Romarin フランスの草の根となって

住み始めた時は腹がたち、住み慣れると離れがたいフランスにすみ、45年の年月がたちました。日々のことなど綴ります。

葉室麟

2019年02月07日 | 読書
葉室麟の「星火瞬く」を読む。
今までこの作家を知らなかったことが残念であったが、今知ることができて大変にうれしい。

幕末の様子を、フィリップ・フランツ・シーボルトの息子、アレクサンダー・シ-ボルトの目から見て書いた小説である。
小説というか、史実といってもいいと思う。「バクーニン」というロシアの哲学者であり、煽動家の存在がこの小説の中で大きいが、この人のことを全く知らなかったので、実在なのかどうか調べてみたところ、非常に有名なロシア人であった。「無政府主義」を一貫し、そのために人生をかけた人で、牢に閉じ込められ、死ぬほどの苦痛を味わわされ、シベリアに流刑となって脱走。そのエネルギーのすごさに圧倒される思いだ。

葉室氏の小説で描かれたバクーニンは写真を見た時に、私がイメージしていた人そのままだったのでさらに驚く。
19世紀末から20世紀にかけて世界を駆け巡って革命を起こさせることに、いや、無政府主義を貫くことに徹底していた驚くべき人を知り、胸がわくわくする。もう少し掘り下げてこの人のことを調べてみたら世界が広がるかもしれない。

宇野千代さん

2005年12月16日 | 読書
また本の話です。

宇野千代さんの「生きて行く私」を再読。
とにかく自分の思ったことをすぐ行動に起こす女性です。
その行動力たるやすばらしいものがあります。

さらに注目したいのは、決して人を縛りつけようとしない、運命の流れに身を任せている、でもその中で自分のしたいことを体を張ってしていく・・・・という読んでいてあっけにとられっぱなしの人生を送ってらっしゃる。
百歳を目前にして天寿を全うされたようです。

すばらしいフレーズをひとつ。

●人が聞いたら吹き出して笑ってしまうようなことでも、その中に、ひとかけらの幸福でも含まれているとしたら、そのひとかけらの幸福を自分の体のぐるりに張りめぐらして、私は生きていく。(中略) 幸福も不幸も、ひょっとしたら、その人自身が作るものではないのか。そして、その上に、人の心にたちまち伝染するものではないのか。とすると、自分にも他人にも、幸福だけを伝染させて、生きて行こう、とわたしは思う。

このように生きることはとっても難しいです。
でも自分が本当に幸福に思うときは他人にもその光みたいなものを発することが出来るな、と最近思います。
そういうときに人々がそれに答えるような笑顔を向けたりするときに、その幸福感が倍化します。

●人間同士のつき合いは、この心の伝染、心の反射が全部である。何を好んで、不幸な気持ちの伝染、不幸な気持ちの反射を願うものがあるか。幸福は幸福を呼ぶ。幸福は自分の心にも反射するが、また、多くの人々の心にも反射する。

差別

2005年11月19日 | 読書
またまた、「竜馬がゆく」からの抜粋です。

●二百数十年、遠州掛川から来た上士どもは土着武士の郷士を差別してきた。犬猫同然に扱ってきた。同席するのも穢れとしてきた。人間が人間を差別するとこうも人間の血を異常にするものか。

これは土佐藩のことを言っているわけですが、土佐藩は非常に上下関係、
身分の差を重んじていました。郷士は、かなり高い石高をもらっていても、
身分は上士の下であり、お殿様に謁見することが許せませんでした。

竜馬が回天の業をなそうとしているときに、この土佐藩をも抱き込んで、
薩長土をもってして、幕府を倒すことを考えていました。
ただ、そのためには土佐藩の中のこの差別感を何とかしないと成し遂げ
られないわけです。
手を組もうとしている上役である後藤象二郎が竜馬に会いに来ると知った
ときに脱藩した竜馬の仲間(郷士)が、後藤を殺そうとしたときの様子を
竜馬が心のうちで思ったのが、この抜粋した部分です。

もしかしたら、同人種の中での差別の方が、異人種の差別より、
陰湿かもしれないと思いました。

幕末の外交

2005年11月10日 | 読書
司馬遼太郎の「竜馬がゆく」を再読しています。
これは広い観点からこの幕末を見、詳しく分析した
力のはいった小説ですね。

小説と言っても、ほとんど史実に沿っているし、
作者がぜひとも言いたいことを、何度もかんで含めるように
確認しながら書いています。

その中で、薩摩藩の外交上手を書いている所があります。
うーんと考えさせられます。

「竜馬がゆく」より抜粋

●明治初年、対外交渉が複雑で、新政府はともすれば外国の横車を通さざるを得ない状態になり、西郷は政府に意見書を出した。
「外国と付き合うには、独立の体を定め、外国との約束はいちいち履行し、一事たりとも審議を誤り礼節を失ってはいけない。もし彼が条約外のことで横車を押してくれば、条理をよく説き聞かせてやり、少しも動揺恐くしてはいけない。その際もし戦の一時をおそれ、まげて彼の説に従えばついに国が崩れる。右のごとく外国と交渉するときには道をもってし、道に敗れても(戦争して敗れても)後悔はしないという覚悟でやらねばならぬ」