郡山ブラック起源の味を継ぐ「ますや本店」
近年、知名度が急上昇中の「郡山ブラック」。福島県郡山市のご当地ラーメンで、その名の通り濃口醤油や溜まり醤油を使った漆黒のスープが特徴である。その起源は明治元年(1868年)に郡山駅前で創業した「ますや食堂」だと言われている。カエシとスープを一緒に煮込むことで煮詰まり、黒いスープになったのだそうだ。
郡山で長年愛されてきた漆黒のラーメンだが、2009年に地元の情報誌が「郡山ブラック」と名付けた事で、その呼称が広がっていった。2010年には郡山市が公式パンフレットに掲載。さらに2024年3月には文化庁の「100年フード」に認定された。現在では喜多方、白河と並び、福島第3のご当地ラーメンと言われるまでに。
その製法だが、前述の様にカエシとスープを一つの寸胴や鍋で合わせて炊く「クラシックブラック」に加え、カエシとスープを丼で合わせる「ネオブラック」の2種があるという。現在、市内の25店舗ほどで食べられるそうだが、今回はまず元祖である「ますや食堂」のDNAを受け継ぐ「中華そば ますや 駅前店」を訪問した。
元祖の「ますや食堂」は2003年に閉店してしまったが、場所を変え「ますや本店」として再出発。ご主人の柴原久男氏は4代目で、柴原マス氏の曾孫にあたる。現在は郡山駅西口そばの「駅前店」と、安積高校そばの「台新店」の2店舗を展開中だ。さて駅前店だが、店内は L字カウンター6席と4人がけテーブル2卓の14席。
麺メニューだが、ますや食堂が昭和20年(1945年)頃から作り始めた味「伝」と、昭和初期にスルメや鰹節などで作っていたスープを再現した「元」、新世代に残すべく節と豚骨を合わせて作った「新」の3系統の醤油ラーメンをラインナップ。それぞれ焼豚、煮玉子、ネギ、海苔、メンマを追加トッピングすることが出来る。
そして麺は「中麺(ストレート)」か「ちぢれ麺」から選ぶ事が出来る。スタッフに尋ねると「伝統的なのはストレート麺で、人気があるのは縮れ麺」というから悩むが、今回は「伝(800円)」に「煮玉子(150円)」をトッピングし、人気の「縮れ麺」で注文することに。店内がほぼ満席だったこともあり、着丼までは待つこと15分ほど。
漆黒のスープは鶏ガラと節系を炊く寸胴に会津高砂屋の醤油を直接入れて炊いたもの。これにより互いの味が馴染やすくなるそうだ。そこにチャーシューを煮込んだ醤油ダレを足すことで伝統の味を再現している。この色にして塩味は強くないから不思議。ガラと節の旨味がしっかり引き出され、優しい味わいに仕上がっている。
そこに「ますや食堂」の麺打ち機を使って製麺した中太縮れ麺が泳ぐ。コシがありスープとの相性も抜群だ。チャーシューは薄切りのモモ肉が3枚。味玉は黄身がサラリと解け美味である。ほかトッピングはホウレン草、メンマ、ナルト、刻みネギ。優しい味の一杯、美味しく完食した。奥深き郡山ブラック、折を見て何軒も食べ歩いてみたい。
<店舗データ>
【店名】 中華そば ますや 駅前店
【住所】 福島県郡山市駅前2-1
【最寄】 JR東北本線「郡山駅」西口徒歩2分