認知症終末期の患者さんに対して、抗菌薬をどの段階まで使用するべきなのか迷うことがあります。そもそもどこから終末期なのかという判断も難しい部分もあるですが、可逆的な原因が見当たらず、経口摂取が減少して必要量摂取できなくなってきた状態となり、医療者間や家族とも看取りに向かうことが共有できるような状態の方に、肺炎が合併することもしばしばあります。認知症の終末期として、最終段階としての肺炎と考えられるのですが、抗菌薬を投与することで緩和がはかれるのか、また治療を行わないことで予後が大きくかわってしまわないかなど葛藤や迷いが生じることは、認知症終末期の診療を行っている方であればだれしも経験するのではないかと思います。以前、このテーマについてしらべたことがあるので、本日をそれを紹介させていただきます。
<認知症終末期患者の肺炎に対する抗菌薬治療 ~予後や苦痛緩和にどのように寄与しているのか~>
対象:ナーシングホーム入所中の認知症終末期患者で肺炎を疑うエピソードがあった225名
研究デザイン:多施設の前向きコホート研究
アウトカム:survival及びcomfort(SM-EOLD,CAD-EOLD)
結果⇒①抗菌薬の投与:なし8.9%、内服のみ55.1%、筋注15.6%、静注20.4%
②survival(無治療群と比較):AHR内服0.20,筋注0.26,静注0.20 (治療群すべて有意に生存)
③comfort:治療群は全て、無治療群と比較して有意に低い
対象:ナーシングホーム入所中の認知症終末期患者で下気道感染のエピソードがあった94名、109件
研究デザイン:単施設の前向きコホート研究
アウトカム:死亡率
結果⇒死亡率10日後48%・6か月後74%、抗菌薬使用77%
死亡率と関連なし、ただし10日後の死亡率は有意に減少(HR0.51)
対象:認知症終末期で、肺炎になった後死亡した559名と肺炎にならずに摂食障害があり死亡した166名
研究デザイン:前向きコホート
アウトカム:亡くなる直前のdiscomfort(DS-DAT)
結果⇒肺炎群が、有意にdiscomfortスケール高かった。
肺炎群のなかで抗菌薬治療群が有意にdiscomfortスケール低かった。⇒死が差し迫った状態でも抗菌薬治療で苦痛とれるのではと結論。
上記をまとめて考えると、認知症終末期患者の肺炎に対して、抗菌薬治療をすることにより・・・
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