このブログ「2014年将棋竜王戦も大詰め」で述べて予言?した通り
糸谷哲郎が森内竜王に挑戦していた竜王戦第5局に勝ち、4勝1敗で竜王位を奪取しました。
竜王戦への挑戦が決まるまでは、B2級に所属する糸谷哲郎六段でしたが、日本将棋連盟の昇段規定により
- 2014年09月・・・・B2のまま竜王戦挑戦者になり七段に昇段
- 2014年12月・・・・B2のまま竜王位を獲得し八段に昇段
と、この4ヶ月の間で、六段から八段にまで駆け上がったことになります。順位戦B2級所属で八段というのは非常に珍しいことなのです〔かつての規定ではA級へ昇段すればやっと八段でしたから〕。
念のためにクラスを上から順に羅列すれば
A B1 B2 C1 C2 ・・・・ これが正式な棋士
A級の優勝者が名人位へ挑戦します。
今回竜王位を獲得した糸谷哲郎がB2級に所属しております。プロになるとC2に入るので、名人戦へ挑戦するには最低でも5年かかるのですが、棋戦によっては勝ち抜きさえすればタイトルをとれることがあり、竜王戦はまさにその好例だったのです。
このほかに順位戦には出場できないけれども各棋戦には出場可能なフリークラス棋士もいます。C2からの降級者、あるいは自ら宣言した棋士がいますが、ここには定年もあるとのこと。
もしも糸谷竜王が来年2015年10月からの竜王戦防衛戦で勝てば2期竜王位となり、なんと九段へ昇段、ということになりますね。
おめでとうございます。
最後に各紙の新竜王関連記事を引用しておきます。
まずは竜王戦の主催紙である読売新聞社。
糸谷七段、竜王位を奪取…哲学専攻の異色棋士
将棋界の最高位を争う第27期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)、森内俊之竜王(44)と挑戦者、糸谷哲郎七段(26)の第5局は3日から、金沢市の「湯涌温泉 かなや 青巒せいらん荘」で行われていたが、4日午後3時46分、糸谷七段が161手で勝ち、通算4勝1敗で竜王位を奪取した。
糸谷はこれが初タイトル。森内の連覇はならなかった。優勝賞金は4200万円。
糸谷は大阪大大学院で哲学を専攻する異色の棋士で、形にこだわらない力強い将棋が持ち味。
今期は挑戦者決定戦で羽生善治名人を破ってタイトル戦初登場を果たすと、シリーズ開幕から2連勝。第3局は落としたものの、第4局、第5局を逆転で制した。::読売新聞 2014年12月04日 18時29分
やはり読売は「将棋界の最高位を争う」という言葉を常用しており、竜王戦を主催する読売と将棋連盟が結託した偽称だと言えます。
何が「最高位」なのかを明確にしないまま使っているのですが、事情がまったくわからない人を「どうやら竜王戦が将棋界の最高位らしい」と錯覚させる効果があります。何が「最高」なのかを知らないまま・・・・
わかりやすく言えば、読売の「金銭」至上主義が、将棋連盟を利用して素人を誤解させる表現をあみだした結果だと言えます。
これが広告CMの危険なところですね。将棋連盟の収入の中で占める棋譜掲載料金の大きさを示しているようです。
まだ「危険」が理解できない人のために敢えて言えば、
- オリンピックを伝えるマスメディアが、オリンピックに際して自社へ莫大な金額の広告を出してくれる企業の不祥事・疑惑を発表できない事情があります。
- 同じように、読売が将棋連盟へのスポンサー料金(棋譜掲載権)とひき替えに将棋連盟と結託して、意味不明だけれども「棋界最高」という称号を使うことになれば、しっかり視聴者・読者をだませるわけですね(笑)。これは読売の不祥事・疑惑ではありませんが、読売のごり押しを発表できないということです。
「最高の俳優」とか、「最高のプロ野球選手」などがあいまいであることを考えるなら、「棋界最高の竜王戦」もまたあいまいそのもの。
「ヤクザ映画に最も多く主演した俳優だれそれ」とか、「最も多く三冠王を獲得したプロ野球選手が落合博満」とか、「棋界最高の賞金金額を争う竜王戦」ならば、立派に意味があると言えます(笑)。
広告CMの危険は、そこにあるのでした。
糸谷七段、森内竜王下し初タイトル 将棋竜王戦
将棋の第27期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)の第5局が3、4日、金沢市で指され、挑戦者の糸谷(いとだに)哲郎七段(26)が森内俊之竜王(44)に161手で勝ち、4勝1敗で初タイトルとなる竜王を獲得した。同時に八段昇段も決めた。渡辺明二冠(30)とあわせ、七つあるタイトルのうちの三つを20~30代の若手が保持することになった。
20代での初タイトルは23歳で王位になった広瀬章人八段(27)以来、4年ぶり。昨年、竜王を獲得し、名人とともに将棋界の二大タイトルを手中にした森内竜王は今春の名人戦に続いて防衛に失敗し、3年半ぶりに無冠になった。
糸谷七段は広島市出身。2006年に17歳、高校3年でプロ入りした。当時から大器と注目され、同年、若手の登竜門・新人王戦で優勝。持ち時間の短い早指しを得意とし、NHK杯戦で2回準優勝した。才気あふれる勝ちっぷりと堂々とした言動から「怪物くん」の異名をとる一方、大阪大大学院に在籍して哲学を研究する異色の棋士で、専攻はハイデガーだ。
今期竜王戦は挑戦者決定戦で羽生善治名人(44)を破り、タイトル初挑戦を決めた。その勢いで開幕2連勝。第3局を落としたが、その後2連勝してビッグタイトルをつかんだ。関西所属の棋士としては2012年3月に棋王を失って無冠になった久保利明九段(39)以来のタイトル保持者となる。(深松真司)
◇ 糸谷新竜王の話
序中盤で反省の多いシリーズだった。時間配分がうまくできなかったが、いい結果を出せて素直にうれしいです。 :朝日新聞デジタル 2014年12月4日17時24分
こちらは、将棋棋戦で最古の名人戦を毎日新聞と共催する朝日新聞の記事です。ただし1ヶ所だけ抜けていた西暦上2桁「20」を追加しております。50年前の西暦下二桁表記キャンペーンじゃあるまいし、しっかり西暦4桁表示を維持しましょうね。
記事内容には、なにも問題はありません。むしろ読売のほうが主催紙らしく、開催した宿の名前や賞金金額を書く宿命があったのに対し、朝日のほうが糸谷新竜王の話も入れて的確にまとめているように思われました。