五輪塔の記事について
福井県越前町で60年以上前に見つかっていた五輪塔の地輪部に織田氏の祖先の名が刻まれているのが確認されたとの記事を見ました。
五輪塔がメディアで取り上げられ記事になるのは珍しいことで、石造ファンとしてはたいへん嬉しいことだと思います。
記事によると、織田信長の祖先とされる織田親真(ちかざね)という人物の墓だということです。縦横20㎝程の地輪側面に「喪親真阿聖霊/正応三年庚刀二/月十九日未尅」と陰刻されているようです。親真は平清盛の孫に当たる資盛の子息だといわれているようです。
ただ、記事にある銘文の解釈について、いささか疑問を感じましたのでコメントしたいと思います。
こういう場合に故人の俗名を刻むことは稀で、たいていは法名だと思います。おそらく「親真阿聖霊」というのは、親(おや)である「真阿」(しんあ)という阿弥号の人物の霊魂…という意味ではないかと思います。「孝子七月吉日」と別の面に彫られているとのことですが、孝子というのも親の菩提を弔う石造物によく見られる慣用句です。(つまりこれは真阿という念仏者の供養をその子が行なった石塔で、親真、まして織田氏との関係を示すようなものではない。)
この地方の五輪塔について詳しくありませんが、没後間もない造立とすれば13世紀末になります。一般的にこの頃の五輪塔にしては非常に小さく、基礎の背がやや高いように思いますがどうなんでしょうか?
織田信長平氏ルーツ説否定!ということの是非はさておくとしても、石造物の価値や意味を改めて考える機会を世間に発信してくれた関係者に敬意を表したいと思います。
川勝博士は実物を見ないで論ずることを戒められています。これくらいにしておきます。お聞き流しください。