専門医が教える「血液を正しくコントロールするための食品」 長生きのためにすべき自助努力
デイリー新潮 より 230616 新潮社
⚫︎血液はどのようにして作られるのか?
「人生は血液と共に終わる」と、健康における血液の重要性を説く東邦大学名誉教授(平成横浜病院総合健診センター)の東丸貴信氏。
前回は血液コントロールのために「これだけは守るべき4つの生活習慣」をお届けした。今回もまずは、血液に関する知識を深めることから始めよう。
⚫︎長寿のために必要な自助努力、その筆頭は「食事」
【血液を安定させる食品とは?
生命の維持に必須の血液は、そもそもどのようなメカニズムで生成されるのか。東丸名誉教授は、年代によって造血する器官は変化すると解説する。
「母親の胎内にいる初期は、肝臓や脾臓が造血します。5カ月頃に造血組織が順次萎縮していき、出産されるまでは成人期造血器官である骨髄の役目です。
その後、幼児のときは鎖骨や脛骨が造血しますが、子供では大腿骨や肋骨での造血が増えていきます。さらに加齢すると、体躯の胸骨や脊椎、骨盤、リンパ組織など。
つまり、年齢を重ねるにつれて胸骨,椎骨,骨盤での造血比率が上がるということです」
血液の55%を占める血漿は9割が水分である。残りの45%は血球(血液細胞)で、そのうち約96%は酸素や栄養などの運送を担当する「赤血球」。
残りは、細菌やウイルスなどの外敵、体内に発生したがんなど生体に対抗する「白血球」と、止血作用を持つ「血小板」だ。これらすべての血球は、造血幹細胞を基にして造られる。
造血幹細胞が分裂による増殖を繰り返して、様々な血球に分化し、成熟していくのだ。
「白血球には種類があります。骨髄芽球を経て成熟した好中球(細菌や真菌など異物を食べたりして排除する)や好酸球(寄生虫のような大きすぎて貧食できない異物を傷害させる機能)、好塩基球(自然免疫系の一部。寄生虫感染やアレルギー反応に対する体の防御にかかわる)、単芽球を経た単球(細菌などの異物を細胞内に取り込み、一部を細胞表面に提示して、免疫反応などで体の防衛を始める司令塔)、リンパ芽球から成熟したリンパ球(免疫反応でウイルスなどを攻撃排除する)です。
また、巨核芽球・巨核球を経て成熟した血球は血小板です」
こうした複雑な過程を経て造られた血液は、就寝中もくまなく血管を流れる。
さらに、それぞれの血球が持つ機能は、流れている肉体の命が尽きるまで働く。
だからこそ「血液の正しいコントロール」は、健康で長生きするための大原則に他ならない。
⚫︎血液の働きが正しくコントロールされるための食品とは
我々の体内で生成されている血液。その源はもちろん毎日の食事だ。東丸名誉教授は「血液を正しくコントロールするための食品」として以下を推奨する。
【血液を作り働かせるための食品】
〇血液を安定して働かせる食品
牛肉、豚肉、鶏レバー、アサリ、カキ、マグロの赤身、カツオ、卵黄、ひじき、ホウレンソウ、小松菜、菜の花、パセリ、干しプラム、レーズンなど
〇血液を作る作用があり原料の鉄分の吸収も高める食品
貝類、レバー、魚、牛肉、卵、牛乳、ホウレンソウの緑黄色野菜、果物、豆類、納豆、エビ、アボカドなど
「生活習慣に食事……気をつけるものが多すぎる」と感じるだろうか。しかし、東丸名誉教授は、こうした気配りこそ「人間がすべき自助努力である」と語る。
「自然界をみてください。草木も成長に必要な部分は残り、要らないものは枯れる。動物の場合は、動けなくなると死んでしまう。
この自然界では、成長や動きのない生物は消え去るようになっているのです。これは人間も同じです。
加齢に従って身体活動性は鈍くなりますが、それでも『生きている間は動き活動をしてください』と申し上げたい。
医学の進歩のおかげで、ある程度命を保つことはできます。でも生きがいのある長寿を全うするには、運動や身体(頭脳)活動などの体力維持のための自助努力が必要になります。
怪我や病気などで身体障害があっても、体力があれば十分に運動や活動はできます」
体重が数トンあるゾウでも、高齢や歯の摩耗(擦り切れ、物が噛めなくなる)を体感すると死期を悟り、本能的に“ゾウの墓場”へ向かう。トラやライオンもまた同じ。
年老いて死期を感じると狩りを止め、地面に横たわり生命の終わりを静かに待つ。
「健康な長寿を願うなら、高齢を迎えてもそうなってはいけません。歯が衰えた高齢者は食事摂取量が不十分になり、食事の意欲自体が低下しがちです。栄養吸収が悪くなることで、血液を作るために欠かせない鉄分やビタミンB12は簡単に欠乏します 。
すると血液の循環や働きに支障をきたし、身体と頭脳の活動力が落ちてきます。
これが他の病気を招く要因になり、寿命を縮めてしまう。身体活動力が失われた寝たきりになりかねません。そうならないために、栄養バランスを常に考えるなど、健康寿命を延ばすための自助努力を続けることが大切です」
取材・文/段勲(ジャーナリスト)
デイリー新潮編集部
【血流を良くして血液成分を維持するための日常習慣4つ】
1.バランスの取れた栄養摂取:野菜や魚を食べずに、ハンバーグなどの肉類や油っこいもの を食べ過ぎたり、無理なダイエットをしたりしない。赤血球の源である鉄分やビタミンB12を取り、脂質や糖分取りすぎで血液をドロドロ(固まりやすい状態)にしないこと
2.適度な運動:第二の心臓と言われる筋肉をつくる。週に5日を目標に、1日最低30分は歩行や体操などの運動をする。テレビの前で座ったまま、動くのはトイレだけといった自堕落な生活に浸らない
3.日光浴を欠かさない:太陽に体をさらす。ビタミンDやカルシウムを摂取して、骨と筋肉を丈夫にし、運動機能を維持する
4.充分な睡眠:何らかの理由でどうしても熟睡ができない場合、あまり推奨はできないが、医師の処方を受けたうえで、依存症にならない程度の睡眠薬を服用することも一つの手