できる限り抜去を試みるようにしますが、どうしても尿道カテーテルを留置しなくてはならない患者さんはいます。在宅ではカテーテル閉塞により、看護師や医師の緊急訪問が増えますし、それを契機とした尿路感染症もあります。何よりご本人が尿が出なくてつらくなったりします。非常にコモンなプロブレムですがなかなかよい解決策がないのが現状です。今回、勉強会で少し調べてみました。
<尿道カテーテル閉塞の予防について>
home careを受けている尿道カテーテル留置患者(43例)の74%が8か月間で閉塞のエピソードあり。(Wildeら,2010)
202例を対象とした横断研究で、2か月間で24%の閉塞あり、閉塞は有意にUTIと関連(2.29倍)。(Wildeら,2013)
★Sticklerらのレビュー(Spinal Cord,2010)
ウレアーゼ産生菌によりpHがあがり、結晶化が起こされ、一方で細菌のバイオフィルムが形成される。P.mirabillisの感染がこの過程の主因となっている。
カテーテル閉塞する62%で膀胱結石が発見され、そのうち90%にP.mirabillis感染が起こっていた。
P.mirabillis感染のあるカテーテル留置者の閉塞を決める要因は尿pH。健康なボランティアを対象とした研究では水分量を増やしたり、クエン酸摂取でpHをコントロールすることができた。
⇒抗菌薬投与によるP.mirabillisの早期の除去はカテーテル閉塞を減らすかもしれない。しかし慢性的に閉塞し、結石形成している患者には効果は見込めないかもしれない。クエン酸飲料や飲水量増量は閉塞をコントロールするのに有用かもしれない・・・と結論。
★Hagen Sらのシステマティックレビュー(Cochrane,2010)
膀胱洗浄のカテーテル閉塞に対する効果について検討⇒5つのRCTがあるがどれも質が低く、有効かどうかの結論は得られない。(感染は膀胱洗浄によって増加してはいなかった)
★CDCガイドライン2009
シリコンは、頻回に閉塞がある長期カテーテル留置患者での痂皮形成の危険性を軽減するために他のカテーテル材料より望ましいかもしれない(カテゴリーⅡ)←カテーテル痂皮形成の減少における低質なエビデンスによる
★ Wildeらの報告(Nurs Res, 2015)
18歳以上でカテーテル関連の問題(UTIや閉塞)が起こった患者202例を対象としたRCT。Nsが3回の訪問と1回の電話を行うことにより、UTIや閉塞のイベントを減らせるかを検証。
⇒6か月以内の閉塞を有意に減少(12ヶ月では有意差なし、またUTI発症は有意差なし、緊急訪問の頻度は減少)
現時点で、臨床的に意義があるアウトカム(pHどうこうではなく、閉塞の頻度を減らせるかなど)で明らかになっていることはまだまだ少ないようです。現状ではシリコンでなければシリコンにしたり、水分量を増やすよう指導したり、それでもだめならためしにシナールを内服してもらったりとしています。あとは状況に応じては膀胱洗浄をやってもらうことがあります。一時期、膀胱洗浄がだいぶ悪とされていた時がありましたが、有効の限界性を知ったうえで、カテーテル閉塞予防に対して行うことを否定する根拠は現時点ではないかとは思います。あと、個人的には、介護者へ管理方法を確認したりすることは重要かなと感じています。これは感覚的なものではありますが、介護疲労などが介護者にあると余計に閉塞しやすくなることが多いように思っています。まあ、原因なのか結果なのかはわからないのですが・・・。在宅でどのように尿道カテーテルやバックの管理を行ってもらうかも重要な視点であることは確かですよね。そういう意味では最後の研究は面白いなと感じました。
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