京都のPHPから書籍小包が飛脚メール便で、わが事務所に届いた。開けてみると、民主党の鳩山由紀夫元代表が著者の「新憲法試案-尊厳ある日本を創る」(PHP刊)が出てきた。奥付には「2005年2月21日 第1版第1刷発行」とあり、文字通り、出来たてのホヤホヤで「謹呈 著者」と記された短冊が差し込んである。民主党が結党された直後の平成8年10月、小生は、「鳩山由紀夫で日本はどう変わる」(経済界刊)を上梓し、経済界の佐藤正忠主幹に鳩山さんともどもホテルオオクラに招かれて会食し、歓談させてもらったことがある。鳩山さんは、そのことを記憶してくれていたのだろう。
憲法と言えば、日本人は、国民の立場で憲法を制定した経験は、有史以来一度もない。 聖徳太子の「17条憲法」、明治天皇が臣民に下された欽定憲法である「明治憲法」、軍事占領下に連合国軍(GHQ)のマッカーサー最高司令官が日本国民に押しつけた現在の「日本国憲法」と、いずれも「上」から与えらた憲法である。「日本国憲法」が世界史上、最も進化した憲法であるという優れた点は、紛れもない事実であるとしても、やはり日本国民という「市民」の手で制定したものでなければ、「画竜点睛」を欠く。「魂」が入っていないのである。
「市民」という言葉にこだわるとすれば、日本人は、これまた有史以来、「市民革命」を一度も経験していない。明治維新は、士農工商の頂点に立っていた「武士階級」のなかの下級武士たちが、下級公卿と一緒の行った「宮廷クーデタ」であるから、「市民革命」とは言えない。
憲法改正草案については、以前に読売新聞が提案しており、最近では、自民党の山崎拓元幹事長、中曽根康弘元首相が、それぞれの試案を世に問うている。自民党結党50周年を今年11月に迎えるに当り小泉首相が自民党執行部に草案をまとめるように指示しており、また、衆参両院の憲法調査会がやはり今年5月に報告書をまとめる手はずになっている。
そうした折りも折り、鳩山さんが、「試案」を国民に提案されたのは、政治家としての本務を尽くされているばかりか、誠に時宜を得ていると高く評価したい。
前置きは、これくらいにして、早速、一読させてもらった。
「なぜ今『憲法改正』なのか-はしがきに代えて」から、じっくり読み始める。鳩山さんは、憲法改正の必要性について、こう力説している。
「『自立と共生を両輪とした民主主義政治の確立を目指した友愛革命』こそが、現代の友愛革命であると再定義して、そのような理念の下で、国家を構想していくと、どうしても憲法改正が必要となるというのが私の憲法改正論の土台である」
友愛という理念に立脚して戦後の日本の政治治を行ったのは、鳩山さんの祖父・鳩山一郎元首相である。鳩山さんの言う「友愛革命」を理解するには、「友愛」の意味をしっかり知っておくことが大前提になる。「友愛」とは、「自由・平等・博愛」の「博愛」と同じ意味である。「自由」と「平等」のそれぞれの行き過ぎを「博愛」の精神でバランスを取る。中国の言葉でいえば、「中庸」と言い換えられるだろう。
鳩山さんらが結党した民主党は、本来は「友愛民主党」と名乗るべきだった。ただ単に「民主党」と言うから、「自由民主党」や「社会民主党」との違いが判然としなくなり、紛らわしくなる。
それはさておいて、鳩山さんは、この「友愛精神」をベースにして、独自の「新憲法試案」を示している。構成は、以下の通りである。
序章 新憲法案前文
第1章 「総則」および「天皇」について
第2章 国民の権利と義務について
第3章 国際協調主義の再定義
第4章 地域主権の確立
第5章 統治機構の再編成
終章 憲法改正手続きの緩和
鳩山由紀夫新憲法法案 全文
参考 日本国憲法
大日本帝国憲法
あとがき
新憲法案「前文」の一節が、帯に示されている。
「私たちは、自立と共生の精神に基づいた尊厳ある友愛の国づくりを目指す。すなわち、この国の長い歴史に培われた伝統と文化を受け継ぎ、豊かな自然環境と美しい国土を守り、後世に伝えるよう努める。
また、補完性の原理による秩序の下で、地域の自治と自立を最大限に尊重するとともに、地球的視野に立ち、全世界の人々と友情と智で結ばれた、尊厳ある国づく共に進めることを念願し、ここに新しい日本国憲法を制定する」
公私ともに愛に生きておられる政治家・鳩山さんらしい誠に華麗なる文章である。
全編254頁が、平易な文章で書かれているので、非常に読みやすく、改めて、憲法を考える有力な参考材料になり、大変勉強にもなる。詳しくは、この一冊を購入して、熟読玩味していただきたい。
「友愛」という理念に基づき、「友愛革命」を行おうという鳩山さんの志と「日本国及び日本国民」を思う心情が十二分に伝わってくる。
こういう本物の政治家に、是非とも近い将来に「総理大臣」になってもらいたいものである。
「狸御殿」より友情をこめて目白台の「音羽御殿」に謹んでエールを贈りたい。
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憲法と言えば、日本人は、国民の立場で憲法を制定した経験は、有史以来一度もない。 聖徳太子の「17条憲法」、明治天皇が臣民に下された欽定憲法である「明治憲法」、軍事占領下に連合国軍(GHQ)のマッカーサー最高司令官が日本国民に押しつけた現在の「日本国憲法」と、いずれも「上」から与えらた憲法である。「日本国憲法」が世界史上、最も進化した憲法であるという優れた点は、紛れもない事実であるとしても、やはり日本国民という「市民」の手で制定したものでなければ、「画竜点睛」を欠く。「魂」が入っていないのである。
「市民」という言葉にこだわるとすれば、日本人は、これまた有史以来、「市民革命」を一度も経験していない。明治維新は、士農工商の頂点に立っていた「武士階級」のなかの下級武士たちが、下級公卿と一緒の行った「宮廷クーデタ」であるから、「市民革命」とは言えない。
憲法改正草案については、以前に読売新聞が提案しており、最近では、自民党の山崎拓元幹事長、中曽根康弘元首相が、それぞれの試案を世に問うている。自民党結党50周年を今年11月に迎えるに当り小泉首相が自民党執行部に草案をまとめるように指示しており、また、衆参両院の憲法調査会がやはり今年5月に報告書をまとめる手はずになっている。
そうした折りも折り、鳩山さんが、「試案」を国民に提案されたのは、政治家としての本務を尽くされているばかりか、誠に時宜を得ていると高く評価したい。
前置きは、これくらいにして、早速、一読させてもらった。
「なぜ今『憲法改正』なのか-はしがきに代えて」から、じっくり読み始める。鳩山さんは、憲法改正の必要性について、こう力説している。
「『自立と共生を両輪とした民主主義政治の確立を目指した友愛革命』こそが、現代の友愛革命であると再定義して、そのような理念の下で、国家を構想していくと、どうしても憲法改正が必要となるというのが私の憲法改正論の土台である」
友愛という理念に立脚して戦後の日本の政治治を行ったのは、鳩山さんの祖父・鳩山一郎元首相である。鳩山さんの言う「友愛革命」を理解するには、「友愛」の意味をしっかり知っておくことが大前提になる。「友愛」とは、「自由・平等・博愛」の「博愛」と同じ意味である。「自由」と「平等」のそれぞれの行き過ぎを「博愛」の精神でバランスを取る。中国の言葉でいえば、「中庸」と言い換えられるだろう。
鳩山さんらが結党した民主党は、本来は「友愛民主党」と名乗るべきだった。ただ単に「民主党」と言うから、「自由民主党」や「社会民主党」との違いが判然としなくなり、紛らわしくなる。
それはさておいて、鳩山さんは、この「友愛精神」をベースにして、独自の「新憲法試案」を示している。構成は、以下の通りである。
序章 新憲法案前文
第1章 「総則」および「天皇」について
第2章 国民の権利と義務について
第3章 国際協調主義の再定義
第4章 地域主権の確立
第5章 統治機構の再編成
終章 憲法改正手続きの緩和
鳩山由紀夫新憲法法案 全文
参考 日本国憲法
大日本帝国憲法
あとがき
新憲法案「前文」の一節が、帯に示されている。
「私たちは、自立と共生の精神に基づいた尊厳ある友愛の国づくりを目指す。すなわち、この国の長い歴史に培われた伝統と文化を受け継ぎ、豊かな自然環境と美しい国土を守り、後世に伝えるよう努める。
また、補完性の原理による秩序の下で、地域の自治と自立を最大限に尊重するとともに、地球的視野に立ち、全世界の人々と友情と智で結ばれた、尊厳ある国づく共に進めることを念願し、ここに新しい日本国憲法を制定する」
公私ともに愛に生きておられる政治家・鳩山さんらしい誠に華麗なる文章である。
全編254頁が、平易な文章で書かれているので、非常に読みやすく、改めて、憲法を考える有力な参考材料になり、大変勉強にもなる。詳しくは、この一冊を購入して、熟読玩味していただきたい。
「友愛」という理念に基づき、「友愛革命」を行おうという鳩山さんの志と「日本国及び日本国民」を思う心情が十二分に伝わってくる。
こういう本物の政治家に、是非とも近い将来に「総理大臣」になってもらいたいものである。
「狸御殿」より友情をこめて目白台の「音羽御殿」に謹んでエールを贈りたい。
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