車庫前系の代表格「本家アロチ 丸髙」
ラーメンファンの間で『和歌山ラーメン』というと2系統に分類するのが一般的だ。ひとつは1953年に井出つや子氏が創業した「井出商店」を祖とする井出系で、濃厚な豚骨醤油の中華そばである。そしてもう一つが1940年に高松地区で創業した「丸髙」を祖とする車庫前系で、暖簾分けやインスパイアも多く存在している。
和歌山のラーメン店に「丸」や「〇」が付く屋号が目立つのも、丸髙に作り方を教わった人や、丸髙の人気にあやかって付けた店が多いからだそう。なお和歌山市には1971年まで路面電車が走っていたが、その車庫の周辺に丸髙の味がルーツの中華そばを提供する店が多かったため、車庫前系と分類されたようだ。
さて「丸髙」の本店は現在、夜遅くまでネオンが輝く和歌山市の繁華街・アロチの柳通り沿いで深夜まで営業している。店を切り盛りするのは二代目の髙本英一氏だ。店内は1席のみのカウンターとテーブルで合わせて16席ほど。麺メニューは「中華そば」を主軸に、キムチラーメン、チャーシューメンも提供している。
また餃子やキムチのほか、大根、玉子、スジ、こんにゃく、ちくわ、豆腐、平天、ごぼ天、厚揚げ、竹の子といった「おでん」や、和歌山ラーメンの友として定番のサバの押し寿司「早寿司」も用意。一杯引っかけることも出来る。今回は呑んだシメなのでシンプルに「中華そば(700円)」と「早寿司(110円)」を注文した。
着丼までの間に、まず早寿司を。郷土料理「なれ寿司」が発酵熟成に1か月以上かかるのに対し、コチラは酢で1日シメたものなので早寿司と呼ばれている。丸髙では和歌山市中央卸売市場にある「こしぢ」のものを提供。サッパリとした酸味で何故か中華そばと合うのだ。あっという間にたいらげると中華そばが到着。
茶濁したスープは豚骨を醤油で煮て味を染み込ませ、その豚骨を水から炊き直して旨味を抽出しているそうだ。比較的サラリとした飲み口で嫌な臭みは皆無。色は濃い茶色だがカエシの塩味は強すぎず丁度良し。円やかさとキレが同居する旨いスープだ。そこに柔らかめに茹で上げられた中細ストレート麺を合わせている。
チャーシューは豚バラ肉が1枚と、噛み応えあるロースが2枚。豚骨を似た醤油で味を付けているそうで、いずれも薄切りでの提供だ。ほか、メンマ、ネギ、そして和歌山ラーメンでおなじみの梅の花を模った蒲鉾が丼を彩る。あっという間に美味しく完食した。和歌山の夜の思い出に是非、車庫前系代表の一杯を啜ってみて欲しい。
<店舗データ>
【店名】 丸髙中華そば 本家アロチ 丸髙
【住所】 和歌山県和歌山市友田町2-50
【最寄】 JR阪和線「和歌山駅」西口徒歩12分