先日、大田市民会館の耐震計画について市民説明会が開催されたところです。
市はこれを皮切りに、市民の皆様の議論を深めていただき、その結論を見極めながら最終的に市と市議会で判断すると言っています。
今のところ計画は白紙で、補強又は新築の両方が考えられるという方向性を持っています。
補強か新築を議論するには判断材料が必要です。 そこで、昨日の市民説明会で用いられた大田市作成の資料をもとに、
私が補足した資料をUP致します。 少し長くなりますが、熟読していただき議論の輪に積極的に参加頂きたいと思っています。
このような重要な判断は市民の皆様が積極的に関わるべきだと考えています。 どうぞ、よろしくお願いいたします。
【長くなり、また、見難くなり申し訳ありません。】
1.これまでの経過
・平成21年3月 大田市建築物耐震改修促進計画策定
・平成21年7月~11月 大田市民会館の耐震診断の実施
・平成22年3月 大田市民会館耐震補強設計委託事業を予算化(7,100千円)
・平成22年6月 大田市民会館耐震補強計画について公表
(来年4月からの大ホールの予約停止)
・平成22年7月 大田市民会館耐震補強計画業者委託(~平成22年12月)
・平成22年10月 大田市民会館耐震補強計画中間報告
2.大田市民会館耐震補強計画の概要
(1)補強後の目標値
大田市民会館全体を30のゾーンと階層に分け、66ヵ所を耐震診断した結果、
震度6強~7程度の規模の地震に対して倒壊または崩壊する危険性が高い
Is値0.3以下が22ヵ所、最低のIs値は0.03が2ヵ所あるということが判明しました。
耐震診断の結果:大田市民会館のIs値=0.03(診断箇所において0.03~4.10)
Is値とは構造耐震指標のことをいい、地震力に対する建物の強度、靭性(じんせい:変形能力、粘り強さ)を考慮し、
建築物の階ごとに算出されます。
「建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)」の告示(旧建設省告示 平成7年12月25日 第2089号)
によると、震度6強~7程度の規模の地震にたいするIs値の評価については以下の様に定めています。
Is値が0.6以上 倒壊し、又は崩壊する危険性が低い
Is値が0.3以上0.6未満 倒壊し、又は崩壊する危険性がある
Is値が0.3未満 倒壊し、又は崩壊する危険性が高い
大田市民会館は耐震計画によりIs値0.75 を目指す。
震災時の避難場所として使用可能にするため
地震に対して倒壊又は崩壊の危険性が低いとされる0.6の1.25倍
(1.25倍は国土交通省の避難所における指針を適用した)
(2)耐震補強工事をした場合の概要・概算費用(税抜き)
1)事務所棟(ゾーン1)
事務所等に関しては、壁や鉄骨による内部からの補強とアルミや鉄骨などの部材による
ブレースによる外部からの補強が考えられています。
以下の案1.~5.の中から1案を選択する方向性ですが、組み合わせも可能ということです。
それぞれに、利点と欠点があり、金額の差もあることから判断が難しいポイントでもあります。
市民会館が文化施設であり見た目にも良いこと、また、事務所で仕事を続けながら補強できることなどから
行政側は案4.が最良ではないかという方向性を示しています。
◆内部補強(RC壁や鉄骨枠などによる2案)
■案1.「RC壁増設補強」概算費:33,600千円
特徴:コンクリート壁で耐震性が高い、自重があり基礎への負担がある、
開口部が取りにくい
施工性:難 デザイン性:小 耐候度:中
(施工性:工期の長短、既設の撤去復旧の手間の多少を示す)
(デザイン性:採光を意匠的に確保できるか否かを示す)
(耐候性:部材等の強度維持における難易度を示す)以下同じ
■案2.「鉄骨枠付きブレース補強」概算費:55,200千円
特徴:軽量で施工できる、開口部が広く取れる
施工性:中 デザイン性:中 耐候度:中
◆外部補強(アルミや鉄骨ブレースなどによる3案/
内部の継続使用が部分的に可、バルコニーを撤去する必要がある)
■案3.「外付けKT鉄骨ブレース補強」概算費:56,800千円
特徴:鉄骨を外部に使用した外付け工法、外付工事のため内部の施行がない
施工性:良 デザイン性:中 耐候度:小
■案4.「外付け枠付きブレース補強」概算費:86,000千円
特徴:アルミ材を使用した外付け工法で軽量で耐候性大、外付工事のため内部の施行がない
施工性:良 デザイン性:大 耐候度:大
■案5.「PCa外フレーム補強」概算費:66,800千円
特徴:外付け工法で仕上げが自由に選択できる、耐震壁設置による基礎・杭など必要外付工事のため内部の施行がない、
施工性:難 デザイン性:中 耐候度:中
2)ホール棟(ゾーン2)屋根ブレースと壁ブレースによる補強
※大ホールの補強については、天井裏全面に鉄骨補強が必要となるため、施工上、
大ホールの中をすべて空にすることになる。そのため、客席椅子、舞台機構、音響設備及び舞台照明については、
大ホールから撤去することになる。
また、客席椅子、客席床、ステージ床については、天井裏補強のための足場をホールの舞台と床全面に組むため、
全面更新及び改修が必要となる。
舞台機構、音響設備、照明設備についても一度撤去して、工事終了後、改めて搬入・設置する為、使用できるもの
は引き続き使用し、老朽化したものを更新することになる。
【工種】 【設計額(千円)】 【摘 要】
耐震補強 184,900 大ホールの天井衰全面に鉄骨で補強 【詳細】剛床ブレースにて補強し、かつ、鉄骨枠付きブレースにて補強する
客席椅子 119,200 全面更新(1036席)【詳細】天井裏補強用の足場敷設による撤去搬出・搬入設置費が新設とほぼ同額の為
客席床貼 12,600 全面改修 【詳細】天井裏補強用の足場敷設による改修が必要な為
ステージ床貼 16,300 全面改修 【詳細】天井裏補強用の足場敷設による改修が必要な為
舞台機構 160,300 吊物、幕外 【詳細】 緻帳はクリーニング後再使用、反響板は塗装後再使用、ワイヤー、ロープ及び幕類は更新
音響設備 183,500 音響機器、各種スピーカー外 【詳細】操作卓はオーバーホール後再使用、
アンプ・スピーカーの生産終了品については更新 周辺機器(MD,CDなど)は老朽化したものを更新
照明設備 206,500 照明機器、各種ライト外 【詳細】操作卓及び調光卓は老朽化のため更新、照明機器は老朽化したものを更新
映写設備 15,000 更新(機器老朽化)【詳細】老朽化により更新
外壁改修 38,400 前回平成3年度改修 【詳細】 耐久性向上の為、クッラク箇所の修繕等と再塗装
屋根改修 55,200 前回平成3年度改修 【詳細】耐久性向上の為、雨漏り防止の為、最上部の屋根の改修
計 991,900
(3)機能強化工事
利用団体、管理団体などからの要望により、市民会館の機能強化を考えた場合の概算費
必要なものと不必要なものを判断する必要があります。
【場所】 【概算費(千円)】 【備 考】【詳 細】
渡り廊下 7,380 ロビーから直接大ホール袖へ入場できる廊下を設置する為、中庭部分に16.4㎡の増築
倉庫 11,810 中ホールでイベント等の開催にあたり、備品収納用の倉庫を中庭部分に31.5㎡の増築
エレベーター 19,500 渡り廊下・倉庫の増築により全面改修(市民センター既設分)
ステージ(ぶどう棚) 14,100 舞台袖の広さ確保の為、舞台装置やバトンなどが吊られているぶどう棚の吊物を電動化
ステージ袖 6,540 搬入口に風徐、庇取付、床仕上げ、スピーカーネット改修
楽屋 220 床仕上げ替
大ホール非常口 1,470 昭和医院側の非常口外部階段をスロープに変更
大ホール・舞台床 2,000 大ホール及び舞台に難聴者用の磁気ループを埋設
大ホール 7,300 映写室、音響室、照明室、及びピン・シーリング・サイドスポット室の改修
ロビー便所 5,720 女子便所の洋便器化、男女便所共センサー照明化
ロビー 3,000 ステージの状況をロビーにて確認できる映像設備
会議室 8,020 ブラインド新設、開戸を引戸に変更、LAN設備
会議室 3,580 非常照明、非常放送改修
展示室 860 床のフラット化
会議室用便所 4,790 男子及び女子便所の区別化
燃料タンク 3,300 1000L埋設
楽屋 28,800 外部に96平米を新築
スタジオ 31,200 外部に66平米を新築(33平米×2室)
計 218,390
合計:218,390千円(すべての希望をかなえようとした場合の総計)
(4)総事業費(税込)
1,368,455千円
((2)の1)+2)+(3)+実施設計・監理)×1.05
事務所棟の補強は、案④86,000千円(税抜き)として
(5)工期
概ね20ケ月(実施設計8ヶ月+施工12ヶ月)この間、使用は休止
(6)耐用年数
鉄筋コンクリート造の耐用年数は通常60年といわれている(市民会館は築47年経過)。
耐震補強工事の実施により耐用年数は増えないが、保全工事を行うなど適正に管理すれば、
今後も20年程度は使用可能と想定。
実際にコンクリート強度等は調査により不足なしとの診断。
3.大田市民会館の新築を想定した考え方
(1)概算金額算定の考え方
益田の島根県芸術文化センター「グラントワ」の総事業費をもとに算出
根拠:
1.グラントワの総事業費:168億円
2.建築延面積:19,252平米
3.1及び2より建築費㎡の単価を算出:820千円/平米
4.設計費や撤去費用等を鑑みて、それを上乗せ:1,000千円/平米
5.大田市民会館の現在の建面積に当てはめると:1,000千円×3,500平米=35億円
6.どういう新築要望になるか不透明なので建面積に500平米(5億円分)を上乗せ
7.想定の金額:40億円
(2)新築の工期
概ね5ケ年(基本構想~実施設計3ヶ年+施工2ヶ年)
この間、使用は休止(既存の場所に建築の場合、新たな場所に建築の場合、いずれも)
(3)耐用年数
新築なので税法上の耐用年数は60年ほど。
4.財政的な問題について
①耐震補強工事 想定総事業費:13億7千万円
②新築工事 想定総事業費:40億円
いずれにしても補助金が5千万円。あとは起債でまかなう。
起債は過疎債が充当できないため、合併特例債を利用
(合併特例債:充当率が95%で、その元利償還金の最大70%は後年度の普通交付税の基準財政需要額に算入される)
①耐震補強工事の場合
起債:想定総事業費(13億7千万円)- 補助金(5千万円)× 95%
=12億5千4百万円
市の返済額:12億5千4百万円の30%
=3億7千6百万円
一般会計負担分=6千6百万円
市の負担:4億4千2百万円
②新築工事の場合
起債:想定総事業費(40億円)- 補助金(5千万円)× 95%
=37億5千3百万円
市の返済額:37億5千3百万円の30%
=11億2千6百万円
一般会計負担分=1億9千8百万円
市の負担:13億2千4百万円
いずれにせよ起債するということ=借金するということ。
後年度の普通交付税バックがあるにせよ財政を圧迫する可能性があるので慎重に考える必要がある。
5.今後の進め方について
(1)市民説明会の開催
耐震補強計画についての概要説明。
12月14日に昼夜2回に分けて実施済み。今後追加開催の予定無し。
(2)市民、利用者、有識者などによる検討会(ワークショップ)の開催
耐震補強計画を踏まえるとともに中長期的な市民会館のあり方について検討。
12月から1月にかけて4回の開催を予定。
事前の申し込みは無く、誰でも参加可能。
*第1回検討会
日時 平成22年12月22日(水)午後7時より
場所 大田市民会館2階第1会議室