は解雇が困難となれば極力、正規採用を減らして、非正規雇用を増やして対応するはずだ。
非正規雇用が増えている背景は、雇用の流動化が進んでいない結果とも言える。
男性が働き、女性は家庭という古い意識が、終身雇用制と年功序列賃金制の裏にあることを認識すべきなのだ。
男性も女性も同等の立場で働く現在、古い労働慣行にしがみついていたのでは経済成長は不可能な時代になっている。米国の労働市場を見れば分かるように、労働の流動化は働く側にとってもメリットがある。
(2)「 強い労組も国内投資を遠ざける要因だと指摘した。外国企業A社は最近、本社からの対韓投資誘致に成功して生産施設の竣工を控えていたが、労組との葛藤で竣工が遅れた。
労組が工事の過程で自らが指定した建設労働者を使用することを要求し、デモを行ったからだ。A社の関係者は『このような状況を眺めた本社がうんざりしていた』と伝えた」
韓国の労働組織率は、日本(17.3%=2016年)よりもはるかに低い10.2%(2016年)である。
韓国の労働組合員は、経済的なエリート層に数えられている。この層が、エリートであり続けるために、終身雇用制と年功序列賃金制の維持を要求し続けている。
働く者の1割の利益を守るべく、古い労働慣行を維持することの無意味さを知るべきだが、韓国の「エリート層」ゆえに、それも不可能なのだ。
韓国経済が沈没しかねないという状況下でもなお、保身のために旧制度の維持を叫ぶ。フランス革命の前夜を思わせる、支配層の勝手な振舞と言って良かろう。
10年以内にゼロ成長時代へ
『朝鮮日報』(7月7日付)は、「韓国経済、高齢化対策なしでは10年以内に0%台成長」と題する記事を掲載した。韓国の中央銀行である韓国銀行のレポートである。
高齢化対策とは、具体的には少子高齢化対策である。高齢者が出産をするわけでないから、いかに出生率を高めるかという問題である。
韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)は、世界最低グループに属している。最新データでも1.17(2016年)で、前年の1.24を下回っている。過去7年間で最低水準だ
韓国政府も手をこまねいていたわけではない。
この10年間、少子化対策予算におよそ80兆ウォン(約7兆9千億円)を投じたにもかかわらず、16年間も「極低出生力国」に留まっている。
経済協力開発機構(OECD)の決めている「極低出生力」の基準線である合計特殊出生率は1.30だ。韓国は2001年、1.297に下落した後、これまで極低出生力国から抜け出せずにいる。
人口が横ばいを維持できる人口置換率は2.08である。日本が、このラインを割ったのは1974年である。
韓国は1984年だ。たったの10年の遅れだけである。
それ以前を振り返ると、1970年の合計特殊出生率は日本が2.13。韓国は4.53であった。
この日韓のデータから見て、韓国の落込みがいかに大きいかを示している。
実は今後、この点が韓国で経済的に大きな負担となってくるのだ。
1970年に4.53の合計特殊出生率が、1984年に人口置換率2.08を割ったように、人口構造が極めて歪んでいるのだ。
これによって、1970年生まれがリタイアする2030年以降、現役世代が急減する。まさに、社会保障危機が起こるリスクを抱える。
後のパラグラフで掲示したが、合計特殊出生率の急低下は生産年齢人口比率の急減となって現れている。
韓国は、この危機を乗り越える秘策があるわけでない。
日本に対して、慰安婦問題で誠意が足りないとかなんとか言って非難しているが、将来の人口問題に目を向けて、日本へ教えを請わなければならない環境に追い込まれている。
現実は、そんなことはおくびにも出さず、少女像を世界中につくって、嫌がらせをしている。将来のことを完全に忘れた民族であろうか。
(3)「韓国銀行は6日、韓国が今後高齢化に手を打たなければ、今後10年以内に経済成長率が0%台に低下し、今後30年以内にマイナス成長時代が到来するとの研究結果を発表した。
韓銀は『人口高齢化が経済成長に与える影響』と題する報告書で、年齢別の経済活動参加率が現在と変わらず、労働生産性が低下していくという前提で今後の経済成長率を試算した。
その結果、高齢化のペースを遅らせたり、高齢化によるマイナス効果を軽減したりする対策を取らない場合、年平均成長率が10年以内に現在の半分に落ち込むことが分かった」
韓銀は、今後10年以内に韓国経済が0%台の成長率に落ち込むと警告している。
韓国銀国は、今年4月「アベノミクスを学べ」というレポートを発表したが、言いたかったのは、日本が合計特殊出生率の引上に積極的に取り組むなど、少子化対策に乗り出していることを評価したものである。
人口高齢社会は、働き手が不足して扶養人口が増えることだ。
これを補うには、労働生産性を引き上げることが最大の対策である。韓国では、この対応策が遅れている。
企業が設備投資に消極的であるからだ。その理由は、労組の発言権が強く大幅な賃上げ攻勢でせっかくの生産性向上分以上の賃上げで食われてしまっている。
そうなると、企業は「縮み志向」となって、前へ進めないのだ。
文政権は、この上さらに労働組合を経営に参加させる「ドイツ経営参加方式」を公約に掲げている。
ドイツのように良識ある労働組合ならば、労使が経営協議会をつくっても問題はないが、韓国では労組が経営側を上回る実権を握るはずだ。
それは、文字通り韓国経済の「死」を意味する。それほど危険性を帯びた話である。
(4)「韓銀は、2000~15年に3.9%だった年平均成長率が16~25年には1.9%に低下。26~35年には0.4%になり、36~45年には0%、46~55年にはマイナス0.1%になると予想した」
韓銀推計の成長率 生産年齢人口比率(韓国統計庁)
2000~15年 3.9% 2015年 73.0%
16~25年 1.9% 20年 71.1%
26~35年 0.4% 30年 63.1%
36~45年 0% 40年 56.5%
46~55年-0.1% 50年 52.7%
上記の二つのデータを見比べていただきたい。今後の経済成長率の推移が、総人口に占める生産年齢人口比率(15~64歳)の低下と軌を一にしていることだ。
人口統計ほど正確なものはない。ドラッカーは、「経済統計の中で最も信頼が置けるデータ」と言ったことがあるほどだ。
私も、このデータへ全幅の信頼を置いている。学生時代、「人口論」の講義をたったの数人で受けたことを思い出した。
韓国経済の脆弱性は、家計が常に過剰債務に陥るリスクを抱えていることだ。
「宵越しのカネを持たない」という浪費癖が強い民族である。
日本では、落語の世界で江戸っ子が「宵越しのカネを持たない」と面白おかしく語るが、あれは特殊な例であろう。
韓国では、今でも「過剰浪費」癖が強く、債務返済で個人消費が盛り上がらずにいる。
韓国では、安定した個人消費が期待できない以上、自律的な経済発展は不可能であろう。
企業は強い労働組合の賃上げ攻勢に自信を失っている。
この傾向を文政権がさらにバックアップするというのだから、韓国経済の将来に期待など持てるはずがないのだ。
(2017年7月12日)
日々、内外のニュースに接していると、いろいろの感想や疑問が湧きます。それらについて、私なりの答えを探すべく、このブログを開きます。私は経済記者を30年、大学教授を16年勤めました。第一線記者と研究者の経験を生かし、内外の経済情報を立体的に分析します
2017-07-12 05:00:00
韓国、「文政権」労組寄り政策で労働改革絶望「ゼロ成長目前」
外資企業進出に強い労組が壁
10年以内にゼロ成長時代へ
韓国与党「共に民主党」は、時代遅れの政策に自己陶酔している。
「原理主義」と「独善」がもたらす弊害は、韓国の運命を狂わせることは確実である。
それほど、現実感覚に乏しく学生時代の感覚のままの言動を繰り返している。
表記の労働改革=労働市場流動化は、韓国政権を支える労組が反対しているから、まず実現する可能性はない。
安保政策でも、中国に同調しているのだ。
韓国与党「 共に民主党」の秋美愛(チュ・ミエ)代表が7月7日、邱国洪駐韓中国大使に会って発言した内容は耳を疑わせているようなものだという。
「THAAD体系の実用性が誇張されている」とし「THAAD配備に対する中国の懸念を十分に理解する」という発言をしたのだ。
「政府与党代表の発言にしてはあまりにも無責任で甘い安保認識を反映している」(『中央日報』社説7月8日付)と強く批判される始末だ。
文在寅大統領が同日、習近平中国主席と会談した際、「THAAD設置は譲れない」として、中国の撤回要求を拒否している一方で、与党代表がこういった「八方美人的」な外交辞令をばらまいている。
この「お調子者」が与党代表であることは、労働市場改革でも簡単に労組の要求に歩調を合わせるであろう。余りにもリアリティのなさに驚くのだ。
韓国の経済成長率を高めることは、今後の高齢社会で増大する社会保障費を賄う上でも不可欠である。
ところが、韓国新政権は、成長政策よりも分配重視の政策である。
スローガンとして言えば、「成長よりも分配重視」が何かスマートに聞こえるかも知れない。
だが、成長政策を軽視していると、後で取り上げるように、韓国経済は間もなく「ゼロ成長」に落ち込む危険性が高まっている。
この危険性を脱して、成長率を維持しないと増大し続ける社会保障費を払えなくなるのだ。
大言壮語は儒教社会の習わしだが、ここは目を見開いて、美辞麗句に酔っている時ではな。
日本人の私が、ここまで心配する必要はないに違いない。
ただ、経済学を学び、かつてジャーナリズムに席を置いた人間として、知りながら沈黙しているのは、余りにも人情がなさ過ぎる。
普段、「反日」の言動に辟易している身であるものの、隣国の誼(よしみ)でご注意に及ぶ次第だ。
外資企業進出に強い労組が壁
『韓国経済新聞』(7月7日付)は、「労働市場を改革してこそ外国企業の投資増える」と伝えた。
韓国が、外国企業誘致に成功するには『労働分野』を真っ先に改革する必要がある。
こういう指摘がかねてから強い。過度な許認可規制も改善課題に挙げられてきた。
韓国経済新聞が韓国外国企業協会と共同で、外国企業66社を対象にアンケート調査を実施した結果が、前記のような結果が出てきた。
(1)「『投資誘致拡大のための政府の最優先政策課題は何か』という質問に対し、対象企業の32.4%(44社、複数回答可能)が『労働市場柔軟化政策』を選んだ。
また25.7%(35社)が『許認可制度の再整備』が必要だと答えた。
外国企業は特に週あたりの労働時間を最大52時間に制限し、非正規職員を正規職員に転換しようとする現政権の政策的基調を懸念の目で眺めている。
ある外国系企業の社長は、『政府は契約員職や派遣職員に対して批判的な見方をするが、経歴中断者、障害者、低学歴者など就職が難しい人には絶対に必要だ』と述べた」
韓国は、外資企業の誘致に努力しているが、硬直化した労働市場がネックになっている。
韓国労組はなにしろ、終身雇用制と年功序列賃金制の二つを絶対に守ると宣言している。
それを政治的に支えているのが文政権の与党「共に民主党」である。これでは、自ら外資系企業の韓国進出を阻止しているようなものだ。
その矛盾に気づかないという文政権も、困った存在である。この政権が続く5年間で、韓国経済の体質は大きく傷つくに違いない。
文政権を支える「86世代」は、「反米・親中朝」である。
これは、「反市場主義」であり、「反企業」と言って差し支えない。
それ故、終身雇用制と年功序列賃金制の2つを維持することは、「反企業論」から導かれる当然の帰結である。
問題は、「反市場主義」=「反企業論」が、韓国経済の息の根を止める危険性を帯びていることだ。それを明確に意識していないから困るのだ。
韓国経済はずるずると落込みながら、原因が分からないという悲劇を演じるであろう。
労働市場柔軟化政策とは、雇用の流動化である。
離職と採用を容易に行えるようになれば、企業は安心して新規採用に臨める。
だが、企業は解雇が困難となれば極力、正規採用を減らして、非正規雇用を増やして対応するはずだ。
非正規雇用が増えている背景は、雇用の流動化が進んでいない結果とも言える。
男性が働き、女性は家庭という古い意識が、終身雇用制と年功序列賃金制の裏にあることを認識すべきなのだ。
男性も女性も同等の立場で働く現在、古い労働慣行にしがみついていたのでは経済成長は不可能な時代になっている。米国の労働市場を見れば分かるように、労働の流動化は働く側にとってもメリットがある。
(2)「 強い労組も国内投資を遠ざける要因だと指摘した。外国企業A社は最近、本社からの対韓投資誘致に成功して生産施設の竣工を控えていたが、労組との葛藤で竣工が遅れた。
労組が工事の過程で自らが指定した建設労働者を使用することを要求し、デモを行ったからだ。A社の関係者は『このような状況を眺めた本社がうんざりしていた』と伝えた」
韓国の労働組織率は、日本(17.3%=2016年)よりもはるかに低い10.2%(2016年)である。
韓国の労働組合員は、経済的なエリート層に数えられている。この層が、エリートであり続けるために、終身雇用制と年功序列賃金制の維持を要求し続けている。
働く者の1割の利益を守るべく、古い労働慣行を維持することの無意味さを知るべきだが、韓国の「エリート層」ゆえに、それも不可能なのだ。
韓国経済が沈没しかねないという状況下でもなお、保身のために旧制度の維持を叫ぶ。フランス革命の前夜を思わせる、支配層の勝手な振舞と言って良かろう。
10年以内にゼロ成長時代へ
『朝鮮日報』(7月7日付)は、「韓国経済、高齢化対策なしでは10年以内に0%台成長」と題する記事を掲載した。韓国の中央銀行である韓国銀行のレポートである。
高齢化対策とは、具体的には少子高齢化対策である。高齢者が出産をするわけでないから、いかに出生率を高めるかという問題である。
韓国の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に生む子どもの数)は、世界最低グループに属している。最新データでも1.17(2016年)で、前年の1.24を下回っている。過去7年間で最低水準だ
韓国政府も手をこまねいていたわけではない。
この10年間、少子化対策予算におよそ80兆ウォン(約7兆9千億円)を投じたにもかかわらず、16年間も「極低出生力国」に留まっている。
経済協力開発機構(OECD)の決めている「極低出生力」の基準線である合計特殊出生率は1.30だ。韓国は2001年、1.297に下落した後、これまで極低出生力国から抜け出せずにいる。
人口が横ばいを維持できる人口置換率は2.08である。日本が、このラインを割ったのは1974年である。
韓国は1984年だ。たったの10年の遅れだけである。
それ以前を振り返ると、1970年の合計特殊出生率は日本が2.13。韓国は4.53であった。
この日韓のデータから見て、韓国の落込みがいかに大きいかを示している。
実は今後、この点が韓国で経済的に大きな負担となってくるのだ。
1970年に4.53の合計特殊出生率が、1984年に人口置換率2.08を割ったように、人口構造が極めて歪んでいるのだ。
これによって、1970年生まれがリタイアする2030年以降、現役世代が急減する。まさに、社会保障危機が起こるリスクを抱える。
後のパラグラフで掲示したが、合計特殊出生率の急低下は生産年齢人口比率の急減となって現れている。
韓国は、この危機を乗り越える秘策があるわけでない。
日本に対して、慰安婦問題で誠意が足りないとかなんとか言って非難しているが、将来の人口問題に目を向けて、日本へ教えを請わなければならない環境に追い込まれている。
現実は、そんなことはおくびにも出さず、少女像を世界中につくって、嫌がらせをしている。将来のことを完全に忘れた民族であろうか。
(3)「韓国銀行は6日、韓国が今後高齢化に手を打たなければ、今後10年以内に経済成長率が0%台に低下し、今後30年以内にマイナス成長時代が到来するとの研究結果を発表した。
韓銀は『人口高齢化が経済成長に与える影響』と題する報告書で、年齢別の経済活動参加率が現在と変わらず、労働生産性が低下していくという前提で今後の経済成長率を試算した。
その結果、高齢化のペースを遅らせたり、高齢化によるマイナス効果を軽減したりする対策を取らない場合、年平均成長率が10年以内に現在の半分に落ち込むことが分かった」
韓銀は、今後10年以内に韓国経済が0%台の成長率に落ち込むと警告している。
韓国銀国は、今年4月「アベノミクスを学べ」というレポートを発表したが、言いたかったのは、日本が合計特殊出生率の引上に積極的に取り組むなど、少子化対策に乗り出していることを評価したものである。
人口高齢社会は、働き手が不足して扶養人口が増えることだ。
これを補うには、労働生産性を引き上げることが最大の対策である。韓国では、この対応策が遅れている。
企業が設備投資に消極的であるからだ。その理由は、労組の発言権が強く大幅な賃上げ攻勢でせっかくの生産性向上分以上の賃上げで食われてしまっている。
そうなると、企業は「縮み志向」となって、前へ進めないのだ。
文政権は、この上さらに労働組合を経営に参加させる「ドイツ経営参加方式」を公約に掲げている。
ドイツのように良識ある労働組合ならば、労使が経営協議会をつくっても問題はないが、韓国では労組が経営側を上回る実権を握るはずだ。
それは、文字通り韓国経済の「死」を意味する。それほど危険性を帯びた話である。
(4)「韓銀は、2000~15年に3.9%だった年平均成長率が16~25年には1.9%に低下。26~35年には0.4%になり、36~45年には0%、46~55年にはマイナス0.1%になると予想した」
韓銀推計の成長率 生産年齢人口比率(韓国統計庁)
2000~15年 3.9% 2015年 73.0%
16~25年 1.9% 20年 71.1%
26~35年 0.4% 30年 63.1%
36~45年 0% 40年 56.5%
46~55年-0.1% 50年 52.7%
上記の二つのデータを見比べていただきたい。今後の経済成長率の推移が、総人口に占める生産年齢人口比率(15~64歳)の低下と軌を一にしていることだ。
人口統計ほど正確なものはない。ドラッカーは、「経済統計の中で最も信頼が置けるデータ」と言ったことがあるほどだ。
私も、このデータへ全幅の信頼を置いている。学生時代、「人口論」の講義をたったの数人で受けたことを思い出した。
韓国経済の脆弱性は、家計が常に過剰債務に陥るリスクを抱えていることだ。
「宵越しのカネを持たない」という浪費癖が強い民族である。
日本では、落語の世界で江戸っ子が「宵越しのカネを持たない」と面白おかしく語るが、あれは特殊な例であろう。
韓国では、今でも「過剰浪費」癖が強く、債務返済で個人消費が盛り上がらずにいる。
韓国では、安定した個人消費が期待できない以上、自律的な経済発展は不可能であろう。
企業は強い労働組合の賃上げ攻勢に自信を失っている。
この傾向を文政権がさらにバックアップするというのだから、韓国経済の将来に期待など持てるはずがないのだ。
(2017年7月12日)