レトロかつキッチュな店内で啜る人形町系の味
大勝軒。首都圏の人なら、誰もが一度は耳にした事があるだろうラーメン店だ。数多く存在する大勝軒は、ルーツにより4つの系統に大別できる。有名なのは、つけ麺の生みの親、故・山岸一雄氏の「東池袋系」だろう。
ほか、荻窪の丸長から派生した大勝軒が源流の「丸長系」、永福町大勝軒がルーツの「永福系」とある。これだけでも、かなり複雑なのだが、更にこの3つとは全く関係ない、別の系統が存在する。それが「人形町系」だ。
そのルーツは、かつて人形町に存在した大勝軒にある。明治45年創業、日本における中華料理の草分け的な店で、4系統の中では最も古い。「大勝」は、なんと日露戦争に由来するという話だ。
今回訪れた日本橋本町の大勝軒も人形町系のひとつで、創業は昭和8年。趣のあるタイル張りの店舗、表にはショーウィンドウ。メニューはラーメンのほか、ワンタン、五目焼きそば、チャーハンなど。ほとんどが創業当時から続くものという。
ラーメンは鶏ガラベースのあっさりしたスープに自家製の細縮れ麺。麺だけでなく焼売や春巻きの皮も全て手作りという。チャーシューは人形町系に多いフチが紅いものではなく、自然の色味を活かしたジューシーなもの。素朴で「昔と変わらない味」と評されそうだが、少しずつ改良されているはずだ。
昭和8年は、高島屋が日本橋に全館冷暖房完備の店舗を構えた年で、当時は「東京で暑いところ、高島屋を出たところ」というコピーが一世を風靡していたという。建物は2009年に重要文化財に指定された。この大勝軒も重要文化財に値する貴重な建物だ。現在は三代目が店を守っているそうだが、長く続くことを願っている。
<店舗データ>
【店名】 大勝軒
【住所】 東京都中央区日本橋本町1-3-3
【最寄】 東京メトロ「三越前駅」徒歩3分