AKB48の旅

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陰から陽へ

2013年06月10日 | AKB
第5回選抜総選挙で何が起こったのか。どうにも全体像が掴めないまま、それでもどうにか最初に辿り着けた言葉が、「時を知る」だった。篠田さんが卒業を決めた、その心の内を思い巡らしてみての「時を知る」。前田さんがそうだったし、板野さんもそうだったけど、篠田さんの場合は、先の二人とは背景事情が異なっているように思う。

テレビ放送後半のぐずぐずのインタービューを聞いていて、今回の選挙結果を見ることで、篠田さんが卒業の最終決断をしたわけではないことは分かったけど、それでも、今回の総選挙の影響は明らかなようでもあり、たぶん速報結果を見ての決断ではなかったか。このあたりは、同じく速報を見ての、高橋さんのコメントとかも参考になるかと思う。

速報が「荒れた」最大の要因は、劇場版に投票権を付けたことに尽きると思うけど、それでも速報に現れた変化は、言わばファンの勢いみたいなものだったんじゃないか。そんなファンの声、いわば「民意」を、少なくとも上位メンバーは敏感に感じ取った。そういうことなんじゃないか。

そして速報で明らかになったこの空気感の変化は、順位的にはより穏やかなものになったとはいえ、結果発表の地上波放送で決定的となったんじゃないか。今回のフジは、あたかも心を入れ替えたようで、副音声で見てる限りはストレスは感じなかった。民放なんで、CMはやむなし。その結果、伝わるべきものがそれなりに伝わった。

空気感と言っても曖昧なものだけど、具体的な表現として、まず気づけるのが、日産スタジアムという装置かな。野外にして、7万人という圧倒的な観客の存在。この景色は、そこに立った者じゃなきゃ決して分からない何ものかだろうし、テレビでも伝わりきれてはいないと思うけど、それでもそんな絵を、メンバーは目の当たりにしたんだし、映像として地上波で流された。その絵柄が持つ圧倒的な説得性。

ここでの比較対象は、もちろん去年までの武道館ということになる。光るタマネギの大屋根の下、内部空間の1万人との違い。去年まで決して気がつけなかったけど、こうして今年と比較してみて初めて分かるのが、その閉鎖感。閉塞感とまでは言わないけど、暗い室内に籠もる情念とでも表現しようか、そこには隠れようもない「陰気」があったんだということ。このあたりは、宇野さんの言うところの「夜の世界」と等価になるんだろうか。

そしてもちろん、決定的だったのはさっしーが一位になったこと。大島さんがいみじくもスピーチで語っていたけど、去年までの重い空気、陰湿というと少し違う気もするけど、決して「陽気」ではない、その存在に気づけないまでに深く垂れ込めていた「陰気」が、さっしーが一位になることで払拭された。開放された。鮮やかに晴れ上がった。

ちょっと言い過ぎた。そこはさっしーなんだから「鮮やかに晴れ上がる」はずがないな。どこか「狐の嫁入り」的なびみょーさが残ると言い直そうか。それでも、場の空気が決定的に変わったのは明らか。日産スタジアムという「陽気」の中の絶対的承認の元で、さっしーという特別な存在が一位となる。そこに込められた変革とは、陰から陽への転換なんじゃないか。