“つまさきトントン”は絶対にやらないで! 専門家が教える「疲れにくい」「痛くならない」意外と知らない“靴の履き方”
文春オンライン より 230617 遠山 めぐ美
「足裏が疲れすぎて夜になると足が攣る」「足幅が広くて靴に当たりやすい」「いつもなぜか小指が痛い」……。靴の販売業に20年超従事し、現在、靴のお悩みアドバイザーをしている筆者の元には、日々、靴に関するさまざまな悩みが寄せられます。
そんな皆さんのお話を伺いながら足元を拝見すると……。たいていハッキリとした原因が見えてくるんです。決して靴そのものが悪いわけではなく、だからといって足型が悪いわけでもありません(そもそも足型の良し悪しの基準なんて無いですよね)。
では、疲れやすく、痛くなりやすい原因はいったい何なのでしょうか?
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👟“選び方”以上に大切な“履き方”
単刀直入にいうと、“正しく靴を選べていない”のではなく、“正しい靴の履き方ができていない”からなんです。
「え? 正しい靴の履き方?」
不思議に思われる方も多いかもしれませんが、実は、靴を履くという行為は単純に“靴に足を入れる”だけではダメで、守るべき手順があるんです。
靴の正しい履き方は、自分に合ったサイズをしっかり選ぶことと同じくらい、いや、場合によってはそれ以上に大事なことだと私は考えています。
それもそのはず。人間の体は、約4~6kgもある頭部が一番上にあり、内臓も左右非対称にかなりの重量があります。そんな大きな体を支える土台が足であり、靴はその土台を守る地盤のようなもの。
正しいサイズの靴を履いていたとしても、雑な靴の履き方をしてしまうと、歩行中の足はぐらぐらして、地盤がとても不安定な状態になってしまうんです。
どんな靴を選んでも「なんだか痛みがある」「疲れやすい」「いまいち履き心地が良くない」と感じる場合の原因は、正しい靴の履き方ができていないことがほとんどです。
👟“正しい靴の履き方”とは
では、正しい靴の履き方とはどのようなものなのでしょうか。
早速、手順を説明します。
可能であれば、ひも靴を用意してください。スニーカー、革靴など何でも良いです。ひもで調整できる靴を用意します。そして靴べらもご用意ください。
正しい靴の履き方の手順は以下の通りです。
(1)靴ひもを足首側から2~3個ゆるめる
(2)靴の口を大きくガバッと開ける
(3)必ず靴べらを使って足を入れる
(4)かかとをトントンと合わせる
(5)靴のベロを引っ張り整える
(6)つま先側から丁寧にひもを締めていく
(7)足首の近くは少しキツめに
(8)しっかり蝶結びをする
▶︎ポイントは“かかとを合わせて靴ひもをグッと締める”こと。
そうしないと、着地の度に靴のかかと部がグニャッと歪み、足首が不安定になってしまいますし、蹴り出す度に靴のかかと部が脱げそうになるため、足裏を目一杯広げてしまい、土踏まずが潰れ(柔軟性がなくなり)、足指の力を地面に伝えられなくなってしまいます。
かかとを合わせてひもをグッと締め、地盤をしっかりさせる。そうすることで、着地の際の足首のグラつきが減り、足指の力を地面にしっかりと伝えられる。ひいては、歩行が安定して、足・体のトラブルが減っていくわけです。
手順は多いですが、なんてことない、誰にでもできる履き方です。毎日の慣れは必要ですが、すぐに習慣化しますよ!
やってはいけない靴の履き方
(1)靴べらを使わないで靴を履く
(2)靴ひもをほどかないで結んだまま脱ぎ履きする
(3)かかとではなく、つま先をトントンする
(4)靴ひもやベルトをゆるめたまま歩行する
これらは、靴のお悩みアドバイザーとして筆者が伝えている“やってはいけない靴の履き方”です。共通するのは、靴の中で足が動いてしまう=靴と足の間に隙間が生まれる履き方だということ。
靴の中で足が動いてしまうと、先ほど挙げた歩行が不安定になる問題だけでなく、靴と足の間に生じた隙間に足が突っ込み、強い圧がかかることによる、指まわりの靴ずれやタコ、魚の目の発生につながってしまうんです。
「靴ずれができるということは、自分の足にとって“窮屈な靴”を履いているから」と考えられる方が多いですが、本当の原因はかかとに合わせて靴ひもをしっかりしめていない=靴を足にピタッと装着できていないからです。
勘違いして、靴ひもを緩めたり、1つ大きなサイズの靴を買ったりすると、さらに靴の中で足が動いてしまうことになり、悪循環に陥ってしまうので注意してください。
👟ひもなし靴の場合は?
また、スリッポンやパンプス、サンダル、ブーツなどの履き心地に悩まれる方もいらっしゃるかもしれません。そうした方々にも、まずはひも靴を正しく履くことから始めてみるのをおすすめします。
なぜなら、ひもで調整ができない靴を正しく履くのは難易度が高いから。
ひもなしの靴を正しく履く前段階として,まずは基本形として,ひも靴をしっかり正しく履く。
そうすることで、自分に合ったサイズ感がわかるようになりますし、靴を正しく履いた場合とそうでない場合の差も自覚できるようになり、ひもなし靴の選び方・履き方にも好影響がもたらされると考えられます。
ぜひ一度、かかとを合わせて靴ひもをグッと締める“正しい靴の履き方”を試してみてください。きっと、歩行がとても快適に変わったと気づいていただけるはずです!
(遠山 めぐ美)