古本ビジネスの「おかしい」を変えたいバリューブックス
石井英男 写真●篠原幸宏(バリューブックス)提供
編集●ASCII より 211209
バリューブックスは長野県上田市を拠点とする、古本売買を主な事業とする会社だ。本の売り手から倉庫に届いた本を査定し、買取金額を支払う。そうして買い取った本を、Amazonや楽天、自社のサイトを通して次の読み手に販売している。
こうした本の買取販売事業を基盤としながら、本の送り主が買取金額をNPOや大学などに寄付する仕組み「チャリボン」を運営したり、寄贈という形でも本を届けるなど、社会貢献的なサービスも展開している。
また、社会的な責任を果たす企業を認証する「B コーポレーション」(以下「B Corp」)認証の自社での取得を目指すと共に、B Corpの入門書とも言える「The B Corp Handbook」日本語版の出版にも、多くの人々と一緒に取り組んでいる。
そうした同社の取り組みに強い共感を抱いたイノラボの藤木隆司氏、青木史絵氏が、バリューブックスの創業者 兼 取締役 中村大樹氏、取締役 鳥居希氏に話を聞いた。
株式会社バリューブックス創業者兼取締役 中村大樹氏、同取締役 鳥居希氏
イノラボ 藤木隆司氏、イノラボ 青木史絵氏
また、社会的な責任を果たす企業を認証する「B コーポレーション」(以下「B Corp」)認証の自社での取得を目指すと共に、B Corpの入門書とも言える「The B Corp Handbook」日本語版の出版にも、多くの人々と一緒に取り組んでいる。
そうした同社の取り組みに強い共感を抱いたイノラボの藤木隆司氏、青木史絵氏が、バリューブックスの創業者 兼 取締役 中村大樹氏、取締役 鳥居希氏に話を聞いた。
株式会社バリューブックス創業者兼取締役 中村大樹氏、同取締役 鳥居希氏
イノラボ 藤木隆司氏、イノラボ 青木史絵氏
⚫︎あえて送料を「有料化」
藤木:はじめに、バリューブックスがどんな会社か教えてください。
鳥居:まず、どんな事業をしているか、またこれまでの事業の経緯をお話しします。当社は今年創業15年目の会社で、「日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」というミッションのもと、本の買取販売をして、「本を集めて届ける」事業をしています。
本を買い取る方法として、一般的な買取ともう1つ、買取代金を寄付金とするしくみの2種類があります。販売は主にECですが、その他に実店舗や移動販売車、卸での販売もしています。また、本を届ける方法として、販売する他に「ブックギフト」として本を寄贈する取り組みもしています。
もともとは創業者の中村大樹が大学を卒業後、手元にあった一冊の本をAmazonのマーケットプレイスで個人で販売したのが始まりでした。徐々に売り上げが伸びて規模が少しずつ大きくなり、そろそろ会社にしようかということになったのが2007年ですね。
そこから14年経った今年6月の期末の数字ですが,社員数300人超、在庫数136万点,年間買取数356万点,年間販売数293万点となっています。長野県上田市内に倉庫が5つあり,同じく上田市内に実店舗も運営しています。年間買取数が356万点となっているのですが,これは買い取ることができた本の数であって実際にお送りいただく本はその倍くらいあります。
長野県上田市にある倉庫の1つ
宅配買取サービスは「バリューブックス」と「Vaboo」の2種類あって、バリューブックスのほうは会員登録制、Vabooは会員登録なしで買取をお申し込みいただけます。
藤木:業界の中でもユニークな取り組みをされている印象があります。
鳥居:他の業者さんと違うのは、本を送っていただくときの送料の扱いでしょうか。宅配買取では、買取業者が送料を負担するのが一般的です。以前は弊社も送料を全額負担していましたが、2018年に、買取1箱につき500円を送料として査定額から差し引く形に変更しました。代わりに、買取金額は従来の1.5倍に上げています。
送料を弊社が一律で負担する場合だと、買い取れない本の送料も全体の買取価格に影響してしまいます。買い取れない本が多いほど、買い取れる本の買取価格が下がってしまうことになります。それを是正するような形で、送料有料化に踏み切りました。送料をいただき、その分、値段がつくものだけに仕分けされた本を、それまでよりも高い価格で買い取るサービスへの転換です。
弊社には、1日2万冊の本が届きます。そのうち買い取ることができているのは半分くらいで、もう半分は値段をつけて買い取ることができておらず、そこを改善したいという長年の課題がこのサービス変更の背景にはあります。
弊社が買い取れるのは、ECで販売できる本です。具体的には、状態が良かったり、ECでの販売時に必要なISBN(国際標準図書番号)がついている本ですね。これらは、お手元で比較的簡単に判断いただけると思いますが、それ以外に買取価格を決める大きな要素として、中古市場での需要と供給の関係があります。
たとえば2年前のベストセラーなどの場合,売りたい人が多すぎて,中古市場で供給過多になっていて,値段がつかなかったりすることもあります。本の状態やISBNは手元でご判断いただけますが,市場での需要と供給は本そのものを見ただけでは判断が難しいと思います。
そこで、送料有料化とあわせて弊社の買取サービスの機能として2018年にリリースしたのが、ISBNや本のタイトルを使った「おためし査定」です。その時点では、1冊ずつ買取価格を調べるものでしたが、翌年にリリースした新機能の「本棚スキャン」では、本棚に並んだ本をスマートフォンで撮影するだけで、本の暫定的な査定が一度にまとめてできるようになりました。少しでも簡単に、値段のつくものだけを選んで買取サ ービスをご利用いただけるようにするのが意図ですね。
⚫︎本棚スキャン。本棚に並んだ本の写真をとるだけで買取金額の目安がわかる
業界構造を変えなければならない
中村:古本買取のビジネスの課題として上がってくるのが、買い取れない本が送られてくることです。そもそも買い取れなかった本が古紙のリサイクルに回るのは同じなのに、わざわざ売りたい方のご自宅から弊社まで届けてもらってしまうことで古紙回収までの動線が伸びてしまうという課題があります。
「なんでも送ってください、送料無料ですよ」というほうがユーザーの反応は良いので、弊社も含めて業界全体がそっちの方向にふれていたんですが、本当は環境的にもビジネス的にもあまりよくないんじゃないかと思って。それで思いきって送料をいただいて、買い取れない本を処分するためのコストがかかってるということをユーザーに認識していただくことを始めたんです。
そこで、本をたくさん送りたいという方が、売れる本と売れない本をどう仕分ければいいのかというときにテクノロジーの力で解決できないかなと。本棚の写真を1枚撮るだけで仕分けできる仕組みができたらいいよね、ということで「本棚スキャン」を作ったという流れです。
僕らとしては買い取れない本にかかるコストが減ると、ユーザーへの還元率も上げていけると考えています。一見ユーザーに反応してもらえる「無料」とか「便利」という訴求と、実際の構造上は負荷がかかって、回り回ってユーザーの買取金額が安いことになってしまう業界構造をなんとか変えていきたいという取り組みの一環です。
藤木:業界全体のやり方に抗うような方法は勇気が必要だったんじゃないでしょうか。
中村:そうですね。社内からも反対されたし、数字的にも大きく下がってしまったんですけど、10年以上も解決できないでいた、「どうしても買い取れない本が入ってきてしまう」という課題に取り組めるんじゃないかなと思ったんです。
弊社も含めて、よく「古本の買取金額が安い」と言われる大きな要因はそこにあるんじゃないかと思っていて。弊社からすると大して儲かってないんだけど、ユーザーからすれば1000円で売れるはずの本を100円で買い取られるなんておかしいと思われる。その背景にはたくさんの売れない本があり、そこには送料と人件費がかかってしまっているんですよ。
それは送料の有料化だけではまだ改善できていなくて、今は「査定手数料」をいただくことも検討しています。買い取れる本も買い取れない本も人件費は等しくかかってくるので。そのぶん買い取れる本は今より高く買い取ります。
そうしてリアルな価格構造をサービスに反映させることで、ユーザーが正しい行動をしやすくなるところがあると思うんですよね。ユーザーへの還元率は上げたいけど、どこにコストがかかるかというのは言っていかなければと思っています。
⚫︎本の買取代金を寄付する「チャリボン」
鳥居:仕入れ方法のひとつに、応援したいNPOや大学に買取代金を寄付できる「チャリボン(charibon)」というものもあります。2010年から開始して、累計寄付金額が今年8月で6億円を超えました。
たとえば藤木さんが弊社に本を送っていただく場合、通常の買取であれば藤木さんに買取代金をお支払いしますが、チャリボンでは買取と同じ査定基準で出した買取代金を、藤木さんからの寄付金として、チャリボンのパートナーの中から藤木さんが選んだNPOや大学にお届けします。その後の本は買取の場合と同じように販売しています。
ありがたいことに、チャリボンの選択肢があることで本を送ってくださる方もいます。大学ともパートナーシップをたくさん結ばせていただいているので、学術書や専門書を送っていただけるということもありますね。
⚫︎より良い本の循環を目指す試み
本の販売は主にECサイトですが、昨年から買取サービスと同じ自社サイト内でも販売を始めています。自社サイトでは、古本・新刊書籍の販売をしたり、本の管理ツール「ライブラリ機能」もあります。本を売るのも買うのも、本を好きな方にとってより使いやすいサービスにしていきたいと思っています。
実店舗の「本と茶『NABO』」でも、古本・新刊書籍を販売しています。また、会社のミッションのもと、「ブックバス」という移動販売車での販売をしたり、少しですが、少年院の寮の図書も整備したりしています。
{上田市にあるバリューブックスの実店舗「本と茶『NABO』」}
⚫︎ブックバスで移動販売も行なっている
先ほどお話しした買い取れる本を送っていただくための取り組みと共に、買い取れなかった本を生かす取り組みも行なっています。「ブックギフト(Book Gift Project)」という形で小学校や保育園などへ寄贈することから始め、最近では、「捨てたくない本」プロジェクトと名付け、「バリューブックスラボ」というNABOと同じエリアにあるもう1つの実店舗で小説、絵本、コミックなどを手頃な価格で販売したり、様々なパートナーとその生かし方を模索しています。また、古紙回収される本の一部を「本だった紙」という独自の再生紙にして、それをノートにアップサイクルする試みも始めています。
{本を寄贈するブックギフトプロジェクト
本から再生された紙を使った「本だったノート」}
また、自分たちが二次流通の本を使って事業をさせてもらっているので、本の作られる生態系に何かできることがあるのではと考え、「VALUE BOOKS ECOSYSTEM(バリューブックス・エコシステム)」も2017年に始めました。出版社さんと提携して、その出版社の本を弊社が買い取って販売した場合、売上の3割を出版社に還元するという取り組みです。現在、4社の出版社さんと提携しているんですが、全体で平均すると半分くらいしか買い取れないという状況の中、こちらの4社の出版社さんの書籍に関しては9割以上の本を買い取ることができていることに気づきました。中古でも値崩れせず、長く読み継がれる本をつくっている出版社に利益を還元することで、廃棄しなければならない本を減らし、本がより良く循環する構造をつくることがねらいです。
⚫︎「B Corp」認証取得に向けた取り組み
藤木:社会貢献とビジネスを両立させているバリューブックスでは、「Bコーポレーション(B Corp)」という新しい企業認証の取得に向けて動いているとも伺っています。B Corpとはどういう認証なんでしょうか?
鳥居:B Corpとは、株主だけでなくて環境や社会、すべてのステークホルダーに対してちゃんと成果を出していこう、利益を追求していこうという取り組みで、2006年に設立されたアメリカのB Labという非営利組織が認証する民間の認証制度です。日本でB Corpを取得した企業はまだ7社しかありませんが(2021年11月末日現在)、世界では4000社以上が認証されています。今では認証制度を超えた世界的ムーブメントになっていて、特にパンデミック以降、B Corp認証を取得する企業が増えています。
B Corporation 公式サイトより
⚫︎世界では4000社以上が認証されているが、日本企業はまだ7社のみ(同上)
弊社としても、B Corpには自分たちの価値観が包括的に網羅されているので、会社の指針となるであろうと認証の取得を進めているんですけれども、自分たちだけではなく、よりそういう仲間が増えていったらいいなということで、B Corpの入門書とも言える『The B Corp Handbook, Second Edition: How You Can Use Business as a Force for Good』の日本語版出版に向けて動いています。
そこで、送料有料化とあわせて弊社の買取サービスの機能として2018年にリリースしたのが、ISBNや本のタイトルを使った「おためし査定」です。その時点では、1冊ずつ買取価格を調べるものでしたが、翌年にリリースした新機能の「本棚スキャン」では、本棚に並んだ本をスマートフォンで撮影するだけで、本の暫定的な査定が一度にまとめてできるようになりました。少しでも簡単に、値段のつくものだけを選んで買取サ ービスをご利用いただけるようにするのが意図ですね。
⚫︎本棚スキャン。本棚に並んだ本の写真をとるだけで買取金額の目安がわかる
業界構造を変えなければならない
中村:古本買取のビジネスの課題として上がってくるのが、買い取れない本が送られてくることです。そもそも買い取れなかった本が古紙のリサイクルに回るのは同じなのに、わざわざ売りたい方のご自宅から弊社まで届けてもらってしまうことで古紙回収までの動線が伸びてしまうという課題があります。
「なんでも送ってください、送料無料ですよ」というほうがユーザーの反応は良いので、弊社も含めて業界全体がそっちの方向にふれていたんですが、本当は環境的にもビジネス的にもあまりよくないんじゃないかと思って。それで思いきって送料をいただいて、買い取れない本を処分するためのコストがかかってるということをユーザーに認識していただくことを始めたんです。
そこで、本をたくさん送りたいという方が、売れる本と売れない本をどう仕分ければいいのかというときにテクノロジーの力で解決できないかなと。本棚の写真を1枚撮るだけで仕分けできる仕組みができたらいいよね、ということで「本棚スキャン」を作ったという流れです。
僕らとしては買い取れない本にかかるコストが減ると、ユーザーへの還元率も上げていけると考えています。一見ユーザーに反応してもらえる「無料」とか「便利」という訴求と、実際の構造上は負荷がかかって、回り回ってユーザーの買取金額が安いことになってしまう業界構造をなんとか変えていきたいという取り組みの一環です。
藤木:業界全体のやり方に抗うような方法は勇気が必要だったんじゃないでしょうか。
中村:そうですね。社内からも反対されたし、数字的にも大きく下がってしまったんですけど、10年以上も解決できないでいた、「どうしても買い取れない本が入ってきてしまう」という課題に取り組めるんじゃないかなと思ったんです。
弊社も含めて、よく「古本の買取金額が安い」と言われる大きな要因はそこにあるんじゃないかと思っていて。弊社からすると大して儲かってないんだけど、ユーザーからすれば1000円で売れるはずの本を100円で買い取られるなんておかしいと思われる。その背景にはたくさんの売れない本があり、そこには送料と人件費がかかってしまっているんですよ。
それは送料の有料化だけではまだ改善できていなくて、今は「査定手数料」をいただくことも検討しています。買い取れる本も買い取れない本も人件費は等しくかかってくるので。そのぶん買い取れる本は今より高く買い取ります。
そうしてリアルな価格構造をサービスに反映させることで、ユーザーが正しい行動をしやすくなるところがあると思うんですよね。ユーザーへの還元率は上げたいけど、どこにコストがかかるかというのは言っていかなければと思っています。
⚫︎本の買取代金を寄付する「チャリボン」
鳥居:仕入れ方法のひとつに、応援したいNPOや大学に買取代金を寄付できる「チャリボン(charibon)」というものもあります。2010年から開始して、累計寄付金額が今年8月で6億円を超えました。
たとえば藤木さんが弊社に本を送っていただく場合、通常の買取であれば藤木さんに買取代金をお支払いしますが、チャリボンでは買取と同じ査定基準で出した買取代金を、藤木さんからの寄付金として、チャリボンのパートナーの中から藤木さんが選んだNPOや大学にお届けします。その後の本は買取の場合と同じように販売しています。
ありがたいことに、チャリボンの選択肢があることで本を送ってくださる方もいます。大学ともパートナーシップをたくさん結ばせていただいているので、学術書や専門書を送っていただけるということもありますね。
⚫︎より良い本の循環を目指す試み
本の販売は主にECサイトですが、昨年から買取サービスと同じ自社サイト内でも販売を始めています。自社サイトでは、古本・新刊書籍の販売をしたり、本の管理ツール「ライブラリ機能」もあります。本を売るのも買うのも、本を好きな方にとってより使いやすいサービスにしていきたいと思っています。
実店舗の「本と茶『NABO』」でも、古本・新刊書籍を販売しています。また、会社のミッションのもと、「ブックバス」という移動販売車での販売をしたり、少しですが、少年院の寮の図書も整備したりしています。
{上田市にあるバリューブックスの実店舗「本と茶『NABO』」}
⚫︎ブックバスで移動販売も行なっている
先ほどお話しした買い取れる本を送っていただくための取り組みと共に、買い取れなかった本を生かす取り組みも行なっています。「ブックギフト(Book Gift Project)」という形で小学校や保育園などへ寄贈することから始め、最近では、「捨てたくない本」プロジェクトと名付け、「バリューブックスラボ」というNABOと同じエリアにあるもう1つの実店舗で小説、絵本、コミックなどを手頃な価格で販売したり、様々なパートナーとその生かし方を模索しています。また、古紙回収される本の一部を「本だった紙」という独自の再生紙にして、それをノートにアップサイクルする試みも始めています。
{本を寄贈するブックギフトプロジェクト
本から再生された紙を使った「本だったノート」}
また、自分たちが二次流通の本を使って事業をさせてもらっているので、本の作られる生態系に何かできることがあるのではと考え、「VALUE BOOKS ECOSYSTEM(バリューブックス・エコシステム)」も2017年に始めました。出版社さんと提携して、その出版社の本を弊社が買い取って販売した場合、売上の3割を出版社に還元するという取り組みです。現在、4社の出版社さんと提携しているんですが、全体で平均すると半分くらいしか買い取れないという状況の中、こちらの4社の出版社さんの書籍に関しては9割以上の本を買い取ることができていることに気づきました。中古でも値崩れせず、長く読み継がれる本をつくっている出版社に利益を還元することで、廃棄しなければならない本を減らし、本がより良く循環する構造をつくることがねらいです。
⚫︎「B Corp」認証取得に向けた取り組み
藤木:社会貢献とビジネスを両立させているバリューブックスでは、「Bコーポレーション(B Corp)」という新しい企業認証の取得に向けて動いているとも伺っています。B Corpとはどういう認証なんでしょうか?
鳥居:B Corpとは、株主だけでなくて環境や社会、すべてのステークホルダーに対してちゃんと成果を出していこう、利益を追求していこうという取り組みで、2006年に設立されたアメリカのB Labという非営利組織が認証する民間の認証制度です。日本でB Corpを取得した企業はまだ7社しかありませんが(2021年11月末日現在)、世界では4000社以上が認証されています。今では認証制度を超えた世界的ムーブメントになっていて、特にパンデミック以降、B Corp認証を取得する企業が増えています。
B Corporation 公式サイトより
⚫︎世界では4000社以上が認証されているが、日本企業はまだ7社のみ(同上)
弊社としても、B Corpには自分たちの価値観が包括的に網羅されているので、会社の指針となるであろうと認証の取得を進めているんですけれども、自分たちだけではなく、よりそういう仲間が増えていったらいいなということで、B Corpの入門書とも言える『The B Corp Handbook, Second Edition: How You Can Use Business as a Force for Good』の日本語版出版に向けて動いています。
B Corp自体がアメリカの社会や法律、文化をもとにつくられている制度なので、日本の文脈に落とし込んで実装できるような形にしたいと思い、多くの方にご協力いただいて一緒にやっています。
具体的には、黒鳥社さんと共同で「あたらしい会社の学校『B Corpハンドブック翻訳ゼミ』」を立ち上げ、約30人の方達とB Corpについて様々なトピックでの議論をしながら、翻訳に取り組んでいます。(ゼミ自体は2021年6月に終了)
B Corpの入門書とも言えるハンドブック Amazonより
青木:私たちイノラボでもSDGsに取り組んでいるんですが、SDGsに対する企業の取り組みという点では、バリューブックスさんがやられていることが理想的だなと感じます。
B Corpの入門書とも言えるハンドブック Amazonより
青木:私たちイノラボでもSDGsに取り組んでいるんですが、SDGsに対する企業の取り組みという点では、バリューブックスさんがやられていることが理想的だなと感じます。
「日本および世界中の人が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」という理念をもとに、リユースやリサイクルによって社会に貢献し、かつ、利益もあげている。理念、社会貢献、利益のすべてをそろえるためには何かしらの仕掛けが必要ではないかと思っていたんです。
鳥居:私たちが理想かはわかりませんが……B Corpがまさにそれを目指す指針ではないかと思います。B Corpの話でよく「トリプルボトムライン」と言われるんですね。
鳥居:私たちが理想かはわかりませんが……B Corpがまさにそれを目指す指針ではないかと思います。B Corpの話でよく「トリプルボトムライン」と言われるんですね。
財務、環境、社会。その3つのボトムラインを、すべてポジティブにすることが求められると。実際、B Corpのアセスメントの中には、売上などの数字を出すところもあるんですね。企業として、そうした取り組みをすること自体が持続可能でなければいけないということが重視されているわけです。
ただ、実際にやっていて気づいたのは、たとえば先ほどのブックギフトなどのプロジェクトは「社会的インパクトを出そうとして作った」より、「自分たちの事業の困り事を解決しようとして作った」というもので、それをやっていくことでなんとか自分たちの事業が続くようにしている。結果、価値が出せているのであればうれしい。この順番は自分たちにとっては大切なんじゃないかなと思います。
⚫︎B Corpコミュニティを広げていきたい
藤木:一方で、B Corpの日本での知名度はまだ低く、ゼミを通じて広げていこうという御社の取り組みは素晴らしいと思います。今後、たとえばサポートの枠を広げたり、協議会のように集まりを拡大したりといった予定はありますか?
鳥居:弊社が、というよりは、ゼミから始まったコミュニティが大きくなってきているんですよね。おかげでBインパクトアセスメントの勉強会にはゼミ参加者以外の方もたくさん参加してくださって。そういう形で、お互いに情報共有することで相談しあったりコンサルしあったりができていくといいかなと。自律型の形になっていったらいいなと、なんとなく思っています。
藤木:エシカルの概念も日本でも少しずつ根付きました。B Corpも関心がある会社同士がお互いに助けあう形が適しているように感じます。
鳥居:B Corpはひとつのムーブメントであるということもあり、場としてのコミュニティをそこに携わる人たちと共に育んでいくことがとても重要だと思っています。先日開催した勉強会にも、既に認証を取得されている方や、申請をサポートしている方に入っていただいたり、いろんな段階での経験や知識を持つ方が知見を共有しあっています。
ただ、実際にやっていて気づいたのは、たとえば先ほどのブックギフトなどのプロジェクトは「社会的インパクトを出そうとして作った」より、「自分たちの事業の困り事を解決しようとして作った」というもので、それをやっていくことでなんとか自分たちの事業が続くようにしている。結果、価値が出せているのであればうれしい。この順番は自分たちにとっては大切なんじゃないかなと思います。
⚫︎B Corpコミュニティを広げていきたい
藤木:一方で、B Corpの日本での知名度はまだ低く、ゼミを通じて広げていこうという御社の取り組みは素晴らしいと思います。今後、たとえばサポートの枠を広げたり、協議会のように集まりを拡大したりといった予定はありますか?
鳥居:弊社が、というよりは、ゼミから始まったコミュニティが大きくなってきているんですよね。おかげでBインパクトアセスメントの勉強会にはゼミ参加者以外の方もたくさん参加してくださって。そういう形で、お互いに情報共有することで相談しあったりコンサルしあったりができていくといいかなと。自律型の形になっていったらいいなと、なんとなく思っています。
藤木:エシカルの概念も日本でも少しずつ根付きました。B Corpも関心がある会社同士がお互いに助けあう形が適しているように感じます。
鳥居:B Corpはひとつのムーブメントであるということもあり、場としてのコミュニティをそこに携わる人たちと共に育んでいくことがとても重要だと思っています。先日開催した勉強会にも、既に認証を取得されている方や、申請をサポートしている方に入っていただいたり、いろんな段階での経験や知識を持つ方が知見を共有しあっています。
まだこちらがアドバイスできるような段階ではありませんが、弊社がそうした場をつくっていきたい、ファシリテートしていきたいという感覚はもっていますね。
藤木:日本におけるB Corpもこれから広がっていきそうですね。
鳥居:認証を取る企業が増えるのも大事だと思うんですが、その過程で企業が変容していくことが大事だと思うんですよね。ゼミで翻訳してこれから出版するハンドブックの第2版で強調されているのは「Equity, Diversity, and Inclusion」。
藤木:日本におけるB Corpもこれから広がっていきそうですね。
鳥居:認証を取る企業が増えるのも大事だと思うんですが、その過程で企業が変容していくことが大事だと思うんですよね。ゼミで翻訳してこれから出版するハンドブックの第2版で強調されているのは「Equity, Diversity, and Inclusion」。
今だとJustice(正義、公正)も入ってくると思うんですけど、そういったことを日本の社会でやらないと本当にまずい。企業がちゃんとやっていく必要がある。そういった考えを共有して、それぞれが自ら変容を起こしたり、その変容をサポートし合っていくのがムーブメントなんじゃないかと感じています。
⚫︎多様な人が存在するのがバリューブックス
中村:僕はそんなに大きな社会の動きは理解していないし、それを意識してふだん活動していることもないんです。どちらかというと自分たちのビジネスをやっていく過程で、「ここなんかおかしいよね」とか、「ここで苦しんでる人がいるよね」というように、自分たちにとって気持ち悪い状態があることが好きじゃないので、発見して解決してみようとしているだけなんですよね。
そうすると違うところでまた問題がでてきて、そっちはどうしようかと、あたふたしながらやっている。ちょっとずつ良くなっているのか、問題が変わっただけなのかわからないんですが、それをあと何年か繰り返して、罪悪感なくビジネスをやっていけるようになるといいなとは思ってはいます。でも、今は全然その罪悪感は消えていないというか、むしろ深まってることのほうが多いので、「いい会社ができました」という気持ちは全然ありません。
たとえば従業員が単純に幸福そうに働いているかとか、お客さんの声を受けて、「確かに自分たちが悪いところが多かったね」とか、そういうところですよね。そういう部分でSDGsとの整合性が取れていけたらいいなとは思いますが、社員全員が社会の動きと会社の動きを両方感じ取っているというよりは、会社の中に多様な人が存在しているというのが今の自分たちなのかもな、と思っています。
⚫︎多様な人が存在するのがバリューブックス
中村:僕はそんなに大きな社会の動きは理解していないし、それを意識してふだん活動していることもないんです。どちらかというと自分たちのビジネスをやっていく過程で、「ここなんかおかしいよね」とか、「ここで苦しんでる人がいるよね」というように、自分たちにとって気持ち悪い状態があることが好きじゃないので、発見して解決してみようとしているだけなんですよね。
そうすると違うところでまた問題がでてきて、そっちはどうしようかと、あたふたしながらやっている。ちょっとずつ良くなっているのか、問題が変わっただけなのかわからないんですが、それをあと何年か繰り返して、罪悪感なくビジネスをやっていけるようになるといいなとは思ってはいます。でも、今は全然その罪悪感は消えていないというか、むしろ深まってることのほうが多いので、「いい会社ができました」という気持ちは全然ありません。
たとえば従業員が単純に幸福そうに働いているかとか、お客さんの声を受けて、「確かに自分たちが悪いところが多かったね」とか、そういうところですよね。そういう部分でSDGsとの整合性が取れていけたらいいなとは思いますが、社員全員が社会の動きと会社の動きを両方感じ取っているというよりは、会社の中に多様な人が存在しているというのが今の自分たちなのかもな、と思っています。