湯浅醤油が主役の香り高いラーメン
南海電鉄とJR紀勢本線の和歌山市駅から歩いて8分ほど。国道26号と紀州街道が交わる城北橋北詰交差点で2010年8月から営業する「麺屋ひしお 本店」へ。コチラはいわゆる井出系、車庫前系とは違い、日本の醤油の発祥地と言われる和歌山県湯浅町の「湯浅醤油」をフィーチャーしたラーメンを提供している人気店だ。
醤油の歴史は鎌倉時代まで遡る。1255年、禅僧であった覚心が宋の径山寺での修行を終え帰国。和歌山県由良町の興国寺で布教を始めた。その際に夏野菜を漬け込み作る径山寺味噌、いまの金山寺味噌の製法も広めたという。この味噌は製造の過程で余分な水分が出たが、これが調味料として大変に美味しかったそう。
この水分を改良したものが醤油の起源であり、その後、銚子や野田、小豆島など全国に広がっていった。港のある湯浅町には江戸時代には90軒を超える醤油蔵が並んでいたそうだ。さて「麺屋ひしお」が使うのは創業1881年の「湯浅醤油有限会社」が製造する醤油だ。コチラは金山寺味噌を作る丸新本家の醤油部門にあたる。
醤油は伝統製法にのっとり杉の木樽で醤油を長期熟成させるのだが、古くなった杉樽は麺屋ひしおの店内でテーブルや壁に再利用されている。店内はテーブルのみ23席。麺メニューは麺メニューは紀州湯浅吟醸醤油ラーメン、湯浅生一本肉もり醤油ラーメン、特選煮干豚骨ラーメン、特選煮干豚骨つけ麺の4種をラインナップ。
どれも醤油を前面に押した一杯だ。それぞれチャーシュー、煮玉子、生卵、もやし、ネギを追加トッピング出来る。飯モノにはチャーシュー丼、湯浅おかかご飯、紀州ばら寿司、ゆめたまごの卵かけごはんを用意。さらに唐揚げ、餃子、塩ダレもやし炒め、チャーシューキムチ炒めなどのツマミ類もあり一杯飲ることも出来る。
今回は「紀州湯浅吟醸醤油ラーメン(814円)」を注文した。着丼時にスタッフが香りづけの醤油をスプレーするのが面白い。スープは豚骨がベースのスッキリしたもので、そこに湯浅醤油を主役にしたカエシを重ねている。塩味は強すぎず円みがあり、背脂のコクも加わって良い味に。さすが醤油の香りもしっかりと立ち旨い。
このスープに合わせるのは京都・麺屋棣鄂の中太麺。コシがあってスープとの絡みも良い。途中で丼頂に乗った豆板醤を溶くと、また違った表情を見せる。序盤はまず醤油の香りと味を堪能し、後半で溶くのをおススメしたい。チャーシューは大判の豚肩ロースが1枚。柔らかな仕上がりで肉の味をストレートに楽しめる。
ほか、茹でモヤシ、柔らかなメンマ、小口ネギ、揚げネギがトッピングされる。スッキリ、そして香り高い一杯、あっという間に完食した。なお卓上には湯浅醤油のたまごかけごはん用醤油や萬醤があるので、TKGや餃子を注文するのも良いだろう。ここ本店のほか、JR和歌山駅前にも支店があるので醤油ファンは是非一度。
<店舗データ>
【店名】 麺屋ひしお 本店
【住所】 和歌山県和歌山市卜半町45
【最寄】 南海電鉄・JR紀勢本線「和歌山市駅」徒歩8分